『ラッシュライフ』/伊坂幸太郎 ◎

(1)新幹線に乗っている精力的な画商と若い女性画家が掛けをして仙台に到着。
(2)泥棒の仕事の過程と旧友との再会。
(3)宗教家に心酔する青年が、その宗教家の解体に参加するが、それは宗教家ではなく・・・。
(4)お互いの配偶者を殺そうとするW不倫カップルが、何故か別の死体を拾ってしまう。
(5)リストラ中年が拳銃を手に入れ、犬を連れて仙台市内をさまよう。

独立し並行していたはずのこの5つのストーリーが、微妙な時間のズレを生じさせつつ、絡み合っていく。途中で「あれ?時間軸がずれてる」と気が付いてから、どういう繋がりになるのかを一生懸命読み解こうと頑張りました。だいたいは合ってたんですが、リストラ中年・豊田の時間軸がどうもつかみづらくて、最後に来てやっと、そういうことかい!と納得しました

物語の中に象徴的におかれるのが、「最近仙台市内に続く、バラバラ殺人事件の死体がくっついて動き出す」と言う都市伝説的ウワサと、「好きな日本語を書いて」とスケッチブックを差し出す白人女性、「何か特別な日に」と言う垂れ幕が下がっている新しい展望タワー。

表題のカタカナの「ラッシュ」には「lush」「lash」「rush」「rash」に置き換えられ、それぞれに違った意味がある。そんなにいろんな意味があるんですねぇ。水無月・R、無教養ですから「ラッシュ・アワー」の「ラッシュ」ぐらいしか知りませんでした。5つのストーリーはそれらのいろいろな意味を持ちつつ、「豊潤な人生」へ向かっているような気がします。

『オーデュボンの祈り』に出てきた、伊藤青年がチョロっと出てくるのが良かった。水無月・R、初めて読んだ伊坂幸太郎作品が『オーデュボンの祈り』で、伊藤青年のとぼけっぷり(いや、本人は至極真剣なんだけど)に、結構笑わされたのである。
それと、『重力ピエロ』でも重要な役割を果たした、泥棒・黒澤(今回は泥棒)。5つのストーリー全ての中心にいたわけではないのだけれど、どっしりとした存在感が、とてもよかった。「人生は誰でもアマチュア」って、水無月・Rを励ましてくれてるのですか?(←チガウ

ストーリー(5)のリストラ中年・豊田が展望タワーに向かうところで物語が終わったが、犬を連れて展望タワーに上がれるといいな、と思う。それこそが「ラッシュライフ~豊潤な人生~」だとじゃないかしらん。リストラ中年と元野良犬、このコンビあってこその『ラッシュライフ』なのではないでしょうか。

バラバラ殺人や過去の自殺、リストラやオヤジ狩りなど、目を背けたくなるような部分も多々あるのだけれど、それでも尚、リストラ中年・豊田の「イッツオールライト」に救われる。何だか、ホノボノしてきてるよ、この中年オヤジ。こういう人、いいですねぇ。

(2007.3.25 読了)
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新潮ミステリー倶楽部 著者:伊坂幸太郎出版社:新潮社サイズ:全集・双書ページ数:266p発行年月:2


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