『綺譚集』/津原泰水 ○

うわ~・・・微妙~・・・。 妖しい雰囲気の漂う短編集、津原泰水『綺譚集』。妖艶な物語たちなんだけど、水無月・Rの好みと微妙にズレる。

グロテスクなのだ、表現が。もちろん、読めないほど酷いわけじゃない。が・・・『みずうみ』『廃帝綺譚』など、水無月・Rのに好みに非常に合い、共鳴するかのような作品が続いた後では、違和感がある。
子供の死体、恨みのこもった感情、どろどろに腐って、半ば溶けかかったような後味を秘かにもつ、幻想的な物語たち。読んでて、ちょっと・・・。怖いというより、胸の辺りがつかえるような、居心地の悪さを感じてしまって。

いくつもの短編がある中で、一番良かったのは「玄い森の底から」。実力のある書家の女弟子である私が、書家の別邸で別の弟子に襲われ殺される。弟子は、実力で師を凌駕出来ず、師を毒殺。直後女弟子を襲撃し、殺す。殺された私の意識だけが、自分の書に対する真摯な情熱や書家やその弟子との関わりを思い起こし、師の元へ行こうと動き出す。動き出した体は、屍にたかる虫たちによって構成され、グズグズと崩れながら移動する(この辺の表現は結構グロい)。なんとか、師の別邸にたどり着いた所で、弟子と出会う。弟子は発狂する。女弟子は、師の元に。
女弟子の書に対する激しい想いや、師への思慕というよりは師の実力への真摯な憧れが、幻想的に、美しく描かれていた。

最後の「隣のマキノさん」は、ちょっとだけ、笑えた。どこかが相当ズレてる、マキノさん。そしてツッコミ処を見失ってる、私。庭に仕掛けられてるのは、トラップ?なぜ、マキノさんは、そこまで庭を守らなくてはいけないのか?どうやって交代してる・・・?
「マキノさんは相当オカシイ人」と自覚して普通に読んでいるはずの私自身ですら、ツッコミ処を見失ってしまっていた。ほんの数ページだけなんだけど、その間ずっとマキノさんワールドに浸食されている・・・気がした。

結構、幻想的な描写があり「おお~、これはいい」、と思った辺りで表現がグロくなり、盛り上がった気持ちが急下降、という結構水無月・R的に激しく印象が変動する本でしたね。

あ、そうそう。表紙が怖いながら美しいというか、よかったです。イメージは薄倖の佳人の水死体。表紙だけで、何か怖いものががひたひたと満ちてくる感じがして。

(2007.09.22 読了)
綺譚集
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著者:津原泰水出版社:集英社サイズ:単行本ページ数:253p発行年月:2004年08月この著者の新着


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