『頭のうちどころが悪かった熊の話』/安東みきえ ◎

「頭をうって、記憶を失っちゃった熊さんが、大事な〈レディベア〉をさがす」という単純な物語の中に、気持ちがほっとするような経過が描かれていく。大人にも読み応えのある童話、とは確かにこういう物語をさすのだな、と思う。示唆に富んでいる、という言い方では、何だか物足りない気がする。
かわいらしい動物たちの7つの物語は、あっさりと描かれているようで、それぞれにふんわりとした印象を残す。独立した物語ではあるけれど、少しずつリンクしているのもいい。

『頭のうちどころが悪かった熊の話』は、大人のための寓話。
「頭のうちどころが悪かった熊の話」
「いただきます」
「ヘビの恩返し」
「ないものねだりのカラス」
「池の中の王様」
「立派な牡鹿」
「お客さまはお月さま」
どの物語でも、動物たちがその特質をいかんなく発揮しつつ擬人化されていて、妙に滑稽で、少しだけ物悲しい。
物悲しいけれど、きついところはなく、とらえどころのない優しさが漂ってくる感じがする。

一番気に入ったのは「お客さまはお月さま」。友達になったお月さまを助けようと奮闘する、月の輪熊の話。
おかげで、星まで付いてくるようになってしまうのだ。月の輪熊の家は、月と星がいっぺんに入るには小さいというのに(笑)。
この熊は「頭のうちどころが悪かった熊の話」の記憶喪失のした熊の友達。あ、物語がぐるっと回ってきた感じがしますね。

もちろん、メインタイトル「頭のうちどころが悪かった熊の話」も良かったですね。どんな相手かも忘れてしまったのに、とにかく大事な[レディベア]を探し続ける、熊。そして、最後には探し続けた〈レディベア〉に思いっきりはたかれて幸せを感じるという、オチがつく。しかも、記憶を失ったのは、その奥さんの一撃を受けたからなのだ。でも、熊にとって〈レディベア〉はなくてはならない、大事な存在。そばにいるだけで、幸せを感じられるんだから、素晴らしい関係なんだな。そういうの、いいな~。

多分、読む人によって、色々と違う感想が出てくるんだろうな、と思います。私は、単純に、擬人化された動物たちの微笑ましさに目が行ってしまったのですが、深く読めば、人生や世の中と折り合うコツも見えてくるのかもしれませんね。

(2007.10.17 読了)
頭のうちどころが悪かった熊の話
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著者:安東みきえ/下和田サチヨ出版社:理論社サイズ:単行本ページ数:134p発行年月:2007年04


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