『青年のための読書クラブ』/桜庭一樹 ◎

読み始めてすぐに、「桜庭さん、大好きッ!!」と叫んでしまったデスよ。いや~、すんばらしい。
毛並み良き乙女たちの園に紛れ込んだ、異色の存在、「読書クラブ」。ひっそりと、100年の歴史ある女子校の、正史に載せられぬ裏の歴史を「読書クラブ誌」として綴り残した、その物語。
自らを「ぼく」と称する、少女たち。毎年選ばれる「女王」ならぬ「王子」。学園創始者の秘密。学園100年の駘蕩とした日々と、時代の風の対比。桜庭一樹さん、物語作りが上手すぎる!水無月・R、もうメロメロです~(笑)。

いや~ホント、桜庭作品は、水無月・R的にど真ん中ストレートですね。とにかく、面白い!物語の運び方がいいし、この昭和初期文学調な文体もいい。ツボだな~。たまらんなぁ~。ってなわけで、今回もまっとうなあらすじ紹介も冷静な感想も、無理なんでございますよ。(←ていうか、冷静な感想はいつも無理、じゃないの?)

読書クラブから選出され、闇に葬られた「偽王子」の物語、「烏丸紅子恋愛事件」。(1969年度)
学園創始者、聖マリアナの訪日以前の秘密と彼女と学園の未来の予言の物語、「聖マリアナ消失事件」。(1960年度)
バブルの風に揺れた学園とその後の平穏の物語、「奇妙な旅人」。1990年度)
滅びの風が吹く学園に現われたロックスターの興亡の物語、「一番星」。(2009年度)
学園に現れた英雄「ブーゲンビリアの君」と読書クラブOG、そして読書クラブの新たなる道の物語、「ハビトゥス&プラティーク」。(2019年度)

う~~ん、どれも良かったんですよねぇ。ホントに。どの物語も、時代背景の影響を受けつつ、それでも聖マリアナ学園にたゆたう清楚でたおやかな空気、その中で浮かび上がる「読書クラブ」の面々の異分子ぶり。
大体、登場人物の名前が宝塚的だ。今時ありえないだろう!というくらい漫画チックな、学園設定。
あの・・・あれを思い出しますよ、川原泉さんの『笑うミカエル』(コミック)を。浮世離れした純粋培養のお嬢様が通う女子学園に紛れ込んでしまった、「毛色の変わった子羊」たちの奮闘たるや、まさに(笑)。
私がもし、聖マリアナ学園に紛れ込んでしまったら、やっぱり行きつく先は「読書クラブ」しかなさそうだ、と思ってます。

タイトル『青年のための読書クラブ』の「青年」とは、雄々しく時代を乗り越え、ひそやかにかつ高らかに学園の裏歴史を綴った、読書クラブの面々なんですね、きっと。学園内の異端であるからこそ俯瞰しえた、事件の裏側と真実。そのしぶといまでの強さは、ただのお嬢様学校の生徒では終わらない、というのが最終章で証明されましたね。学園の大変革の中で姿を消さざるを得なかった「読書クラブ」の、その後継(進化型?)は中野ブロードウェイ内にあったのだ!(笑)。中野ブロードウェイってのが、素晴らしいね。いかにも怪しげで。

一番気に入ったのは、「奇妙な旅人」です。ちょっと私の方が上になるのですが、年代が重なる。私が通っていたのは都内共学私立(地味系)でしたが、確かにあの時代の熱気は、地味な我が校にも浸透してたように思いますね。もちろん、学校内で扇子を振り回して戦う少女はいませんでしたが。
マリアナ学園に生まれた革命とその失敗が、非常にひしひしと感じられたのです。一番漫画チックな章だったなぁ。きらびやかに「王子」を多出する東の宮殿(演劇部)、血統のヴェールに包まれ権力をふるう西の官邸(生徒会)、言論の自由を盾にすべての真実のスクープを狙う北のインテリヤクザ(新聞部)、目立たぬよう本を読み続ける南のへんなやつら(読書クラブ)、そこへ乱入する「扇子の娘たち」。笑いとツッコミ処満載な、物語。
痛快にして、寂寥。
バブルははじけ、一世を風靡した時代の熱気は、密やかに斜陽に移り変わっていくのだから。
部長・きよ子さんの「母性」には頭が下がった。巨大な乳房を~~こういったときしか、この困った乳房の近い道はなかろう~~ (本文より引用)と、威嚇に使う、その強さ。感動的である。私はもしかしたら、一番きよ子が好きかも。

2009年度、2019年度と、これから(この作品は2007年出版)の物語を描いているのも、なかなかに素晴らしいですな。薄いヴェールに包まれ、生態が杳として知れない学園の、近い未来と、その先の物語。学園内では崩壊したけれども、在り処を変え連綿と続き、OG達がたむろする読書クラブ。いいですよね~こういう設定。

他の読書クラブ誌も読んでみたいな~。きっととんでもない事件がいっぱい描かれてるんだろうなぁ~。笑いどころやツッコミ処満載な物語が、ね。

自らを「ぼく」と称し言動する、少女たちの「少年性」は、本当の少年とは違う。また、私の好きな「長野まゆみワールドな少年~無機質で透明で繊細なガラス細工のような~」とも違う。少女たちは少年ぶることで武装し、「強化ガラス細工」となったのだ。少年らしくぶっきらぼうにしゃべっているようでいて、決して乱暴ではない、美しい言葉遣い。
物語の中にしか存在しないのではないだろうか。現実では、少年ぶって「ぼく」と称すれば、たちまち粗雑な少年性に染まる気がする。そんな「ぼく」達を描きつつ、適度なリアル感とデフォルメされたキャラクター性を共存させられる筆力、素晴らしすぎる!

ますます、桜庭作品から目が離せなくなってきました。まだ読んでない作品も多いので、ホンット、楽しみです!

(2007.12.1 読了)

青年のための読書クラブ
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著者:桜庭一樹出版社:新潮社サイズ:単行本ページ数:231p発行年月:2007年06月この著者の新着


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