『夢見る黄金地球儀』/海堂尊 ◎

あの【バチスタ・スキャンダル】『チーム・バチスタの栄光』)から4・5年後・・・?
桜宮市で渦巻くのは医療問題じゃなくて、行政の問題?!
約20年前に全国にばらまかれた「ふるさと創生基金」で作った黄金地球儀をめぐって、発明家な鉄工所社長とその営業部長な息子、その腐れ縁な友人や、桜宮市のエージェンシー?と歌姫、人気朝番組のディレクター、桜宮市役所の役人、いろいろな思惑が入り乱れてドンパチやってます。
相変わらず、キャラ立ってますねぇ~、海堂尊さん。

医療問題で火喰い鳥が現場を荒らし回らなくたって、アンラッキートルネードな中年医師が愚痴外来開いてなくたって。激しくキャラの立っている、濃ゆ~いメンツが、桜宮市を激震のさなかに叩き込んでますよ。まあ、あまりに毎回トラブルの火種が燃え上がっちゃ、東城大学医学部付属病院も大変すぎですもんね~(笑)。
てな訳で、『夢見る黄金地球儀』では、舞台は同じ桜宮市であり、ショッピングモールや「でんでん虫跡地」など、おなじみの地名が出てきます。登場人物はほとんど重ならないんですが、あれですかね、ガラスのジョーに感銘を与えた毛色の変わった中央官僚、しかも厚生省の役人とくれば、あれはアノヒトですよね、火喰い鳥な(笑)。

色々リンクする部分はあれど、別の話ですから、その手の話はこの辺で。と思ったんですが、『ナイチンゲールの沈黙』に出てきた、共感覚の歌声の持ち主・小夜と、小児神経芽種患者だった瑞人が、物語にがっちり食い込んでますよ。今回は探偵というのかな、集めた情報や状況を利用してこの事件を暴いてゆく役割を担っています。
それとショッピングセンターのオープニングでコンビナート火災があった話(『ジェネラル・ルージュの凱旋』)、ボンクラボヤと黄金地球儀のための水族館の別館がオープンした話(『ブラックペアン1988』)など、あちこちに桜宮市(おもに病院がらみ?!)の歴史が。

あらすじ、色々あって書くのが難しいなぁ。一応、主人公は平沼平介。大学院で物理学を研究していたが途中下車して実家の鉄工所に就職、営業部長を務めている。学生時代の悪友・ガラスのジョーこと久光穣治が8年ぶりに現れ「ジハード、ダイハード」と唱えたことから、桜宮市の誇る?黄金地球儀強奪作戦は始まる。が、その黄金地球儀の警備を平介が請け負うことになったり、盗み出した地球儀はほとんど黄金が残ってなかったり、状況は二転三転。そのたびにトホホな平介が右往左往し、息も絶え絶え。

平介の父、豪介がガハハな感じでかっこいい。いろいろな機械を開発していくのだけど、ネーミングセンスもなかなかに笑える。「ケズリン・プッチーニ」て!「根性箱」て!すっごくチープなネーミングなのに、実はわかりやすく高性能!いや~、素晴らしいなぁ~。

それでね、ラストが良かった。平沼親子、カッコいいじゃん!
桜宮市役所管財課の横領問題がTV生中継中に明らかになり、市役所にはめられそうになった平介も窮地を脱し、実はガラスのジョーは本当は国家公務員で、桜宮市の横領事件に平介が巻き込まれそうになったのを救いに(本人は偶然とごまかすが)あらわれたことが判明。
そして、平介は学問の世界にもどり、豪介親父の開発した「深海1万」で、海底のレアメタルだけでなく金塊までガッサリ持ち帰り、さらに「深海2万」の制作のためにNASAまで動員。そこでの平介の講演の言葉。
~~‘ジハード・ダイハード‘。我々は常にフロンティアに挑戦し続けて生きていくのです。~~ (本文より引用)
平介は、ガラスのジョーとの「聖戦」の日々を忘れちゃいない。
なんだか青臭い青春物みたいだけど、カッコいいじゃないですか。

ところで、今回描かれたのは2013年設定です。平介の話によると、3・4年前にでんでん虫が炎上(『螺鈿迷宮』)し、その後に建てられたのガラスのでんでん虫も、壊れたということです。
おっと~。もちろん、その話も書いてくださるんですよね、海堂さん()。

(2008.05.27 読了)

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