『100回泣くこと』/中村航 △

相変わらず、闘病&病死ものが苦手なくせに、読んでしまうのであります。たぶん、新聞か雑誌の書評に惹かれたのだと思うのですが。
中村航さんは、初読みです。『絶対、最強の恋のうた』なんかタイトル的にもあちこちのブロガーさんが読んでらっしゃることもあり、興味はありますねぇ。

タイトルの『100回泣くこと』からも分かるように、涙をそそる闘病と喪失、回想の物語です。そういう意味ではかなり、ベタですね。でもベタは嫌いじゃないんですよ。王道上等!なのです、私。ただ・・・若くして病に侵され思いを残して・・・というのが、厭なのです。自分に、その覚悟(逝く方にも見送る方にも)がないし、とてもじゃないけど出来そうにない事が、恥ずかしくなるから。覚悟して、準備する。無理だ。あきらめられるわけがない。私は生に執着する。私の身の回りに人にも執着して欲しい。置いて逝きたくない、置いて逝かれたくない。

実家で飼っている犬が死にそうだと聞き、犬が好きだったバイクのエンジン音を聞かせようと、バイクの分解修理を始めた・僕。それを勧めたのは、彼女。修理中に、彼女にプロポーズをし、結婚の練習を始めることにする。実家へ戻り、一命を取り留めた犬にバイクの音を聞かせ、彼女との幸せな生活がはじまるが。この幸せは、ずっと続くのだと思っていたのだが。彼女の体調がおかしくなり始め、検査をすると子宮がんだということが分かる。彼女の、過酷な闘病生活。見守り、体をさすってやるしかできない、自分。そして、彼女は逝き、僕は悲しみにくれる。
何度泣いても、取り戻せはしない。
2年後。実家の犬が、逝った。犬を埋めた河原で、僕は「草原の果てを見つめる少年」を幻視する。それは、彼女との幸せの日々、想像した「生命の連鎖を象徴する像」であった。

健やかなるときも
病めるときも

喜びのときも
悲しみのときも 

富めるときも
貧しきときも

これを愛し
これを敬い

これを慰め
これを助け

死が二人を別つまで
共に生きることを誓いますか
 (本文より引用)

この言葉の重みが物語となって、幸せとそれを喪失することを浮き彫りにする。
恋人同士として向き合っていた二人が、同じ方向を向いて歩き始めたその時に訪れた、病魔。
彼女と暮らすようになって、Weである夢を見て、共に生きることでWeだった僕は、彼女を喪ってのち、彼女は色濃くYouになる。

遺された者。悲しみから立ち直るには、まだ時がかかりそうだ。
彼女を喪ったことを丸ごと認めて、後悔を乗り越えることができる日は、来ないかもしれない。
それでも、僕は。

彼女と僕の健気さが、弱っている実家の犬の儚さが、美しかった。僕と彼女は、今風な若者ではなく、何か浮世離れした感じがあり、だからこそ2人の愛情はあっさりとしているようで、きめ細やかな、思いの積み重ねがあるように感じた。その2人の幸せと、喪失。読んでいて、本当に辛かった。

自分の覚悟のなさを突きつけられるから、闘病・病死物は苦手です。
今回は泣かなかったけれど、泣いてしまうと余計に自分の弱さ(覚悟することができない)が、辛くなるから。
私は、まだ何も用意出来ていない。用意することが出来ない。直面したくない。ある日突然やってくるそれから、目をそむけてしまうだろう。
自分の弱さに向き合うことになるから、こういう物語は、辛いです。

(2008.06.13 読了)
100回泣くこと
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著者:中村航出版社:小学館サイズ:単行本ページ数:189p発行年月:2005年11月この著者の新着メ


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