『赤×ピンク』(角川文庫版)/桜庭一樹 ◎

なんだか、ついこの間も書いたような記憶があるんですが、桜庭一樹さんの描く少女は、痛くて切ないなぁ・・・。
夜な夜な、六本木の廃校で開催される「ガールズファイト」。少女と女の中間のようなハタチ前後の女の子達が、自らの技能(ショーとしての格闘技)をつくして、闘う。彼女たちの迷いと、真剣さと、闘いは、この上もなく血みどろで美しい。

タイトルの『赤×ピンク』は、血や肉の色でもあり、少女趣味でファンシーな色でもあり、ミーコの記憶に塗り込められる色でもある。そして「×」は「対戦」の意味も含むんだと思う。ショーとしての見世物でありつつも、真摯に闘い、お互いの技を称え合い、凌ごうとし、高みを目指そうとする。そんな彼女たちの、強さと脆さが、とても痛かった。
(格闘のシーンの技とか出血とか失神とかは、奇妙に霞がかっていて感じられた)

ガールズファイトの出演者たちは、手錠をはめられ、芝居がかった様子で観客に自らをアピールする。指名されればその酒席に同席するが、彼女らにファイターとしてのキャラクター性を求める客たちは、キャバクラのような接客を求めない。
「‘まゆ十四歳‘の死体」
生命力の弱い、ふっ・・・と死んじゃいそうなまゆ(ホントは21歳)。強さより、困った顔・檻(リング)の中での助けを求めるような視線に人気がある。歪んだ感情。ケッコンマニアとケッコンすると言って退場。
「ミーコ、みんなのおもちゃ」
人に求められる役を演じてしまう、ミーコ。さまざまな職の果てにSMの女王様とガールズファイト選手の2足のわらじ。まゆに去られて慟哭し、皐月の部屋になだれ込む。翌日、新入り選手と試合をし、相手をマットに沈める。女王様を辞めることに。
「おかえりなさい、皐月」
女の体がこわい、皐月。「女」の匂いのぷんぷんとするミーコに突撃訪問され、招き入れたはいいが。「女はメンドクサイ」とばかりに流そうとし、出来ず、苦しむ。翌日ショーへ出勤すると、美しい女が新入りとして現れ、皐月を翻弄する。ミーコの「女王様さよならパーティー」で新入りを抱きしめ、過去との決着を決意。

3人の女の子が描かれる。それぞれ、痛みのある過去と現在を抱え、微妙に歪んでいる。その歪みすら力に変えて、彼女達は闘う。女であること、子供であること、ヒトであること。生きるのが辛いような、上手く世の中と折り合いのつけられないまま、現実感がなくなっている生活。そして、異空間である「ショーファイト」で生を実感している。

3つの章それぞれが、同じ出来事を各自の視線で追いつつ、少しずつ時間をずらしていく。まゆからミーコ、ミーコから皐月に渡されていく、バトン。この構成はスンバラシイ!さっすが、桜庭さんだな~。
あと、八角形(オクタゴン)の試合場(リング)が象徴する、彼女たちそれぞれにとっての「檻」の存在。まゆはそこから脱出し、ミーコは逆に深入りし、皐月は重大な決断をするけれど実行には至ってない。
「檻」で闘う女たちは、強くて脆くて、少し切なさが漂う。

脇キャラ好きな水無月・Rとしましては、「武史」に大笑いさせていただきましたよ!いいよね、こういうトホホなキャラ!彼氏にするにも息子にするにも、どうよ?!な感じですが、何というか愛があるよ、この子には!廃校の体育館を借りてる空手道場に通ってる高校生なんだけど、まゆに格闘の基本を教え、ミーコと師範代の関係(女王様と客)に苦悩し、皐月を姐さんと慕いつつエロガキとなじられる・・・。
困った場面からの退場は「NO~~~~?」(何で英語なんだ・・・?)である(笑)。
いっそ、武史視点でこの一連の出来事を、最終章としてで語って欲しかったぐらいだな。
いや、きっとすっごく優しくっていい子なんだと思います。
ただ・・・いかんせん、基本キャラが「トホホ」(笑)。

この物語、2003年にファミ通文庫で、出版されてるんですよね。つまり扱いは、まんまラノベ。
だけど、2008年1月、桜庭さんが直木賞を受賞するなり、「角川文庫」で出る。ラノベから「ブンガク」へ出世?!なんでしょうか(笑)。いやいや、この物語は、「ブンガク」扱いで全然OKですけどね。

(2008.07.24 読了)

赤×ピンク
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角川文庫 著者:桜庭一樹出版社:角川書店/角川グループパブリッサイズ:文庫ページ数:254p発行年月


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