『ハミザべス』/栗田有起 ○

栗田有起さんは、『オテル・モル』『お縫い子テルミ―』の作家さんです。水無月・R的に好みが微妙にずれるというか・・・「だから、何?」なんですね。
で、この『ハミザべス』、2つの物語からなっていてですね。この2つが、私にはまったく逆の反応を引き起こしたんですよ。そういう意味では興味深い1冊になりましたねぇ~。

「ハミザべス」
離婚して全く音信のなかった父が死亡して、母には現金を、私にはマンションを財産分与した。その手続きをしてくれた人は、父と同居していた女性だったが、恋人というよりは人生の弟子だったという。私は、彼女から譲り受けたハムスターに「ハミザべス」(ハムスター+エリザベス)と名付けて、共に暮らすようになる。実は、彼女と父は巨大な精子と卵子の持ち主で・・・研究機関に協力をする1族のようである。
え~~と。その巨大な精子、のあたりから物語が面白くなくなっちゃったんですよね。飄々とした主人公に好感を持ってたにもかかわらず。結構残念な感じ・・・。嫌いかというと嫌いではないのですが。あれですよ「だから、何?」的な・・・。その巨大な精子卵子の話を広げたら、たぶん主題から外れちゃうんでしょうが、そっちの方が気になってしまったので、う~~む。

「豆姉妹」
逆に、後半からやたら好感を持ってしまった物語。
7歳差の姉と、真ん丸顔が双子の様にそっくりな、高校生の私。姉は肛門科の看護師だったが、収入重視でSMの女王様に転職。再婚した母のもとから高卒で独立した姉について行った私は今、将来が見えない16歳である。きっかけもないまま、突然アフロヘアにした私は、学校で注目の的。アルバイトもクビになってしまう。そんな2人姉妹のところへ、母の再婚相手の連れ子の弟(私と同い年)が現れ、一緒に暮らし始める。なぜか彼は「おねえ言葉」を使う。この弟も「豆姉妹」だ、と気がついたところから、好感度がぐーんとアップ。
主人公・私は、弟が姉を思慕しているのだと思ったのだが、実は彼が焦がれている相手はなんと母であった。
この告白のあたりの3姉妹の会話のテンポの良さったら!面白がってる姉、誤解してあわてる妹、真剣なんだけど妙にズレてる弟。事実が明らかになった時の、全員の会話のシンクロ感。優しい感じがして、とてもよい。
なんだかサラッと乾いているけど、奇妙に淋しくて愛しいこの3姉妹に、共感じゃなくて・・・なんだろう、とてもいい感じを受けたのでした。最後に見えない将来に光がさして、「接客業」を目指したいと思いつくところも、いい。

最初は好感のもてた物語がいつの間にか面白みが失せ、逆にとくになんとも思わなかった物語がいい感じをもたらす。
面白いなぁ。そういうのもアリなんですねぇ。同じ作家さんで、多分いわゆる「ささやかな日常を描く」物語なんだけど、逆のイメージを受け取る。

栗田さんの他の作品も、読んでみようかなぁ。・・・でも、外したら相当イタイ気がする・・・(^_^;)。

(2008.08.26 読了)
ハミザベス
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著者:栗田有起出版社:集英社サイズ:単行本ページ数:172p発行年月:2003年01月この著者の新着


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