『花伽藍』/中山可穂 ○

中山可穂さんの描くビアンの恋愛は、本当に、激しいなぁ・・・。我が身を切り刻むかのような、肉を削ぎ落として白骨化するかのような、激しく燃え尽きる恋愛。或いは、静かに埋み火のように燃え続ける、密やかに続く愛情。
短編集だったせいか、いつもの激しさはやや薄い感がありますが、それでもやはり、強い痛みと歓びを感じさせますね。
水無月・Rのセクシュアリティはノーマルですが、中山さんの描く、女性同士の恋愛には、全く拒否感がないです。

今作『花伽藍』は、意外な短編集だったような気がします。バイセクシャルの女性やダメ男にほだされてしまうノーマル女性が主人公だったり、60歳を過ぎたレズビアンカップルの静かに狂おしい恋愛だったり、と今までなかったような種々様々なセクシュアリティでの恋愛が、描かれています。

「鶴」
ノン気の人妻と恋に落ちたが、彼女には昔喪った子供がいて。
「七夕」
恋人と喧嘩したあと、男と出会い、一夜を過ごそうとするが。
「花伽藍」
ダメ男な元夫が訪ねて来て、義姉の元へ身を寄せることになる私。
「偽アマント」
若い頃の絶望的な恋愛経験から、若い恋人に対して臆病から寛容になっていた。
それが逆に、喪失を生むことになったのだが。
「燦雨」
40代に出会い、25年以上を経て、相手を介護するまでに愛情を高めていた二人。
彼女たちが望むのは・・・同時に命尽きること。

タイトル章でしたが、「花伽藍」はダメ男すぎる元夫に甘いのが、どうしても共感出来なかったです。トホホでもヘタレでもなく、本当にダメ男で。イライラしてしまいました。しかもその男をどうしても許してしまう、そんな主人公にもイラッと来てしまったし。

「燦雨」は、介護が必要な老女を、若いころと変わらず愛する老女という、異色のレズビアンカップルの物語である。長い年月をかけて、お互いを愛し、嫉妬し、やっと独占できると安心し。そして、命終えるときは共に、と願う二人の愛情の美しさと激しさが、沁みわたってくるようだった。
こんなにも、深く愛し合えるパートナーと出会えたら、それは一生涯の喜びなのだろうと思う。
翻って自分はどうなのだろうか・・・と、少し不安に思わずにはいられない。激しい愛情というより、平凡な日常を淡々と過ごしている身としては。まあ・・・過ぎてみて振り返って幸せだと思えたら良いのだろう、と思っておくことにする。

「七夕」では、恋人との別れ話の勢いで男と一夜を共にしようとして、でも、その夫婦の七夕の短冊を見て我に返るという、その奇妙なまでのリアルな表現が気に入った。そこから「もう一度話し合ってみよう」という気になる、その未練を認める潔さが、カッコ良かったと思う。
そして、抱き方の下手な若いお父さんのように、主人公を抱きしめてくれる男の、懐深さにとても憧れた。イイ男だなぁ・・・。

中山さんの描く、ビアン(バイ)の女性は、凛としている。激しい愛憎に常に苛まれ、マイノリティな性傾向に苦しめられ、それでも自分を確立して、潔く美しく、背筋をぴんと伸ばして、前へ進んでいく。
例え、世間一般にはどちらかと言うと認められなくても。
その姿は、凛々しい。

(2008.11.24 読了)
花伽藍
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新潮文庫 著者:中山可穂出版社:新潮社サイズ:文庫ページ数:271p発行年月:2004年10月この著


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