『イノセント・ゲリラの祝祭』/海堂尊 ◎

あの【バチスタ・スキャンダル】から、2年後。
厚生労働省の規格外役人・ロジカルモンスター・火喰い鳥の・白鳥のあからさまな要請にハメられ、「医療関連死モデル事業特別分科会」に招聘されたアンラッキー中年の田口センセは、厚生労働省及び官僚の方針、医療界内の対立を目の当たりにすることになる・・・。
うわ!大変なことになってるよ!『死因不明社会』で、厚生労働省というか官僚の基本方針が「国民のため、はなく自省の既得権益維持拡大及び天下り先の確保」である、という点を仕込まれてた私ですら、そりゃねーだろ!と叫びたくなるほど、国民の利益無視の会議展開。ホントのホントに、官僚ってこんな感じ?官僚亡国ですよ、ホントなら。

さて、本作『イノセント・ゲリラの祝祭』、久しぶりの〈「バチスタ」シリーズ〉への回帰ですね~。
相変わらず、キャラ立ちまくりな皆さんが、所狭しと物語の中を暴れ回っています。もちろん白鳥も、本領発揮、内外から会議を翻弄しまくります。それでも訳分からなくならないのが、海堂尊さんのすごいところですなぁ。

なんかもうねぇ、あらすじを語るとか、登場人物を紹介するとか、ホント無理です。色んなことがぎっしり詰まり、しかもあちこちで絡み合った上に相乗効果で新しい事象が発生するという、すんごいことになってますから。
ですので、最近の恒例ですが、思ったことをつらつらと書いてゆくことにします。

今回、火喰い鳥が苦戦してるのかと思ってたら、案外そんなことなかったデスねぇ。ですが、あちこちで頭のいい人間が、お互いの動向を読みあってその上手を打とうと画策、という頭脳戦がたくさん出てきて、とにかく凡人な私には考えも及びません。

ミスター厚労省・八神課長は官僚すぎますな。対白鳥の大きな壁になるかと思いきや、案外小物というか、やっぱり官僚すぎて視野が狭いんですね。最後の方では白鳥に足元掬われまくり、真っ青になって呆然自失してます。

笑えたのが、田口センセのボヤキである。
~~いったい、天は俺をどこへ連れていくのか。~~ (本文より引用)
怒涛の白鳥マジックに巻き込まれ、卓越した状況処理能力(愚痴外来のおかげ?)を駆使し、ズルズルした会議に一石を投じ、嵐を呼ぶ。本人そんな気は全ッ然、ないのにね。ついつい、正直に何かに突き動かされてしまう田口センセが、カッコ良かったですよ。相変わらず危険予知センサーは鋭敏なのに、何故か状況に流されてしまうところが、いい味出してて。

そうそう、今まで「何で自分は廊下トンビ・兵藤医局長が好きなのか」がよく分からなかったんですが、今回の田口センセの分析で、すっごく納得がいきました。
~~こういう肝心な情報に疎いところが、兵藤の致命的な弱点なのだろう。~~ (本文より引用)
つまり、アレですよ、トホホ属性(笑)。そっか~、廊下トンビはトホホかぁ。・・・トホホには愛があるよなぁ、うん。(←何かチガウ)

途中、『ジーン・ワルツ』に関係する「極北市の産科医逮捕」事件がさらりと挿入されてます。医療界の敵は、厚労省だけでなく、警察機構(司法)でもあるわけですよね。その急先鋒の実行者・無声狂犬(サイレント・マッドドッグ)・斑鳩芳正、今後暴れまくりそうな予感。こちらに対抗するのは、電子猟犬(デジタル・ハウンドドッグ)・加納達也なのかな?

クラッシャー・彦根の鮮やかな弁舌に思わず翻弄されそうになりつつ、その舌鋒の鋭さや論理展開の微妙な正当性と荒っぽさに私が危惧を抱き始めた時、やはり田口センセも~~彦根はやりすぎた。~~ (本文より引用)と危機感を持つ。そこへ、白鳥が参戦表明。彦根の発言は抑えられるが、発言の趣旨は別の会議へ持ち越されることが決定。この辺は白鳥と彦根、どっちのシナリオなんでしょうかねぇ・・・。どっちにしろ、頭のいい人の考えることはわかりません・・・(-_-;)。
しかし、会議に乗り込んだ時の包帯姿がコスプレとは、参りましたね。
そして「白鳥さんと仲良しなんですか?」と、爆弾発言をして、田口センセに食事ナイフを突き付けられます。田口センセ、白鳥の弟子?なのに。でも、断固として拒否したい方向なんだろうなぁ(笑)。

そして、マリオネット・桧山シオン。今回は表に出ないまま終わってしまいましたが、最後に意味深な発言が。今回は田口と会ってはいけないような気がする、と。
そんなシオンと彦根は~~敗北へと向かって突き進む、必敗の闘い~~ (本文より引用)を始める、と物語が結ばれています。

うわぁ~「次作の展開を待て!」ですよ、あからさまに。
だって結局何も決まらないまま物語が終わっちゃったもんね。
次作もきっと、とんでもない事態が発生し、白鳥が暴れ回り、田口センセが引きずりまわされ、他のキャラ立ちまくり登場人物たちも我も我もと大活躍するのでしょう。
楽しみですが、アタマが付いてゆけるかちょっと不安も・・・(-_-;)。

死亡時医学検索にAIを導入した方が、医療発展のためにも、国民のためにもなる。
それが海堂さんの主張の1つなわけですが、色々利権やメンツが絡み合ってなかなか実現しそうにないです。物語の中ですら。
海堂さんが描いてるのはもちろん「創作」なのだけれど、現実の医療界の問題を一般の市民にもわかりやすく知らせたい、という気持ちが大いにあるのだと思います。
フィクションだけど、現実が描かれている。こんな現実、怖ろしいと思うけど、ありえそうだ。
いやだなぁ、怖いなぁ・・・。このまま無関心でいちゃいけないんだな、と思います。

ところで。
海堂さん作品で登場人物の名前が出るたびに、「以前の作品で出てきた人じゃなかったか?!」と大いに悩む、記憶力の怪しい水無月・Rをバックアップして下さる、素晴らしいブロガーさんがいらっしゃいました!
海堂尊非公式ファンサイト!登場人物のリンクを見てみよう!海堂尊ファンさんです。
なんと、海堂さん作品の登場人物関連表と年表、そしてもちろん、詳しい内容のレビューもある、素晴らしいブログを運営していらっしゃいます。助かります~

あ、もう一つ情報が。
4月に『極北クレイマー』というタイトルで新作が出るそうです。
おっと、北ですよ、「北」。ジェネラルとハヤブサが飛び立ち、死の女王が逃亡した、あの「北」。産科医逮捕事件のあった「極北市」。どの話なんだろう~。楽しみですねぇ!

(2009.01.24 読了)
イノセント・ゲリラの祝祭
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著者:海堂尊出版社:宝島社サイズ:単行本ページ数:373p発行年月:2008年11月この著者の新着メ


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