『少女』/湊かなえ ◎

前作『告白』が、かなりインパクトのある物語で、本作『少女』はどうなんだろう・・・という期待と不安がありました。今度もM市図書館の予約待ち30人以上でした。やっと手元に回って来て、半日で読了しました。
・・・湊かなえさんは。
怖ろしい作家さんです・・・。

些細な悪意が重なって、自己中心の欲望が充満し、2人の女子高生・敦子と由紀は「死」に関わろうと行動する。彼女たちの行動は、時に優しさや思いやりなどを持ちつつも更なる悪意を産む。
それぞれの理由であきらめた剣道についても、相手に言っても分かるわけがないと、口には出さず一人で思い悩んだり妬んだりしている。

由紀が敦子のためだけに書いたはずの物語「ヨルの綱渡り」が、盗まれ、賞を取り、冒頭だけが敦子の目に触れ。由紀との間に目に見えないヒビが入ったのだが、全文に目を通した時、敦子は由紀の思いやりの心を知る。二人は、本当の友情を取り戻すのだが・・・。

最後の章に、何ともやりきれなさを感じます。せっかく由紀と敦子が再生したのに、その余波を喰らって、2人の友人・紫織が転落してゆく。もちろん、因果応報というか、仕方のない部分もあるのだけれど。そして、紫織の友人の自殺の理由も明らかになり、そこにあった悪意の結果がむき出しにされる。

・・・湊さん、恐すぎます。
誰もが持ちうる、ささやかな悪意や身勝手さ。もちろんその悪意を実行動に移すかどうかは別なのだけど、その悪意が悪意を呼び、結果、人を酷く傷つけたり、死に至らしめたりする。そこまでしようという意図は、全くなくても。
しかもその過程が、あまりにも現代にありふれている過程で。こんな事件は、どこかにある。もしかしたら、自分だってそれに関わってるのかもしれない。
コミュニケーションの不全、自己意識の肥大化、他者を認識する意識の欠落、現代社会に巣くう病魔を抜き出して描くその物語は、リアリティがありすぎて・・・。
『告白』の時にも書いたんですが、どこにでもいそうな登場人物たち、どこかにありそうな町の舞台設定、現実にも起こりそうな事件・・・というのが本当に、落ち着かない気持ちになりました。
そういう意味では、『告白』よりもさらに黒さの増す物語だったと思いますね。

ただねぇ~。由紀と敦子2人が交互に語ってゆくのですが、途中でどっちがどっちか分からなくなって、ちょっと困りました。今どきの平凡な女子高生だから、似てるんですよね。
それと、2人が起こした行動が巡り廻ってあちこちでつながってゆくのは、なかなかに鮮やかな構成ではあるんですが、無理やり感がなくもない・・・。

(2009.09.20 読了)

少女 (ハヤカワ・ミステリワールド)
早川書房
湊 かなえ


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