『秘密の花園』/三浦しをん ○

ただならぬ関係をとてもリリカルに描く三浦しをんさんの、女子高の物語。
『秘密の花園』かぁ・・・。何て言うか、非常にぴったりなタイトルだなぁ、と。名門カトリック系女子高に通う3人の女の子たちの、それぞれの悲しさ、残酷さ、潔癖さと頑なさ。
まだ大人ではない、だけどもう子供でもない、そんな曖昧な境にいる彼女たちを、ひっそりとかくまっている秘密の花園。

母を亡くしたばかりの那由多(なゆた)、幼稚舎からずっと持ち上がりで来たお嬢様の淑子(としこ)、那由多以外に対して孤高を保つ翠(すい)。
それぞれの事情、それぞれの口には出せない悩み、高校生独特の人間関係・・・。
あの年頃の、静かな激情のようなもの。息苦しいような、それでいて自由なような、不思議な感覚。
それを〈今となっては懐かしい〉と思ってしまうのは、トシ故のひがみ・・・なのかもしれない。

那由多の心の傷となった事件、那由多がいつも考えている「ノアの箱舟」、翠の思う「パンドラの箱」、絶望と残酷さとが張り巡らされる心の中の影が、物悲しい。
那由多と翠の間にだけ流れる関係、疎外されていることが分かっていてもそこに自分の居場所を見つけたい淑子。
淑子は学園の教師・平岡と恋愛関係にあるが、平岡の方は淑子の直情を扱いかねている。

本編では、淑子は平岡からしばらくの間は会わないでいようと言われて失踪したままだけど、「あとがき」では那由多と翠と修学旅行の話をしてるので取り合えず、帰って来たんですねぇ・・・。しをんさんも書いてますが、平岡はPTAにバレないとイイですな(ふふん、だ)。

多感な17歳、少々の自己肥大と他者への依存心がせめぎ合っている様が、克明に描かれていきます。彼女達は繊細さに傷つきながらも、頑なさと絶望で身を守り、優しさよりも率直であることの強さで、お互いを思いやる。
美しいなぁ、と思います。但し、思春期限定じゃないかな・・・こういう真っ直ぐさは。
生まれ得なかった兄・紺に語りかけ続ける翠が、一番寂しいのではないか・・・と感じました。

彼女たちは、いつか「秘密の花園」を出てゆくことになる。その時、関係が変わっても、自分が変わっても、変わらない〈何か〉があるのだろうか。

(2010.04.16 読了)


秘密の花園
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