『つづきの図書館』/柏葉幸子 ◎

絵本の登場人物たちが「自分の物語を読んだ子の続きを知りたいいんだ~!」と、飛び出してきた。
司書の桃さんは、彼らの願いをかなえようと色んな行動を起こすのだけど、何せ相手は絵本の登場人物たち。ドタバタと彼らに振り回されながら、桃さん自身も変わって行く。
柏葉幸子さんて児童文学の作家さんという認識でしたが、『つづきの図書館』は主人公・桃さんが40代ということもあって、とても親しみを持って読めました。一応、N市図書館ではYAのジャンルに分類されてましたが。

久しく会っていない伯母が入院している、と何度も連絡があり、仕方なく訪れた故郷の四方山市。ちょうど仕事が途切れていた桃さんに、伯母は自分の家に住めばいいと言う。伯母さんのつてで、図書館の司書の仕事も決まり、緊張の初出勤日、桃さんは図書館の二階で「裸の王様」に遭遇してしまう。

「図書館へ、はだかで来てはいけません。」
はだかの王様が現れ「青田早苗ちゃんのつづきが知りたいんじゃ!」と叫ぶ。早苗ちゃんの消息を探して病院で騒動を起こす王様。
「夜の遠吠えは禁止です。」
王様の次は、『オオカミと七ひきのこやぎ』の狼が、「小国潤一くんのつづきが知りたい」とうなり声を上げる。町中の犬を総動員して、思い出の場所に辿り着いたら。
「座敷童子だなんて思いません。」
今度は『うりこひめ』のあまのじゃくが現れて「佐藤のぞみちゃんのつづきが知りてぇ」と。だが、のぞみちゃんは行方不明になってニュースになっていた。
「幽霊と魔女がなかよしですか?」
何だかぼんやりした幽霊が現れ、「ベソちゃんのつづきが・・・」と言うのだが、本名も分からないし、本の中で一緒にいたはずの魔女も行方不明。原作本は地元画家の自費出版絵本だと言う。

なんとなく幸薄い感じの、ぼんやりした中年女性だった桃さんが、王様や狼やあまのじゃくに振り回されて、どんどん生気を取り戻していく様子が、とても楽しい。
桃さんが王様達を大切に思ってるのも、とてもよく伝わってくるし。
ほのぼのしながらも、ちょっとした人探しや、優しい感情の交流や、ごたごたや・・・。色んな事を経験しながら、桃さんが成長と言うと失礼だけど、人との関わり方などが変わって行くところがいい。
そして、各章の冒頭に出てくる、桃さんの大切な人への手紙が、だんだん長く、そして気持ちのこもったものになって行くのも、そういうところを上手く表現してるなぁ。

そして、最後の章は自費出版絵本が実は、桃さんにもかかわりがある物語だった。伯母さんとの関係や、父親と伯母さんのことや・・・。その物語が解決した時に、王様たちはいなくなってしまう。彼らが、安心したから。実は彼らは、「気になる子どもたちのつづき」を知った後も、「桃さんのつづき」が気になって元の絵本に戻らずにいたのだ。
代わりに、現れたのは・・・という終わりも、ほっとする温かさがあってよかった。

図書館のお仕事のことなんかは、あまり詳しくは出て来ないんだけど、桃さんが一生懸命にそして楽しそうに、過ごしている感じがいいですね~。
それと、王様たちが挟まってる本、ウチにもあったらいいのに・・・(笑)。
多分私も、初めて絵本の登場人物たちが出てきたら「ぎゃっ!」とか言って慌てふためき、「若い娘みたいな反応するんじゃないよ」と言われそうですが(^_^;)。
ウチにあの本があったら、どの絵本の登場人物が出てくるかしら。想像したら、楽しくなってきました。
でも、裸の王様が家の中をうろうろしてたら、やっぱり困るかしらん(笑)。

(2010.05.22 読了)

つづきの図書館
講談社
柏葉 幸子


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