『道徳という名の少年』/桜庭一樹 ○

良くも悪くも、桜庭ワールドだなぁ・・・というのが第一印象。
淫靡で甘くまとわりつくような、それでいて砂のように乾いている、一族の歴史。喧しいのに、静かに流れて行く時代。
とても、桜庭一樹さんらしいなぁ~と。
『道徳という名の少年』、町いちばんの美女から始まる、背徳の歴史。

「1、2、3、悠久!」
町いちばんの美女がそれぞれ父親の違う、四姉妹を生んだ。母が出奔した後、四姉妹は娼館で育つ。母が弟を連れ帰り、末妹は弟の子供を産む。
「ジャングリン・パパの愛撫の手」
戦場で腕を失った〈道徳(ジャングリン〉。妻となった娘は、ジャングリン・パパを愛していた。
「プラスチックの恋人」
ジャングリンの子供はジャングリーナ。一世を風靡する、歌手となる。
「ぼくの代わりに歌ってくれ」
ジャングリーナの息子はジャン。戦場で、届ける先のないラブレターとともに命を散らす。
「地球で最後の日」
ジャングリーナさんが、病でこの世を離れる日。遠縁の娘とその友人が、彼を訪ねる。

若い時は美しいのに、年を経ると脂肪の塊のように肥え太り、身動きすらできなくなる家系。思い出だけは美しく、背徳の空気にまぎれ、流れて行く。
長い年月の中で、薄まって失われていく神性。

1ページの文章の量も少なく、あちこちに見開きの挿絵が入るので、さらさら~っと読めてしまいました。
多分深い意味とかもあったと思うんですけど、微妙に私の感情に引っ掛からなかったので・・・ちょっと残念。
背徳の部分は、桜庭さんの文章の上手さなんでしょうねぇ。ともするとただのスキャンダルで生臭いものが、美しく儚さをもって淡々と描かれていて、嫌悪感はありませんでした。
エロスを漂わせる挿絵とあいまって、グロテスクで隠微な雰囲気を持ちながらも、どこかカラッとしていて。

「地球で最後の日」の、憂鬱と倦怠のティーンエイジャー2人がかつてのスーパースターに会いに行き、その窓の下で携帯型音楽端末を聞きながら時間を過ごして、ジャングリーナの死を経験する物語が、良かった。不機嫌の塊である彼女たちは、「永遠に失われたうつくしいもの」のために涙を流し、自らの中からも〈うつくしいもの=無邪気な子供時代〉が永遠に失われたことに気がついてしまったのだろうか。
神話時代はうせ、現実に直面しなくてはいけないという哀愁が漂う物語でした。

(2010.10.05 読了)

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