『GOSICKs ~春来たる死神~』/桜庭一樹 ○

概出シリーズの発端ともなる、久城一弥とヴィクトリカの出会いから始まるこの『GOSICKs ~春来たる死神~』は、大きな事件に出会う前の、彼らが解決した5つの小さな事件の物語である。
初々しい感じの一弥が可愛い・・・!頑固者の東洋人の少年、見慣れないその姿や気質は学園の生徒たちに好奇の目で見られても致し方ないというか。
桜庭一樹さんの人物造形の上手さの一端が、窺われますね。

「春やって来る旅人が学園に死をもたらす」
生真面目な東洋人留学生・久城一弥、登場するなり事件に巻き込まれ、ヴィクトリカと巡り合う。
「階段の十三段目では不吉な事が起こる」
アブリルちゃん登場?紫の本と死体発見。
「廃倉庫にはミリィ・マールの幽霊がいる」
大泥棒クィアランの2代目が学園に現れ、廃倉庫に見知らぬ少女がいる。
「図書館の一番上には金色の妖精が棲んでいる」
二代目クィアランと一弥の対決。アブリルを助け出す一弥。
「午前三時に首なし貴婦人がやってくる」
アブリルが発見した首飾り、セシル先生が見つけた絵。クィアランの盗品。
序章「死神は金の花を見つける」
セシル&ヴィクトリカの側からの、一弥との出会い。

短編で一つ一つの謎解きはちょっと小粒かな~という気がするんですが、それでも〈一弥とヴィクトリカの出会いの事件〉〈アブリルの事件〉という、前フリありの事件の全容は興味深かったですねぇ。
なんせ、一弥もヴィクトリカも初々しい。これまでの長編のやりとりのスムーズさ(とはいえ、一弥はやられっぱなしなんだけど)とは違って、ちょっとぎごちない感じがねぇ、ほほえましいですなぁ!
それと、ブロワ警部のドリル頭がほぼ凶器、という表現もあって笑っちゃったりとか。
セシル先生が学生時代、あんまり優等生じゃなかったこととか。
アブリルちゃんが、お祖父さんのような冒険家になろうと思ってることとか。

セシル先生、直接ブロワ侯爵からヴィクトリカ担当として色々言われていたんですねぇ。生徒たち思いのいい先生でちょっとおっちょこちょいな感じが、可愛いなぁって思ってたんですけど、ちゃんと先生なんですね!留学生の一弥のこともしっかり気に掛けているところ、案外しっかりしてるのかもしれません。但し、怪談関係はすっごく苦手のようですけどね(笑)。

しかし、意外だったのは一弥の〈理想の女の子との出会い〉の乙女的幻想ですよね♪
金髪の美少女と正面衝突ってどんだけ(笑)。・・・だけど、きちんと出会ったはずの金髪美少女は偽物だったし、自分を助けてくれた金髪美少女は毒舌で罵って来るし。もう一人の金髪美少女を助けてるんだけど、そっちには全然気がいってないし・・・!
あの鈍さは、如何なものかと(笑)。あのシチュエーションなら、アブリルちゃんも一弥を好きになっちゃうって、ねぇ。

一弥の次兄に宛てたヴィクトリカの謎解きなんですが、この後の物語で正解が出てくるのかなぁ・・・。分からないんですよ、全然。こうやるのかなぁ~?、というイメージはあるものの、組み合わせ方が全然わからない・・・。是非、正解を見てみたいものです。

最後に「序章」を持って来て、実はヴィクトリカは一弥に最初から興味を持ってたっていうのが、いいですよ!まさにツンデレの真骨頂(笑)。いや、ヴィクトリカは全然デレないからツンデレじゃないですね。プライドの高い意地っ張りなのに可愛い、って超反則技だと思いますよ!そして、それに全然気づいてない一弥の振り回され加減が、スンバラシイ。ありとあらゆるイミで、色んな「女難」にあってしまう一弥が、愛おしすぎます(笑)。

本作で色々、面白い情報がたくさん出てきて、今後の展開(短篇も長編も)が気になるなぁ!
ポンポン言い合うヴィクトリカと一弥、頑張ってるのに気付いてもらえないアブリルちゃん、ドリル頭のブロワ警部、(いい意味で)可愛いだけじゃないセシル先生、まだまだ聖マルグリット学園では、色々な事件が起こりそうですね。

(2010.10.26 読了)

GOSICKs ―ゴシックエス・春来たる死神― (富士見ミステリー文庫)
富士見書房
桜庭 一樹


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『GOSICK Ⅲ ~青い薔薇の下で~』
『GOSICK Ⅳ ~愚者を代弁せよ~』
『GOSICK Ⅴ ~ベルゼブブの頭蓋~』
『GOSICK Ⅵ ~仮面舞踏会の夜~』
『GOSICK Ⅶ ~薔薇色の人生~』
『GOSICK Ⅷ 上 ~神々の黄昏~』
『GOSICK Ⅷ 下 ~神々の黄昏~』
『GOSICKs ~春来たる死神~』(本稿)
『GOSICKsⅡ ~夏から遠ざかる列車~』
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