『ばらばら死体の夜』/桜庭一樹 △

あ~。なんか、すご~~~く、いやな読後感です。なんというか、直木賞後の桜庭一樹さんて、どうも〈人生のぬかるみ系〉なお話が多いですよね…。
今回は多重債務者がどこまでも転がり堕ちていき、取り返しのつかない終わりを迎えるその過程の物語。
『ばらばら死体の夜』というタイトル通り、冒頭から死体を解体するシーンがある。殺人者は殺した相手を、「生きててもばらばらな人間だったから、殺してばらばらにすることで形として安定した」と感じ、
~~ばらばらにしてあげなくてはならないのです。~~ (本文より引用)
と、ひたすらその行為に没頭する。

何か・・・感想難しいなぁ。メインの登場人物、白井沙漠・吉野解ともに、全然共感できないのである。
それぞれに借金があり、解の元々の借金の理由はともかく(沙漠に関してはその理由すら私には理解不能)、ズルズルと返済しきれず、それが多重債務になっていく自覚のなさに、とてもイライラするのである。
ほんの少し前まで、「ご利用は計画的に」といいつつ、可愛らしい動物やアイドル、贅沢したっていいじゃない的なシチュエーションの使ってのCMが、TVのコマーシャルタイムを席巻していた。それを見て、己の快楽や「ちょっと借りたってすぐに返せる」などという甘い考えに流され、気軽に消費者金融からの借金を繰り返し、いつの間にか多重債務に陥る人々が、どれだけいることだろうか。
「人生そんなに甘くないぞ!」なんて、正論を振り回したくなってしまうのである。小市民なんで。

300万貸してくれという沙漠、それならついて来いという解、そして二人が行き着いたのは、解が高校まで母親と暮らしていた掘立小屋のような家。
しかし、いきなり殺しちゃったのは短絡だと思うんですよね。何と言うか、もうちょっと心の機微の説明のようなものがあってもいいような。
しかも、そのあと死体の一部が見つかり、それが誰の死体であるかも判明したのに、それでも犯人が捕まらないまま終章まで行ってしまうってのは、どうなんだろう。日本の警察力って、甘くはないと思うんだけど。レンタカーから何か判らないの?とか、殺人現場はかなりの異臭がするはずだからいずれ判るんじゃないの?とか。どうもそういうところが気になってしまって。

メインの物語は、救いようがないというより、同情の余地なしって感じ。
見知らぬ男に体を許す沙漠、いきなり昔の下宿に踏み込んで女を犯す解、何か不都合があっても「そのことは後に…」と後回しに繰り延べしてしまう二人。いつも、ふらふらとしていて、自力で何とかしようとはしないで、何とかなるんじゃないか、そういう甘い考えで、結果悪循環になるだけ。イライラする。解がママ!とか言い出すのも気持ちが悪いし…。
借金のある知人の娘に部屋を貸す大家の佐藤が、その知人である女の死の原因になったこと。ケネディ大統領の弟テッドに自分をなぞらえて、甥達を助けて善行を成そうというその大家だけれど、どうもそれも自己満足のような気がしなくもないし。

エピローグで、解の娘・夕は読書会に参加し「罪を犯した人間は、罪が顔に出たり、その後の人生が狂ったりするものかな」と思う。そのあと夕は帰宅し、玄関先で解と顔を合わせる。その年頃の父娘にしては親しく優しさのある会話をした後、歩き去る父を見た夕は、両足首に鎖か錘でもついてるような重たげな歩き方をしてると思う。解の罪は、厳然として解の身に表出しているが、その罪を知っている人間は少ない、という物語の終わり。
もちろん、夕は父の罪を知らない。知る由もない。だが、夕は直感でそれを知っている。
例え、この後も解の罪が表沙汰にならなくても、解の体には異常なスピードで老いが降り積もる。だが、人を殺したという、その大きな罪はそんなことで贖えるものではないと思うのだ。そこが、不満でもあった。

(2011.11.22 読了)

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桜庭一樹 集英社発行年月:2011年05月 ページ数:354p サイズ:単行本 ISBN:97840


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