『花競べ ~向嶋なずな屋繁盛記~』/朝井まかて ○

よくお邪魔する読書ブログ〈Bookworm〉のすずなさんからお勧めいただいた作品。
江戸の花師夫婦が出会う、ちょっとした出来事の数々が、イキイキと描かれていて、とても心地よく読めました。
朝井まかてさんの作品は初読みなんですが、この『花競べ ~向嶋なずな屋繁盛記~』(単行本の時のタイトルは『実さえ花さえ』)が、デビュー作なんですよねぇ。すごいなぁ。
すずなさん、素敵な作品をお勧め頂き、ありがとうございます!
すずなさんのこの作品のレビューはコチラです!

花師の新次、その妻おりん、訳あって預かっている子ども・雀(しゅん吉という名なのだが、鼻詰まりで自分でちゅん吉と言ってしまうから)、新次の幼馴染の留吉一家、大店のご隠居・六兵衛、その孫の辰之助、新次が修行した霧島屋の娘・理世。
様々な人々の暮らしと、その心意気が丁寧に描かれています。
どんな時代でも、普通の人々の暮らしは些細な事件に満ちていて、人々は自分なりの精一杯でそれに向き合っていく。その誠実な生き様が、美しかったですねぇ。

向嶋で花師として「なずな屋」を営む新次とおりん夫婦。派手で奇をてらった品種改良ではなく、植物の持つ地の力のようなものを活かした品種改良を行い、着実な職人技を積み重ね、己の仕事に誇りを持って真っ当に商売している。
真面目なんだけれども堅苦しすぎず、とても温かい人間関係が、周りに波及していって、読んでいて心地よいです。

それと、植物のことがとても丁寧に描かれてて、いいですねぇ。園芸好きではありませんが、植物を見るのはわりと好きです。作中に出てくる「紫式部」や「桜草」「山吹」「りんどう」など、その様子を思い起こしながら読むと、なんだか清々しい気持ちになれましたね。
江戸の人って、結構園芸好きだったんですね。三年に一度の花競べに大挙して訪れ、武家から町人や粋筋のお姐さんまで、その評定に関心を寄せて見守る。
平和な世の中になったから、なんでしょうかね。いいことですなぁ。

今回分かったこと。
私は〈楚々とした美人〉より〈勝気な美人〉の方が好きなんだなあという事(笑)。
おりんよりも、留吉の妻・お袖の気の強さ、気風の良さに心惹かれました。おりんも悪くないんだけどね。昔のお袖さんは、ぞろりとした黒い着物と羽織を着込んで長煙管を手に練り歩く莫連娘、今でも気の短さと心意気の強さは折り紙つき、目元に険のある美人なのである。
おりんや新次が静かな性質なので、筋の通らないことに出くわすと、彼らの代わりに激高して啖呵を切る、その勇ましさが大変好ましく思えました♪

そんなお袖も憧れる、吉原花魁の吉野。
花見の席で言いがかりをつけてきた武家衆をさらりと言い負かす。その頭の良さと、芯の強さ。
物語の終わりで、日本で一番有名で誰にでも愛される「ソメイヨシノ」の由来となったことが語られる、彼女。彼女の退場の仕方は、少し残念だけれど、確かそういう史実があったような気がする。
吉原炎上の際、自分付の禿を助けようとして、命を失った吉野花魁の名から、ソメイヨシノは名づけられたといったような…。であれば、仕方ないのかな。
辰之助と幸せに暮らし、六兵衛さんを看取るぐらいのフィクションを入れてもよかった気も、するんですけどね。

そういえば、この物語、女性がなよなよしてなくていいですよね。
霧島屋の理世も、苗字を許される程の植木商のお嬢さんながら、裁衣袴(たっつけばかま)をつけ、土にまみれて育種を手掛ける最高の腕を持つ花師であり、自らの腕を磨くために京に上る。その凛としたたたずまい、自分の花師という職への矜持、とても美しい。
おりんだって、物静かではあるけど単におとなしいわけではなく、手習いのお師匠さんをしていただけあって頭もいいし、芯がしっかりしている。また、新次の仕事への新しい工夫を考え出したり、子供たちへの心配りが行き届いていたり、とてもしっかりした女性なのだ。

おっと。
作中の女性について、とうとうと語ってたら、ずいぶんと長話になってしまいました(笑)。
内容は、読んでのお楽しみ、ってことでいかがでしょうか。

(2013.04.11 読了)

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ブロガーさんにご許可頂いたレビューをご紹介します♪
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