『死神の浮力』/伊坂幸太郎 ○

私が『死神の精度』を読んだのが、2007年の3月。7年も前でしたかぁ・・・・。なんかビックリ。
だけどすぐに主人公?の死神・千葉の、飄々としたたたずまいや人間との微妙でいて大きなズレなど、軽やかな物語運びに惹き込まれていきました。
伊坂幸太郎さんが描く「死神」は、「死を迎える人間を1週間観察し、その死の可否を判定し、可の場合はその死を見届ける」のが仕事。
本作『死神の浮力』は、千葉が「山野辺」という作家の男を担当した1週間の物語。

・・・長編、でしたな。
なんか、勝手に前作同様連作短編だ~と思ってたので、アレレ?って、微妙にがっかり感が(笑)。
いえ、物語は面白かったんですけどね。あ、いや、面白いって言っちゃいけないんだろうけど。
なんせ、千葉が担当した山野辺は、1年前に「25人に一人という、良心をもたない男」に娘を殺され、その男が無罪になって保釈されたので復讐しようと、行動を開始した男なのだから。

大抵の死神は、ちょっとだけ担当の人間と接触して「可」と査定する。だけど、千葉は1週間じっくり対象と付き合い(でも合間に「ミュージック」は欠かせない(笑))、それでもたいてい「可」を出して、仕事を終える。
今回も山野辺夫妻の復讐に同行し、相変わらずのズレっぷりで私はニヤニヤしちゃいましたよ。
普通なら、「なんかこの人おかしい」って不安になりそうなんだけど、多分私でも「千葉さんはそういう人なんだよねぇ」って受け入れちゃいそうな気がする。
千葉が、すごくフラットな視線で人間を見ているから、なんだろうなと思います。
死の可否は査定するけど、人間に肩入れすることなく、他の死神の判定を聞いても流されることなく、常にフラット。平静、というのとも違うと思うのね。その違いを説明しろと言われると、出来ないんだけど(^_^;)。

千葉の同僚である香川(女死神?でいいのかな?)の担当しているのが、山野辺の復讐対象である本城という男。この本城がホントに酷い奴で、でもこういう奴って絶対いるよなって感じられて、すごく気分が悪い。頭の良さを、自分の支配ゲームにしか使わない男。そして支配ゲームに勝つためには、どんなことでもやって見せる(殺した子供の親に、殺すシーンの映像を送りつけるとか)。
本城と山野辺夫妻の攻防は常に本城の方がやや上を行くのだけれど、山野辺夫妻に千葉が加わっていることで本城の思惑から少し外れる部分も出てきて、更に香川が下した判定の結果、意外な結末が読者にだけ知らされる。

なるほどなぁ。「還元キャンペーン」にそんな効力があったとはねぇ。
山野辺夫妻や人間たちは知らないことだけど、なんか私的にはスッキリしたですよ。ちょっとほっとした。そして、想像して「うぇぇ~(-_-;)」ってなった。ちょっと、勘弁してほしいわぁ・・・。

しかし、死神ってすごいですねぇ(笑)。感情も痛覚もなく眠ることもないのは前作でわかってたけど、人間の肉体を模してるってだけで、とんでもない力が出るのね(笑)。二人乗りの自転車で雨の山道を駆け上り、車に追いついちゃうんだから。本城驚いただろうなぁ。人知を超えた存在だからね、死神は(笑)。

面白かった。
だけど、ちょっと千葉のキャラクターに頼った長編になってた気もするなぁ。
出来れば、前作のように、一つ一つの「仕事」は別でありながら、ちょっとずつ絡まってたり最後に収束して行ったりするような、そんな連作短編の方がいい気がする、このシリーズは。
多分、千葉にとって一つ一つの「仕事」は淡々とこなされるもので、きっと彼の生き方(でいいのかな、死神でも)に何ら影響を及ぼさないんだけど、対象者やその周辺の人間にとっては一大事で、千葉に関わった人間の方はきっと千葉に影響を受けて、変わっていくのだと思うのね。
そういう物語が、いくつかあって、伏線や関わりが回収されていくような物語、を読んでみたいですね。

(2014.07.07 読了)



死神の浮力 [ 伊坂幸太郎 ]
楽天ブックス
伊坂幸太郎 文藝春秋発行年月:2013年07月 ページ数:436p サイズ:単行本 ISBN:978


楽天市場 by 死神の浮力 [ 伊坂幸太郎 ] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



"『死神の浮力』/伊坂幸太郎 ○" へのコメントを書く

お名前
メールアドレス
ホームページアドレス
コメント