『玉村警部補の巡礼』/海堂尊 ◎

海堂尊さんの〈桜宮サーガ〉シリーズにおける、〈アタマが良すぎる人達に振り回されるかわいそうなフツーの人〉代表である、「正義」の味方・玉村警部補(タマちゃん)。
四国八十八か所巡礼を発心し、心穏やかに遍路を楽しむはずが、何故か地方県警の視察をする電子猟犬(デジタルハウンドドック)・加納警視正が同行することに。
『玉村警部補の巡礼』、どんな道行きになることやら・・・。

前作『玉村警部補の災難』を読んだのって、5年以上前なんですねぇ。あの時〈タマちゃん警部補は田口センセ並みに巻き込まれ体質の、フツーの人〉と私の中にバッチリ擦り込まれたわけですが、相変わらず加納に振り回されまくってますね~(笑)。
遍路や空海を小馬鹿にする加納に強引に同行されても拒否できず、遍路作法を非難されて反論しては返り討ちに会い、歩き遍路を通したいのに事件や県警視察の事情に振り回されて結局駆け足になってしまう・・・。ああ、なんて哀れなタマちゃん・・・。でも、そういうトホホなところが、大好きよ!

四国と言えば、前作の「エナメルの証言」でアンダーグラウンドな稼業をしていた栗田青年の逃亡先。これは、絶対にこの二人との対決があるよね!と思ってたら、最初の方から〈不審な水死体〉に関して加納が調査していることが明かされ、なかなか期待できる展開が予想されました。
満を持して、巡礼4県めの讃岐で始まった独白が栗田青年のものだと気付いた瞬間、大変気分が盛り上がりましたね~!

「阿波 発心のアリバイ」
お遍路の始まり。賽銭泥棒事件の冤罪を解決する。
「土佐 修行のハーフムーン」
10年前の政治家秘書自殺事件の真相を、明らかにする。
「伊予 菩提のヘレシー」
寺の秘儀で死亡した男にAiを実施してみると・・・。
「讃岐 涅槃のアクアリウム」
アンダーグラウンド稼業V.S.タマちゃん&加納・・・と思いきや。
「高野 結願は遠く果てしなく」
遍路の締めを飾るはずの高野山で。タマちゃん、頑張れ(笑)。

フツーの人であるタマちゃんが、凡人の頭で考えうる推理を提示すると、「そんなわけないだろう」と加納がズバズバ正論 を吐き、事件をグイグイ解決させてしまう。前作と同じく、タマちゃんはあまり捜査の役には立っていません(笑)。ですが、加納の毒舌にある程度の反論(基本的には論破される)ができ、そして加納の行動力についていくバイタリティがあり、なんだかんだ言いつつ加納の「正義」を信じてついて行けるのだから、やっぱりタマちゃんて稀有な人材だと思います。
タマちゃんのことを、凡人とののしりつつもコンビ解消をしないのも、自分の捜査とタマちゃんの巡礼を絡めて一緒に行動しようとするのも、加納の<タマちゃんへの信頼>があるからだと思いますね。
それと、確とは描かれてませんが、タマちゃんの事件引き寄せ力(巻き込まれ体質?)や凡人であるが故の事件周辺への丁寧な対応も、認めてるような気がしますね。加納はアタマ良すぎるから、バッサバッサと事件を解決するけど、ちょっと人間味が足りないところがあったような気がします。そこをうまく補えるのがタマちゃんであり、また加納にも影響を与えたのではないでしょうか。
そういう意味でも、いいコンビだと思いますね。

さて私、勝手に「アンダーグラウンド稼業」と書きましたが正しくは「ネクロ・デンタリスト」ですね、栗田青年のお仕事。
栗田に仕事を持って来るのは、黒服サングラスの男たち。いやいや、その扮装はさすがに目立つと思うんですけど(笑)。何の撮影だよ?!とツッコミを入れたくなりましたね。
水族館別館の地下で、本格再開した栗田の仕事第一号は、爆破テロリストの死体偽装。
そのテロリストの大規模テロを察知し、捜査に乗り込んだ加納とタマちゃんの前に栗田が現れた時は、ドキドキしました。とはいえ、タマちゃんは全然気づいてなかったようですが(笑)。
そして、事前にテロを防ぎ、栗田の依頼にかこつけてテロリストを捕まえた加納は、栗田の仕事場に現れ、「お前の仕事はもう成り立たない」と宣言し、栗田を逮捕する・・・かと思いきや、見逃します。
え?どゆこと?逮捕しても立件が難しいから、効率を考えて、仕事の依頼先を徹底的につぶすということで、手打ちにしたってことよね。
・・・よく、それでタマちゃんの抗議を受けなかったなぁ。タマちゃんは「正義」の味方のはずなんだけど。ちょっとここだけ引っかかるなぁ。
あっさり姿を消した栗田青年には、警察のマークはついてるんですかねぇ。それとも逃げられちゃった?

それと、栗田の隠れ蓑になった真魚ちゃん。深読みしすぎて「夢破れて東京から地元に戻ってきた女性は、実は実は裏の顔があり・・・栗田の逮捕後にはその裏の顔を発揮して〈桜宮サーガ〉の犯罪面を担う存在になる・・・」とか勝手に想像してしまってたんですが、そんなことはなかったです(^^;)。栗田去ったのちはちょっと傷心だったけど、案外簡単に立ち直って新しい関係に思いを馳せちゃったりして、ゲンキンな普通の女の子でした。残念(笑)。

エピローグともいえる「高野 結願は遠く果てしなく」では、八十八か所全部を回り切った(加納によるゴリ押し巡礼もあったけど)タマちゃん&加納が遍路の締めを飾るべく高野山を目指します。
ところが、納経所で残る2つのうち1つ目のスタンプを押した途端、加納の携帯電話が鳴り、2人は佐渡へ飛ぶことになります。遍路結願が叶う寸前での横槍。まだまだこの国には、色々な課題が残されているということですよね~。ちなみに、タマちゃんはどんな願をかけて遍路をしていたのでしょうか。<犯罪のない社会>だったのでしょうか。

そうそう、〈桜宮サーガ〉念願の「Aiを遺体検索システムの主体に」が、やっと達成されました。
歯形での人物同定をAiに変更するために、四国水死体事件の数々はあったんですねぇ。その立役者たる加納、陰の功労者であるタマちゃん。彼らのお仕事は続きます。

加納&タマちゃんのやり取りが軽妙で、起こる事件も深刻なのにライト感覚で、大変楽しく読めましたね~。
佐渡へ向かった二人を待ち受ける事件や、その他の事件も、きっと彼らの活躍で解決されてゆくことでしょう。
願わくば、その一端だけでも、読者として目にしたいものです。ということで、海堂さん、よろしくお願いします!
更にお願いできるなら、すべての事態が収拾した後(そんな日は来るのだろうか(笑))、タマちゃんと田口センセには、お疲れ様会を開いてあげて欲しいものですね♪

(2018.09.07 読了)

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