『夫の墓には入りません』/垣谷美雨 〇

以前、『老後の資金がありません』を超絶切実でいずれ我が身かも・・・とビクつきながらも読んだワタクシですが、本作『夫の墓には入りません』も、タイトルからしてもう非常に〈攻めてる〉ですよ、垣谷美雨さん・・・。
これ、嫁の立場と姑の立場で、読み方や感想が全然違ってきそうですね・・・。
もちろん私は嫁の立場です。そして、読んでるうちにどんどん背筋が冷えて来ました。
ホラーじゃないんですけどねぇ、この作品(笑)。

46歳の若さで、夫が急死。夫婦仲が冷えていた夏葉子は、これで晴れて自由の身・・・になったはずが、「高瀬家の嫁」という立場にがんじがらめにされていることにだんだんと気付いていく。夏葉子の家に勝手に出入りしたうえ夏葉子の不在時に他人を入れる姑、訳アリ風をちらつかせる女の登場、夏葉子の動向を姑に報告する人もおり、監視されているかのよう。重厚な仏壇が運び込まれ、立派な墓には自分の戒名まで刻まれ、パートのタウン誌記者という夏葉子の仕事を軽んじる義両親、義実家にはもう何年も家から出ない未婚の義姉がおり・・・。

畳み掛けるねぇ…、読んでてどんどん胃が痛くなってきました。
夏葉子とは、ほぼ同世代。ダンナは健在ですが、いつ何があるかは、わかりもせんものねぇ。
私に夏葉子と同じことが起こったら、と思うと、ホントにぞっとする・・・。そうならないように、祈るしかないのですが。準備しておくことでもないですしねぇ。まあ、こんなことが起こったら…こういう方法もあるぐらいの心構えにはなったかもしれませんね。

義実家との関係は悪くしたくない、でもそちらの家の事情を背負わされるのは何か違う、と迷った夏葉子に救いの手を差し伸べたのは、実家の父。予想以上に頼りになるお父さんで、ホントによかったですよねぇ。
そのお父さんの言う「相手を非難せずに、自分が感じたことを冷静に淡々と伝えればいい」というのは、確かにそうなんだけど、夏葉子同様に私にとってもとても難しいことですね。でも、心がけるようにしようと思います。

しかし、世代の溝、東京と地方の家族観の溝って・・・深いですねぇ。上の世代の方々は、それが当たり前で来てるから、我々世代もそうする事が当然と思ってる・・・でも、今はそういう時代じゃないしというギャップを埋めることは出来るのでしょうか。
難しいだろうなぁ・・・。うわぁ、こういう面倒ごとに巻き込まれないことを、祈るしかない・・・。

しっかりしてるからいいように使っていい人間(使い捨てていい人間)認定されてしまう、っていう夏葉子の状況、なんだか身につまされる部分がありましたね・・・。そういうふうに見下されないように、自分を大切にしたいです。

「姻戚関係終了届」・・・これ出すしちゃったら、夫の地元には居辛いのでは?と思います。なので、長崎で生活を続ける夏葉子は、肝が据わってるなぁと感心しました。長崎で新しいタウン誌を起業したいという希望も、なかなかすごいことですよね?つまり独立ですもんね。
彼女のバイタリティ、凄いなぁと思います。

そしてもう一つ凄いなぁと思うのが、ラストの「バスの中から大荷物の元・姑を見かけて、降りて手助けする」というシーンですね。
私には出来ないなぁ。嫌な思いをさせられても、姻族としての関係を解消しても、関わりのあった人への優しさを失わない夏葉子、人間が出来てますね・・・。
このラストのおかげで、夏葉子は姑世代の読者から「勝手な酷い嫁」の印象を少しは変えられたんじゃないかな、と思います。
嫁世代としては、そうあってほしいです(^^;)。

(2019.12.15 読了)

  

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