『怖いへんないきものの絵』/中野京子・早川いくを ◎

中野京子さんの『怖い絵』を読んだことがあるし、早川いくをさんの『またまた へんないきもの』という〈へんないきもの〉シリーズも大変楽しんで読みましたねぇ。
このお二人のコラボ、『怖いへんないきものの絵』
サクッと読めて、ニヤニヤし通しでしたな(笑)。

早川さんが変なサメの絵を見て「『怖い絵』の中野先生に色々話を聞くのはどうだろう?」という発想(冗談のつもりだったそう)を編集さんにしたら、編集さんがちゃんと中野さんにコンタクトをとってくれて実現したというこの企画。
いやぁ、絶妙なコラボでしたよ!
〈へんないきもの〉シリーズで切れ味鋭く、生き物たちにボケとツッコミを入れまくっていたその勢いがちゃんと健在で、安心しました(笑)。
そんなノリにもちゃんと乗っかって行ける中野さんも、とても素晴らしいです。真面目に絵の解説をしつつ、2人の対談はどんどん何故か笑える展開になるという。なんなのコレ、面白すぎ~。

様々な絵が取り上げられ、そこに描かれている〈へんないきもの〉について「おかしい、変だ」と早川さんが突っ込めば、「生き物はテキトーに記憶で描かれることもあります」としれーっと中野さんが返す、そのテンポの良さ。
絵画史上、重要な絵だったりするのに、テキトーなのかよ・・・(^^;)。
そうかと思えば、「オオカミはなぜ「ワル」なのか」という問題点に関して、オオカミのマイナスイメージの肥大化そして〈悪〉へのキャラクター属性付加について、きちんとした説明が描かれるし、ぎっしりと猿が描かれた絵からはヨーロッパでは「暗黒大陸に棲む得体のしれない列島生物」だったという話を引き出したうえで、ダーウィンの進化論への嫌悪感拒否感が強かったというエピソードに繋げ、文明開化に際し日本人は進化論をあっさり受け入れたことに驚かれたという話に展開。そのオチに「ニホンザルを見慣れていた日本人には「そりゃ吾作どんの顔見たらわかりますわな。はははは。」」を持って来るという、うんうん、私も全然拒否感ないわぁ。親しみありすぎ。

本作でいちばん笑ったのは、アンチンボルドの『水』(いろいろな水棲生物が組み合わさって肖像画になっている)の中の〈カニ〉の部分を抜き出して「恨みますよ。孫子の代まで恨みますよ。」というコメントが付いてることですよ。
うわぁ、この顔は、恨んでるわぁ。爆笑させていただきました。

『怖い』はずなのに笑っちゃうのは、やっぱり〈へんないきもの〉が関わってくるからかしらん。
手足があって、指名手配犯みたいな人面がついてるヘビ(アダムとイブ)とか、宗教画に描かれるハエとか、説教されるサメとか、想像力や曖昧な記憶だけで描かれてる微妙ないきものたちなど、なんともガックリ来るような奴らが多いのですよ。
今も昔も、芸術性だけでなく〈自らの趣味〉を絵画に潜めさせる依頼者とか、なんていうか人間臭いんですなぁ、芸術も。ふふふ。

中野さんが〈エイ〉が嫌いで嫌いで、ギャー!ってなるところが、面白かったです。ていうか、エイに咬まれる経験って、なかなかない気がする・・・(笑)。

(2020.10.20 読了)



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