『ゆらぎの森のシエラ』/菅浩江 〇

読んでて、違和感があったんですよね。あれ、私何読んでるんだろうって。
菅浩江さんの作品のつもりで読み始めたのに、何か違う。
この違和感は何だろうと思いながら、『ゆらぎの森のシエラ』を読み進めていきました。

違和感の正体は、私の勝手な期待だったことが判明します(笑)。
私にとって今までの菅作品は〈ひと〉と〈機械〉狭間で揺れ動く物語だったり、遠い未来の機械文化が進んだ世界に持ち込まれる情緒だったりしたのです。
本作では、機械はほぼ出て来ません。出てくるのは「ファンタジー色の強いバイオテクノロジー」を駆使したキメラ化物や、不老不死の黒幕など。
私、ファンタジーも好きなんですけど、何故かこの作品はあまり響きませんでした・・・。

不老不死の黒幕・パナードとヒロイン・シエラがかつて姉弟だったこと、彼らの異能に頼り過ぎた人間達が増長し自然を壊していき、それを悲しんだシエラは死に、憤ったパナードは人間達に復讐を誓う。
シエラは何度か転生し、今生でパナードの配下であったけれど理性を取り戻した「金目」という男と巡り合う。
パナードの力は強大で、金目の戦いは苦戦と敗戦を続けるけれど、最期にはシエラの力や犠牲により、辛勝を得て、そして金目も海へと消える。

金目はアレですね、仮面ライダー一号ですね(笑)。
悪の組織に捕まって改造されるも、理性と正義の心を取り戻し(維持し)、逆に悪の組織に対抗する存在となる、という。
そこに気付いたときは、ちょっと笑ってしまいました。

シエラの住んでいた村の少女・ラチータが、好きです。
周囲に流されず、自分で自分の行動を決め、シエラを助けなかったことを泣きながら後悔し、だからこそ後半の彼女の働きは力強かった。
彼女に助力していた旅人・ロウゼルが、実は第4皇子だったのには驚きました。
ただの旅人じゃないんだろうな、結構な地位にある騎士かな、ぐらいに思ってたので。
ラストでラチータの肩を抱いて「この地方の領主になる」と言ったロウゼル、いずれは彼女を伴侶にしたいと思ってるのかな、なんてね。
なんでも恋愛要素を絡めたがるのは、物語読みの悪い癖ですが、これぐらいのファンタジーにはこういう未来があってもいいんじゃないかな、って思いました(笑)。

そういえば「解説」で、「本作はファンタジーに見せながらSF」と書かれていました。
SFを「高度成長期の男の小説」から脱却させた作家たちの中に菅さんが居た、ファンタジーとSFの間を揺らぎながら描かれる物語だった、ということだそうです。
なるほど、そう考えると、SFなのかな。私としてはファンタジーでしたけど(笑)。まあとらえ方はそれぞれですもんね。

(2021.02.14 読了)

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