テーマ:仄昏き退廃と幻想

『この闇と光』/服部まゆみ ◎

隣国に侵攻され、囚われた国王とその娘の王女・レイア。レイアは侵攻からの逃亡の際に事故に逢い、失明している。 目の見えないレイアを慈しみ、育ててゆく国王。 しかしレイアは、ある日突然、全く違う事実に直面することになってしまう。 『この闇と光』という不穏なタイトルや裏表紙のあらすじ紹介文から想像していた展開と全く違う、驚くべき物語へと…
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『暗黒グリム童話集』/村田喜代子・長野まゆみ・松浦寿輝・多和田葉子・千早茜・穂村弘 〇

6つのグリム童話を、大人のためにさらに暗黒方向に翻案させたアンソロジー。 6人の著者も6人の挿絵画家も、とても豪華でした。 『暗黒グリム童話集』というストレートなタイトル、真っ黒な表紙の地に描かれる各ストーリーのモチーフ、ちょっと大きめの版型、本の装丁そのものもなかなか魅力的でした。 「手なし娘協会」村田喜代子・文×酒井駒子・…
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『常夜』/石川緑 〇

大学院で民俗学を専攻し地方の博物館の学芸員になった男が、日々の仕事やフィールドワークのさなかにふと出会う幽やかな出来事の数々を描いた、『常夜』。 『幽』怪談文学賞 長編部門大賞受賞作である本作がデビュー作の石川緑さん、作者と同名の民俗学者が主人公となって、巡り合う怪異を淡々と語る物語。 つかみどころが、ない。 そして、常にすぐ…
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『脳内異界美術誌』/荒俣宏 〇

幻想と退廃、大好きな水無月・Rでございます(笑)。 新聞の書評で、荒俣宏さんが美術解説をした本があると知り、『脳内異界美術史』というタイトルも気に入って〈読みたい本〉リスト入り。 でも、読み始めたらちょっと思ってたのと違う・・・。でも、頑張って読み続けていたら、最終章で「橘小夢(たちばなさゆめ)」という画家の作品とその世界との出会い…
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『聚楽 ~太閤の錬金窟~』/宇月原清明 〇

今回も、重厚で緻密な展開、読者を魅了する外連味を持ちながら確固たる歴史を描く宇月原清明さんに、してやられました・・・。 殺生関白と呼ばれた豊臣秀次の真実、遠くヨーロッパから発生し彼に至るイエズス会の異端思想、取り残されたものたちのやるせなさ。 華々しく描かれる登場人物たち。歴史背景。でも、印象的なのは、時折よぎり、後々まで余韻を引く…
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『幻想小説神髄』/アンソロジー 東雅夫 編 〇

いやあ、難しかったわ…。 かなり字が小さめの、600ページを超すぶ厚い文庫だったとはいえ、かなり頑張って時間作って読んだのに、2週間かかってしまいました…。 何で、そんな本を〈読みたい本リスト〉に入れていたのか…。 新聞の書評、の影響ですね~(^^;)。もともと「幻想小説」というジャンルには心惹かれてましたし。 アンソロジー編者…
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『黎明に叛くもの』/宇月原晴明 ◎

昨年、外伝『天王船』を先に読み、年をまたいで本編である本作『黎明に叛くもの』を読み始めました。重厚で緻密で幻想的で・・・読むのにすごく時間がかかりました(なんせ文庫の厚みが3センチ以上ある)。が、やっぱり読めてよかったです。 歴史と幻想の物語の名手・宇月原晴明さんの描く戦国絵巻、絢爛豪華で少し切なくて、胸を詰まらせながら読みました。 …
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『天王船』/宇月原晴明 ◎

わぁ・・・。やっぱりいいなぁ、宇月原晴明さん。 歴史と幻想が美しく織り上げる物語、酔いしれました! 本作『天王船』が、未読の『黎明に叛くもの』の外伝的短編集であることは知っていたのですが、あえて外伝から読むことにしました。 退廃と陰影に彩られた4つの物語、大変堪能致しました! 「隠岐黒」 暗殺組織に属する少年と、傀儡(くぐ…
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『眠りの庭』/千早茜 ○

疑問ばかりが、いくつも浮かんでは消え、また浮上して彷徨う、そんな読書になりました。 千早茜さんの描く、ファム・ファタル〈宿命の女〉の物語。 「アカイツタ」「イヌガン」どちらの物語にも、影のある男女を引き寄せ、より狂わせてしまう女の存在が。 『眠りの庭』に、眠っているものは、彼女の罪か、彼女の傷か。 「アカイツタ」「イヌガン」…
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『魚神』/千早茜 ○

『おとぎのかけら~新釈西洋童話集~』を読んだときに、皆さんからお勧めいただいた『魚神』。 時代もよくわからない、日本のようで無国籍の雰囲気もある遊郭の島で、捨て子の姉弟の白亜とスケキヨは育った。長じて二人は分かたれ、お互いを欲しながらも再会を怖れて日々を過ごしていた。 不思議な雰囲気でした~。島に伝わる雷魚と島いちばんの遊女の伝説、…
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『南の子供が夜いくところ』/恒川光太郎 ○

あれ~?なんか違うなぁ・・・。 南の島が舞台だからか、微妙に物語の世界観が期待してたものとズレてる・・・。 恒川光太郎さん特有の仄かな寂しさを湛えた異界の気配が・・・しないような。 いえ、ファンタジーとしては魅力のある作品だと思うんですよ、『南の子供が夜いくところ』。 ただ・・・単に私が期待していた和製ホラー(静かに怖い)と違っ…
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『おとぎのかけら ~新釈西洋童話集~』/千早茜 ◎

イソップ童話などの原典は、結構オソロシイ。現代に伝わる「意地悪な継母」が実母だったり、「懲らしめられ改心した元悪者」は罰として惨殺されていたり。 それらを何重ものオブラートに包み、悲惨さに安心を上塗りして隠し、現代の西洋童話は流通している。 そんな童話達を、あえて現代日本を舞台にして大胆に翻案した、『おとぎのかけら ~新釈西洋童話集…
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『冥談』/京極夏彦 ○

いやぁ・・・本作『冥談』も投げっぱなしですなぁ、京極夏彦さん(笑)。 『幽談』のときも、「うわ、オチがない・・・」って言ってたと思うんですが、とにかく、イキナリ話が終わってしまって、その居心地の悪さったら、ねぇ・・・。 最初の方は「うっわ~、来たよ来たよ、京極さんのオチなしホラー!」と、喜んでたんですけど、ちょっと食傷しちゃいま…
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『道徳という名の少年』/桜庭一樹 ○

良くも悪くも、桜庭ワールドだなぁ・・・というのが第一印象。 淫靡で甘くまとわりつくような、それでいて砂のように乾いている、一族の歴史。喧しいのに、静かに流れて行く時代。 とても、桜庭一樹さんらしいなぁ~と。 『道徳という名の少年』、町いちばんの美女から始まる、背徳の歴史。 「1、2、3、悠久!」 町いちばんの美女がそれぞれ…
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『太陽の庭』/宮木あや子 ◎

かつて私は『雨の塔』を読み、その儚い美しさに、息苦しいまでの孤独に、とても心を打たれた。 本作『太陽の庭』は、その『雨の塔』と同じ世界に存在する、別の物語である。 源氏物語の現代版のような物語が、宮木あや子さんによって語り始められる。 だが、次第に物語は、違ったものに変わっていく・・・。 ホント、最初は「まんま源氏物語じゃん…
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『復活のヴェヌス』ヴェヌスの秘録〈4〉/タニス・リー △

・・・うわぁ。すんごく肩すかしされたんですが。いえ・・・、単に水無月・Rの趣味からどんどん脱線してっちゃった、ってだけなんですけどねぇ。いや、予想はしてたような気もするんですけど・・・。 タニス・リーさんの最近の作風って、あんまりダークじゃないのかなぁ。・・・残念だ~。 本作『復活のヴェヌス』は、『水底の仮面』『炎の聖少女』『土の褥…
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『土の褥に眠る者』ヴェヌスの秘録〈3〉/タニス・リー ○

〈ヴェヌス〉の墓掘り職人ギルドの親方・バルトロメは語り始める。 水上都市の有力貴族の100年も続く対立、自分の身に起こった不思議な因縁、めぐりめぐる、運命の糸。 タニス・リーさんの描く、『ヴェヌスの秘録』シリーズの3巻目。 埋葬場所の少ないヴェヌスでは、火葬が基本。だが一部の有力者には、〈死の島〉への埋葬が許されている。土葬は…
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『炎の聖少女』 ヴェヌスの秘録〈2〉 /タニス・リー ○

『水底の仮面』の水上都市〈ヴェヌス〉が、〈ヴェ・ネラ〉であった時代。 教会内、そして都での勢力争いと、外敵の来襲に揺れる水上都市に、神に授けられし炎の力を持った少女・ヴォルパが現れる。その『炎の聖少女』は、自分を見出してくれた大司教・ダニエリュスに請われるがままに、その力を使って都を救う。 猥雑ではあるがまだ退廃に至らぬ都と、そこに…
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『水底の仮面』 ヴェヌスの秘録〈1〉 /タニス・リー ○

やっぱり、耽美なダークファンタジーはいいなぁ~・・・。 水の都ヴェヌスで繰り広げられる、隠微で仄昏い、因縁と策略。 タニス・リーさんの描く、美しくも妖しい世界。 濁った運河、仮面や衣装の青、美女のサファイアの瞳・・・、さまざまな青が氾濫し、闇に飲み込まれてゆく。そこから浮かび上がってくるものとは。 錬金術師・シャーキンの依頼…
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『蘆屋家の崩壊』/津原泰水 ◎

夏ですな~。ぞ~っとする、怪談話が気持ちいいですねぇ。何故か妖物系を引き寄せてしまう体質?の三十路を越え未だ定職につけずにいる男・猿渡と、黒づくめの怪奇小説家・伯爵のコンビが巡り合う、ゴシックホラーじみた物語の数々。 私、津原泰水さんは『綺譚集』から読み始めてハマったので、こういうホラー系はイイ感じです。ゾクゾクして、細密な世界が広が…
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『カルトローレ』/長野まゆみ ◎

ははぁ~。これは、好みが分かれるなぁ~。私は、かなりこういうの好きだけど・・・。 作中にも出てくる複雑なクロシェ編み(鉤針編み)のように張り巡らされた設定。そして回収されることのない伏線。すべては、読者の気持ち次第で。 そんな、不思議な浮遊感のある世界を描いた、長野まゆみの『カルトローレ』。 感想やあらすじを語るのは、すごく難しい…
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『少年トレチア』/津原泰水 ○

う~・・・黒いねぇ~。非ッ常~に、ブラックな・・・。 「悪いことをしたのはトレチア。殺したのはトレチア」と、子供たちの間に流布する言い訳。自分の酷い面を他人へとすり替える「トレチア」って、共同意識の産物? ・・・と思ったら残り3分の1あたりで、話の流れがトレチアから想像種動物「マカラ」へと・・・え~?!それはちょっとどうよ。私的には…
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『桜の森の満開の下』/坂口安吾 ○

うう~む。重苦しい・・。 森見登美彦さんの『【新釈】走れメロス 他4篇』の時に「原作読んでない~、やっぱこれは読むべきでしょう!」と心に決めた一篇です。と言っても、『桜の森の満開の下』は短篇集なので、他の物語も含まれてます。 しかし坂口安吾と言えば、いわゆる昭和の文豪ですよ。重厚な憂鬱というか、陰鬱な美というか、極甘な羊羹を食べてし…
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『厭犬伝』/弘也英明 ○

人の骸から生えてくる「汚木(よごれぎ)」。それを基に作った「仏(ほとけ)」同士を戦わせる「合(あわせ)」という遊興のある、異世界の物語、『厭犬伝』。 弘也英明さんのデビュー作にして、第19回日本ファンタジーノベル大賞・受賞作。 主人公・厭太郎は、職務の際に死なせてしまった咎人の娘・犬千代から、合による仇討を挑まれる。通常なら認め…
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『悪魔の薔薇』/タニス・リー ◎

現代のシェヘラザード姫、タニス・リーの幻想怪奇短編集ですよ! 素晴らしいですね~、『悪魔の薔薇』。 仄暗い世界に揺らめく、人とも獣とも妖魔ともつかぬ「もの」達。闇に浮かぶ、かぼそい金銀の操り糸。人の心の裏側をえぐる、繊細な描写。 ダークファンタジーの真骨頂とは、このことですよ! (あ~あ、とうとうタニス・リーにも悶えるようになっ…
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『綺譚集』/津原泰水 ○

うわ~・・・微妙~・・・。 妖しい雰囲気の漂う短編集、津原泰水の『綺譚集』。妖艶な物語たちなんだけど、水無月・Rの好みと微妙にズレる。 グロテスクなのだ、表現が。もちろん、読めないほど酷いわけじゃない。が・・・『みずうみ』や『廃帝綺譚』など、水無月・Rのに好みに非常に合い、共鳴するかのような作品が続いた後では、違和感がある。 子…
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『鏡の森』/タニス・リー ○

おしい!非ッ常~におしい!タニス・リーの「ダークさ」が変に緩められてしまってる。白雪姫とギリシャ神話を下地にダークファンタジーを描いてると思うんだけど、何だか、物足りないのですよ。なんだろう、何が足りないんだろう・・・。  美しい森の城の王女アルパツィアは、城を攻め落とした征服王ドラコのもとへ略奪され、その子を身篭る。その恐怖から…
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『翼を広げたプリンセス』/タニス・リー ○

「ウルフタワーシリーズ」最終巻、『翼を広げたプリンセス』。今まで水無月・Rが読んできたタニス・リーのダークファンタジーとはちょっと傾向の違う、ジュヴナイル向けのファンタジーである。 生まれ育った<ハウス&ガーデン>を脱出し、荒地の旅を経て<シティ>にたどり着き、<ウルフ・タワー>の「掟」を破壊して<シティ>を脱出した、『ウルフ・タ…
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