テーマ:自制の効いた矜持

『はなとゆめ』/冲方丁 〇

清少納言が『枕草子』を書くに至ったその背景と、彼女の宮廷出仕生活を中心に描いた、『はなとゆめ』。中宮定子の教養の高さや一族の反映を担う強さ、一条帝との深く温かい愛情、周囲の人々を盛り立て華やがせるその『はな』に惹かれ、中宮様の番人でありたいと願いながら仕えた清少納言の日々が、素晴らしかったです。あら、私冲方丁さん読むの、初めてだったわ(…
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『完全版 上杉鷹山』/童門冬二 〇

偉人伝ってなんだか小難しい感じがして、あまり読まないジャンルなんですが、この作品は読み易かった!童門冬二さんの『完全版 上杉鷹山』。上杉鷹山による経済破綻した米沢藩の藩政改革を丁寧に描き、彼だけでなく彼と共に変革を行った近習たちの苦悩がつぶさに記され、それでいて堅苦しくないのが、とても良かったです。 本作は、1981年~82年の新聞連…
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『砂上』/桜木紫乃 〇

北海道の片隅で細々と生きている、作家志望の柊玲央。数年前に離婚した元夫からの慰謝料とビストロ勤務で、何とか生活をしている。桜木紫乃さんの描く作家という者の業の物語『砂上』は、桜木さんの私小説ではないかと思うほどのリアルさをもって丹念に書き込まれる〈虚構〉の切実さが、狂おしい物語でした。 玲央の応募したエッセイ大賞を主宰する婦人誌の女性…
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『落陽』/朝井まかて 〇

身辺慌ただしい時期に、飛び飛びで読んだせいもあってか、どうにも集中できず、なんか申し訳ない気分になってしまいました(^^;)。明治帝崩御により東京に神宮を造営するという壮大な事業を追う新聞記者の瀬尾を通して、「明治」という時代とその時代を作った「帝」と市井の人々に思いを馳せる物語。朝井まかてさんが「明治」という時代の名残の光を丁寧に描い…
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『悪徳の輪舞曲』/中山七里 ◎

『贖罪の奏鳴曲』から始まる、敏腕でありながら悪辣な弁護士・御子柴シリーズ第4作目、『悪徳の輪舞曲』。かつて日本中を震撼させた少年犯罪者〈死体配達人〉は、医療少年院での更生の後、弁護士となる。その前歴は法廷内で暴露され、かつての医療少年院の恩師の弁護では納得のいかない結果となったという物語を経て彼が本作で挑むのは、実母が再婚相手を自殺偽装…
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『最悪の将軍』/朝井まかて ◎

徳川15代の中でも、悪政だったと言われる「五代将軍・犬公方・綱吉」。しかし、この物語で鮮やかに描かれるのは、「生きとし生ける命を大切にしたいと願った」為政者の姿でした。綱吉は、本当に『最悪の将軍』だったのか?朝井まかてさんによって光をあてられた真実を、噛みしめながら読みました。 将軍の真意が市井にきちんと伝わるのが、こんなに難しいなん…
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『スティグマータ』/近藤史恵 ◎

自転車ロードレースの最高峰、ツール・ド・フランス。チーム移籍し、若きエース・ニコラのアシストとしてツールに出場することになったチカは・・・。近藤史恵さんの『サクリファイス』から始まる、自転車ロードレースシリーズ。短編集も含めて5冊目となる本作『スティグマータ』。今回も、風よりも早く走り、体力を使った戦いの中にもさまざまに展開する頭脳戦、…
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『恩讐の鎮魂曲』/中山七里 ◎

かつて、日本中を震撼させた少年犯罪者〈死体配達人〉。医療少年院での更生を経て名前を変え、彼は弁護士となった。中山七里さんによる、『贖罪の奏鳴曲』、『追憶の夜想曲』に続く、御子柴シリーズ第3作。本作『恩讐の鎮魂曲』で御子柴が立ち向かうのは、医療少年院時代の恩師・稲見が罪を認めている、殺人事件の裁判である。 前作において、法廷で自分の前歴…
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『オーブランの少女』/深緑野分 ◎

美しい庭園・オーブランで惨殺された、管理人の老女。彼女やその妹、殺害者、の正体を記したのではないかと思われる記録。彼女らが少女だったころ、この館で何が起こり、何が真相だったのか。 深緑野分さんの鮮烈のデビュー作、『オーブランの少女』。 少女にまつわる謎と、その存在の切なさ強さ恐ろしさを色彩豊かに描いた作品でした。 〈少女〉とい…
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『追憶の夜想曲』/中山七里 ◎

緻密な調査と冷徹な思考力とギリギリの手法で、不利な裁判を勝ち抜く悪辣弁護士・御子柴礼司。彼が他の弁護士からゆすりまがいの方法で無理やり担当を替わった、主婦の夫殺害事件の弁護。なぜ、彼は儲けにならないこの裁判に関わることを望んだのか。中山七里さんによる法廷劇は、前作『贖罪の奏鳴曲』よりも緊迫感を増した感じがしましたね。『追憶の夜想曲』、御…
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『生存者ゼロ』/安生正 ○

北海道の会場石油掘削プラントで、所員全員が激烈なウイルス感染の様相を呈して、死亡していた。その後、感染の拡大がみられないため、事態は一過性のものであり沈静化したものと思われていた。 しかし、数か月を経て、北海道本土で一つの町が壊滅する再度の感染が発生・・・。 第11回「このミステリーがすごい」大賞受賞作『生存者ゼロ』。確かに、これは…
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『贖罪の奏鳴曲』/中山七里 ◎

う~わ~。後味悪~い(^_^;)。どんでん返しと言っても、スカッとしないどんでん返しですわ~。『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』かぁ。どんなに懸命に贖っても、人の命を絶ち切ったという罪を贖いきることは難しい、ラストまで読んで、そう思いました。このミス大賞作家の中山七里さん、初読みです。 冒頭から、いきなりの死体遺棄。そして、かつて少年時代に御…
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『キアズマ』/近藤史恵 ◎

私は、近藤史恵さんの描く、『サクリファイス』に連なる、自転車ロードレースの物語が、とても好きです。全く知らなかった〈自転車ロードレース〉という過酷で求道的なスポーツ、同じチーム内にエースとアシストという役割があってその関係には強い信頼があるという事、ロードレースの選手たちの「走り続けること」への強い思い、レース内の駆け引きや選手たちの個…
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『サヴァイヴ』/近藤史恵 ◎

『サクリファイス』と『エデン』の番外短編集、『サヴァイヴ』。6編中4編は雑誌『Story Seller』で既読なのですが、やっぱり全体を見渡したいので、再読しました。自転車ロードレースという特殊なスポーツの中で、集団で走りながらも孤独と戦うような、そんな緊張感のある物語たちでしたね。近藤史恵さんの、物語構成のうまさが光っています。ただ、…
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『エデン』/近藤史恵 ◎

そういえば私、近藤史恵さんの単行本になった作品って、『サクリファイス』しか読んでなかったのね(笑)。なんかもう、『Story seller』(1)~(3)を読んでたので、長編シリーズな気がしてました。今回も主人公は白石誓、舞台は自転車ロードレースの頂点「ツール・ド・フランス」。選手たちは、そこで『エデン』(楽園)を見たのだろうか。 『…
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『少女たちの羅針盤』/水生大海 ◎

第一回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞優秀作。2008年に創設されたこの地方文学賞で、大賞は逃したものの優秀作品として賞を受け、タイトル「罪人いずくにか」を『少女たちの羅針盤』と変え、出版されたもの。 この原稿を書くにあたってネットで調べたら、今度映画化されるんですねぇ。文学賞を主宰した福山市をロケ地にして。 作者水生大海さんは、…
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『女中譚』/中島京子 ○

実は元ネタになる作品をよく知らなかったりするんですが、中島京子さんの〈本歌取り〉小説、面白かったですよ~。 タイトル『女中譚』そのまんまの、女中の物語。 そっか~女中と言えば、メイドなわけで、メイドと言えば秋葉原ですよね。(←何かチガウ)そんな秋葉原で、昔女中(メイド)だった老婆が、今のメイド(メイド喫茶のお姉さん)たちに語る「あの…
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『ロード&ゴー』/日明恩 ◎

水無月・R大プッシュの有川浩さんが、WEB日記で「面白かった!」と大絶賛。更に、重版分の帯には有川さんの推薦文が付いてますよ~!(←でも図書館で借りてる私って。)そりゃ~もちろん、面白かったですよぅ~!このスピード感と迫力は、文句なしのエンターテイメント!日明恩(たちもりめぐみ)さんの『ロード&ゴー』、エンター…
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『夕凪の街 桜の国』/こうの史代 ○ (コミックス)

前から、読みたいな、と思っていた作品。漫画は図書館ではリクエスト購入してくれないので、ずっと読みたい本リストの中にあったのだが、広島県を出ることが決まり、記念に購入を決定。昨日UPした三浦しをんさんの『月魚』と同様、コチラも帰省中に読みました。日本に、広島に、原爆が落とされたのは、過去のことと思いたい私。広島に住んではいても、日ごろ意識…
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『たまさか人形堂物語』/津原泰水 ◎

津原泰水さんて、いろんな作風をもってるんだなぁ~、と感心しました。昔は津原やすみ名義で少女小説を書いてらしたそうで。グロイ感じ(笑)とか、幻想的な感じとか、私は読んでないけど青春小説とか、色々ですね。 で、本作『たまさか人形堂物語』はいかなる作風か、というと・・・。 なかなかに、ほのぼのとして、いい感じですよ。 リストラで職を…
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『サクリファイス』/近藤史恵 ◎

全編にわたる、緊張感。絡み合うレース展開を駆け抜ける、自転車。ロードレース・チームの中における、「エース」と「アシスト」の複雑な関係。過去のレース中の事故の、辛辣な真相とは。そして再び起こった、死亡事故。~~「勝利は、ひとりだけのものじゃないんだ」~~ ぼくの勝利は、ぼくだけのものではない。~~ (本文より引用) アンソロジー『Sto…
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『わたしを離さないで』/カズオ・イシグロ ◎

「提供者」を介護する有能な介護人キャシーは、過去を思い起こす。キャシーも「提供者」の養育施設・ヘールシャムの出身である。 「芸術能力へ偏重した教育」「提供」「親」「介護人」「猶予」など、あいまいに語られる、キャシーの思い出。 カズオ・イシグロが、外国人作家ではなく、在英日本人作家(著作は英語)だからでしょうか、なんだか非常に響くもの…
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『使命と魂のリミット』東野圭吾 ○

研修医・氷室夕紀は、父を心臓手術中に亡くしている。現在、父の執刀医だった西園教授のもとで研修中。その西園と婚約する母。果たして、西園は父の手術に全力を尽くしたのか。夕紀の疑いと、父と同じ病巣を持った財界有名人の手術と、病院破壊の警告状。 次第に廻り始める、それぞれの「使命」。 最近、医療問題関係の作品が多いような気がしますが、特に他…
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『弱法師』/中山可穂 ○

書評に「過剰な愛の果ては死さえ甘美」とあって読みたくなった、『弱法師』。中山可穂の作品を読むのは、初めてだと思います。能の名作をモチーフに描いた三篇からなっていますが、能の知識はなくても、困ることは全くありませんでした。 「弱法師」脳腫瘍に犯された少年のために、その母と結婚し、診療所を開く医師。母を死に追いやってしまった、少年。医師を…
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『からくりからくさ』/梨木香歩 ○

梨木香歩は3作目です。前に『りかさん』を読んだ時と、微妙に違います。『りかさん』で感じていた幻想譚的な部分が影を潜め、登場する若い女性達の浅からぬ縁(えにし)の謎解きや、女性達が染色や織物にかける情熱のような信念の物語が描かれています。 『りかさん』が、結構好みにハマっていたので、今回もりかさんの大活躍を期待してたので、ちょっと当てが…
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『輪違屋糸里』下巻/浅田次郎 ◎

ああ・・・、鴨が、芹沢鴨が、死んでしまった・・・。 イヤ、だから、違うって。この物語のメインは、「鴨が死んじゃった~」じゃなくて、「鴨が死んだ時、輪違屋の糸里天神はどうしたか」でしょうが、水無月・R。 大体、この芹沢鴨は佐藤浩市(NHK大河ドラマの配役)じゃないってば。(←上巻感想参照) 上巻で、鴨の土方に対する策略に乗せられ…
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『輪違屋糸里』上巻/浅田次郎 ◎

新撰組と言うと、数年前の大河ドラマが頭に浮かんでしまう、水無月・R。 なので、ついつい登場人物が全部大河の配役に・・・。この小説では、多少違和感のある人物設定もあるのだけれど、なかなか面白く読めました。 そして実を言うと、佐藤浩市が結構好きなのです。なので、大河で佐藤浩市が演じていた「芹沢鴨」には、かなり思い入れがある。大河の芹…
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『シェルシーカーズ・下』/ロザムンド・ピルチャー ◎

下巻に入り、主人公ペネラピは、画家であった父の遺したパネルを売り、最後の作品『シェルシーカーズ』を父が開設に尽力したコーンワルの美術館に寄贈する。おりしも、父ロレンスの作品が再評価されていた為、そのパネルの価格は予想以上の大金をペネラピにもたらした。そしてペネラピは何かに呼ばれるようにして、戦時中娘時代を過ごしたコーンワルを40年ぶりに…
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『シェルシーカーズ・上』/ロザムンド・ピルチャー ◎

若き日をイギリスのコーンワル(コーンウォール)で過ごした、画家の娘ペネラピ。様々な人生の試練を経て、今は年老いてコッツウォルドに一人で暮らしている。 そのペネラピが心筋梗塞の発作を起こして入院した病院から退院してきたところから、物語は始まる。  おりしも、ペネラピの父「ロレンス・スターン」が再評価され、その作品の価格は想像も付か…
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『日の名残り』/カズオ・イシグロ ◎

『日の名残り』は、水無月・Rに自省することを思い出させた、と言ってよい。 あるとき、新聞の書評に『わたしを離さないで』が、掲載されていた。「不思議なムードを持つ作品」という書評に心惹かれたが、すぐには予約せず(水無月・Rは購入派ではなく、図書館から借りてくる派である)、時間がたった頃、また別の書評(今度は新聞ではなかったように思う…
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