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zoom RSS 『推定少女』(角川文庫版)/桜庭一樹 ○

<<   作成日時 : 2008/12/07 22:13   >>

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桜庭一樹さんの描く少女は、とても切ない。痛い。
まだ世界を切り開くことのできない、自分たちのそんな苦しさを、とてもリアルに描写している。
ううう、『推定少女』も、ものすごく、痛い。なにも出来ない「甘い」自分。
そして、少女は、幻想と現実の狭間を走り始める。

あんまり頑張らずに生きたいと思ってしまう、中3・15歳の巣籠カナ。学校の裏山にUFOが墜落したという情報を聞いた途端、世界がブラックアウトし。
義理の父を傷つけ、夜の街へ逃亡することに。その最中に拾った雪みたいに色の白い、不思議な少女「白雪」。彼女はダストシュートの中に、全裸で50口径の銃だけを持って、眠っていた。白雪とともに逃亡する、カナ。
関東の端にかろうじて引っかかっている町を出て、東京へ向かう。秋葉原で出会ったのは、少女のような少年・火器戦士こと千晴。千晴の家に転がり込み、数日を過ごす、カナ達。
その間、黒服の男たちに付け回されたりした揚句、カナは補導され、白雪は黒服男たちに再び追われる。
警察から脱出したカナは、白雪と千晴に再会し、白雪を追ってくる黒服の男たちと銃撃戦を繰り広げる。

――― そして、3つの、エンディング。

か・・・感想ね、感想。ええ〜と・・・。
・・・うわ、全然分かんない。
「田舎の中学生」である、という閉塞感。何にもなりたくないし、楽して生きていきたい、大人になりたいけどなりたくない。その苦しい痛みは、すごく伝わってくるのです。私もあの頃、生き苦しいと思っていた。先を考えるのが嫌だった。でも、いつの間にか乗り越えて、いい年のオトナになってしまって、忘れかけてたあの頃の痛みを桜庭さんに、バッサリと斬り開かれてしまって、いつも呆然とする。

何度もブラックアウトする、カナの世界。閃光と暗闇が切り替える、現実と真実と空想と幻想。
どこからどこまでが、本当のことで。何が、真実で。カナの空想は、カナと千晴の見た幻想は。
白雪は宇宙人なのか、誘拐されたお嬢様なのか、精神病院のAAクラスの狂人なのか。白雪を追ってくる男から流れ出る、緑色のスライム状の本体。
カナは義父を射たのか。義父から漂う、腐った柿のような匂い。母の拒絶。
カナの警察脱出を助けた少年問題評論家の卑しさ。

――― そして、3つの、エンディング。

正直、あまりに曖昧で、どう対処していいかもわからない幻想感が、物語にまとわりついて一体化してるので、よくわかりませんでした。
ただ、あの閉塞感を描けるのは、すごいと思うのです。誰もが通り過ぎて、蓋をして忘れたかったことを、リアルに描ける桜庭さんは、本当に凄い。書きながら、苦しくないんだろうかと、変な心配までしてしまうほど。

『推定少女』は、2004年にファミ通文庫から刊行されたものを、再刊行したもの。再刊行に際して、マルチエンディングのような形で、3つのエンディングを書いています。
「Ending T 放浪」は、執筆当初桜庭さんが書いていたバッドエンド。
「Ending U 戦場」は、ファミ通文庫版に使われたもの。
「Ending V 安全装置」は、ハッピーエンドとして描かれたもの。

私は、「安全装置」が一番好きかな。「戦場」と似てるんだけど、最後の一節がかなり違う。
〜〜あのドールはまだ持ってる。
  かつてぼくがぼくだった唯一の証だからだ。〜〜
 (本文より引用)
「戦場」では、まだカナは、先の見えない子供だ。まだ「戦場」にいる。
「安全装置」では、カナはあの頃の自分と別れを告げて、なんだか分からないうちにオトナになってしまっているような気がする。でも、それでいいのだと思うのだ。
いつか、少女時代は終わる。あの苦しさを乗り越えた、カナの強さを信じたいと思う。乗り越えてしまったことを、少し後悔していたとしても。それでも、白雪のことを忘れないし、それを語り合う千晴という友達がいるのだから。
だから、オトナになってもいいのだ。

(2008.12.06 読了)
推定少女
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角川文庫 著者:桜庭一樹出版社:角川書店/角川グループパブリッサイズ:文庫ページ数:315p発行年月


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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
白雪って何者なんだろう?緑色のスライムは?とか、細かいところが気になってのめりこむとまではいかなかったんですけど、何もかも分かったつもりになっている大人への反発とか、思春期真っ只中の彼女たちの思いは伝わってきましたね〜。
今私は、何もかも分かったつもりになっている大人になってるんじゃないかと思って、ちょっと怖いです。
エビノート
2008/12/08 22:19
エビノートさん、ありがとうございます。
ううう・・・分かったつもりの大人…なってる気がする。いかんいかん。
世界観は理解出来なかったけど、思春期の少女の気持ちは痛いほど思い出しました。
今思えばなんてことない平凡な中学生だったのに、生き辛かった、そのことをまざまざと思い起こさせる桜庭さんの物語、やっぱりすごいです。
水無月・R
2008/12/08 23:01
水無月・Rさん、こんばんは。
素直にSFとして読みました。だから、最後もSFで終わっていいじゃーん、と悲しくなったのです。子どもは子どものままでいられない悲しみが、ずしんときました。
子どもの世界では、大人よりもずっと、現実と空想の世界が重なり合っています。だから、この小説は子どもが観ている世界の感覚を大人の言葉で描くという離れ業をやってのけていることになります。その上手に舌を巻きました。
そんな風に解説すること自体、私もわかったつもりの大人になっているのかも。反省。
香桑
2009/01/09 23:38
香桑さん、こんばんは(^^)。
ああ・・・子供の世界の感覚を、大人の言葉で描く・・・とてもよく分かります。
桜庭さんの描くリアルな少女の痛みは、その再現力の高さからでしょうね。
ああでも、反省というより、もっといろいろ思考するべきなのかも知れません。特に、私が。
水無月・R
2009/01/10 23:01
こんばんは。
マルチエンディングが楽しかったです。
「安全装置」振り返る様子が印象的でした。
義父が人が変わったような部分が気になったので、抵抗を感じちゃいました。
藍色
2009/01/28 05:29
藍色さん、ありがとうございます(^^)。
マルチエンディングという形式は、画期的というか目新しかったですね。
1冊で3度美味しいという感じで・・・。
それぞれに、思うところがたくさんありました。
水無月・R
2009/01/28 21:52

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