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zoom RSS 『とりつくしま』/東直子 ◎

<<   作成日時 : 2009/06/16 22:00   >>

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ううむ・・・。いかん・・・。
「ハートフルファンタジー」な評判の方ばかり覚えてて、「死んだ人がものにとり憑く」という根本的な設定をすっ飛ばして読み始めてしまいました。
そして・・・泣いてしまいましたよ。・・・く、くそう。ダメなんだようぅ〜こういうの。
逝く者、残される者、お互いの未練というのが全部、私自身の覚悟のなさへ跳ね返って来てしまうんですよねぇ・・・。あ、いえいえ、辛い涙だけじゃないんですよ。なんか、心暖まるなぁ・・・て言うのもありました。

番外編1篇を含む、11篇の「死者の視点」。愛する家族の物、好きだった場所にいた人の物、様々なものに死者たちはとりつく。とりつくだけで、見ているだけしかできないんだけど。
東直子さんは、歌人さんなのですね。言葉の選び方が綺麗です。いやな表現が一切ない。ふわりふわりと、温かい言葉で語られる、死者の視点。
『とりつくしま』というタイトルがひらがななのも、優しい感じがします。その優しさが、泣けてしまう。

一番最初の「ロージン」からして、もうダメだ・・・。子供の野球の試合のロージンバックの中の粉になりたい、長くいるとあとで辛くなるから・・・、なんて。私だったら、半永久的に家族のそばにいられそうなものを、考える。夫の眼鏡なら、少なくとも当分は一緒にいられる・・・、ああ死ぬ前に夫に眼鏡を変えないでと頼まなくちゃ、とまで考えてしまったほどだ。未練がましいことこの上ない自分と、主人公の私を比べて、後ろめたい気持ちになった。
しかも、試合の最後を見届けることが出来なくても、子供が頑張ったんだからいい試合だった、って言える、その清々しさ。羨ましい・・・きっと自分には無理だろうなぁ。

家族ものが、どうにも悲しくて、羨ましくて、いたたまれなかった。4歳の子供が「青いの」にとりついたり、妻の日記にとりつく「日記」、夫のマグカップにとりつく「トリケラトプス」・・・。残された家族のその後を見守るだけの、声をかけることも心に伝えることもできない、その歯がゆさは、なんだかとても、辛い。辛いけれど、だんだんに残された家族が快方に向かうのが分かったら、嬉しい。

物語を読んで泣いた後に残る清々しさと、自分の中にある未練の確かさは、両立するのですよね。
未練があってもいい、誰でもいつかは死ぬけど、逝くか残されるかするけれど、それは致し方ないのかな・・・と。覚悟はできない。私には無理だ。それでもいいのかもしれないな・・・なんて、全然物語と反対方向なのに、納得してしまいました。

(2009.06.16 読了)

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『とりつくしま』 by 東直子
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■空蝉草紙■
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2009/06/25 21:10

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは。トラバ返させていただきました。
なんだか水無月・Rさんの書評を拝見しているとすごく気持ちが(いつも以上に)こもってらっしゃるなって思いました。(気のせい?)
でもやっぱり『ロージン』が最高ですよね!最高というか、切ないというか、やられた、というか。つくづく取り付かれてしまうような1冊です。
空蝉
2009/06/17 12:36
空蝉さん、ありがとうございます(^^)。
いやぁ…自分の生への執着のあさましさを、突きつけられたような気がして、何だか勢いで書いてしまいました。はは。
本当に「ロージン」はいいですよね。切なくて、悲しくて、優しくて、暖かくて、潔くて、清々しい。痛いところを突かれてしまいました、ホント。
水無月・R
2009/06/17 23:16
自分以上に大切な人たちだから、遺して逝くのがいたたまれないんですよね。そういう登場人物たちの気持ちにこちらも心を揺さぶられてしまいました。言葉を交わすことはないんだけれど、思いはきっと何かしら伝わってるよな〜と信じたくなるような話が多かったです。
エビノート
2009/06/25 21:17
エビノートさん、ありがとうございます(^^)。
「トリケラトプス」なんかは、伝わってるのかもね、という気がしました。
暖かくて、良い物語でした。
水無月・R
2009/06/25 21:51

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