蒼のほとりで書に溺れ。

アクセスカウンタ

zoom RSS 『少年アリス 改造版』/長野まゆみ ◎

<<   作成日時 : 2009/07/13 23:11   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 2

著者長野まゆみさんが、デビュー20周年を記念してデビュー作・『少年アリス』を改造(=セルフリメイク)。
本作・『少年アリス 改造版』のことである。
20年の長きにわたって、水無月・Rの心を捉え続ける作家、長野まゆみさん。繊細に儚く、現実味を削ぎ落とされてゆく少年像。
改造された、その姿や如何に。

多分、水無月・Rが幻想的な物語に酔い痴れて感傷的になるその原点が、長野さんにあると思うのです。初めて『少年アリス』に出会った時の、あの衝撃は今でも忘れられません。
その改造版・・・実を言うと、少し怖くもあったのです。
全く好みとかけ離れてしまったら・・・どうしようか、と。
読み始めて、それは杞憂だとわかりました。
ただ、一つ残念だったのが、以前は漢字表記であった植物名などの名詞が、カタカナ表記になっていること。漢字という意味を持つ文字を使ったその表記から、想像力を刺激されて物語の深みが増した部分も多々あったように思う。
確かに、現代にはそぐわないものかもしれないけれど。

アリスは、親友の蜜蜂とその飼い犬・耳丸と共に、夜の学校に忍び込む。そこで行われていたのは『生まれそこなった鳥のたまご』達の為の授業。
石膏の卵をもっていたアリスは、鳥たちの教師に卵の仲間に間違われ、行動を制限された末、黒鶫(クロツグミ)の姿にされてしまう。その夜、季節は夏から秋へと変わる。蜜蜂と耳丸は気を失った黒鶫を拾い、銀の実を食べさせる。
そして、アリスと蜜蜂が目を覚ましたのは図書室。
あれは・・・夢だったのだろうか。
夜明けのあけぼの色の空気の中、帰路につくアリスと蜜蜂を迎えに来る、蜜蜂の兄。そして朝靄の向こうから現れたバスから降りた、ぼんやりした少年。彼は・・・。

実を言うと、改造前の『少年アリス』とどこが違うのか、事細かに挙げることは出来ない。細かいストーリーではなく、雰囲気を好んで、耽溺していたからだ。
なので、全くまっさらの状態から『改造版 少年アリス』について語ろうと思う。

夜の学校。見知らぬ少年たちと教師による、不可思議な授業。奇妙な符合により、そこに参加させられ、鳥の姿にされた人の子。
いまだ明らかにされていない、鳥類の起源。人と鳥の境界は。空を自由に行き交う鳥が、人の姿になることは、束縛なのか。
長野さんの作品によく出てくる「鳥」と「少年」の関わりが、こんなところでも見えて来る。
未だ大人になっていない少年は、鳥に近いのかもしれない。儚く、壊れそうな、現実味の薄い、繊細な少年像は、その薄い背中にある肩甲骨を、羽に変えるのかもしれない。そんなことまで考えてしまうほど、美しい世界。

淡く煌めく世界にすっきりと立ち、前を見据えている少年達は、この夜を越えてどう変わったのだろうか。
ノスタルジックで美しい文章から立ち昇る、少年たちの友情、穏やかな成長、少年らしく際立った矜持、粗雑さを一切切り捨てたかのような情景が、やはり、幻想的に美しい。

装画・イラストも長野さんご自身で描き、独特の繊細な世界をより深めていますね。茶色がかった文字を使った書体、よく見れば書体と同じ色なのに何故か濃い緑色に見えるえんじ色との組み合わせのイラストも、とても綺麗です。ややレトロな感じのする全体的な装丁の印象も、とても素晴らしいです。

『少年アリス』、そして『少年アリス 改造版』の美しさ、素晴らしさを伝えたいと思うのですが、全くもって、出来ていません。
・・・自分の原点に触れる作品だと思うと、気持ちばかりが焦ってしまって、何も書けなくなってしまいます。
これ以上書き連ねることは、蛇足の蛇足。そう思って、ここで止めることにします。

(2009.07.13 読了)

少年アリス改造版
楽天ブックス
著者:長野まゆみ出版社:河出書房新社サイズ:単行本ページ数:173p発行年月:2008年11月この著


楽天市場 by ウェブリブログ



テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
少年アリス 長野まゆみ
改造版 少年アリス アリスは友人の蜜蜂から夜の学校へ行かないかと誘われる。 蜜蜂は兄から借りていた鳥の本を今夜中にとって来いと言われ、飼い犬の耳丸とともにやってきたのだった。 2人と耳丸が学校の中へ入ると、理科室から人の話し声が聞こえる。 覗いてみると、自... ...続きを見る
苗坊の徒然日記
2009/10/11 10:01

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは。TBさせていただきました。
長野さんの作品はこの本が最初でした。
美しい文章と言葉がとても印象に残っています。
でも、読んだのが高校生のときだったので、読み返したときと読み終えた後の感想が違うような気がします。
改造版では、ほんの最後に言葉の解説が載っていて、分からない言葉が出るたびに、解説ページを開いて読んでまた戻って読んで・・・を繰り返していました。
苗坊
2009/10/11 10:05
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
私も、この本が最初でした!
そして、非常にハマりました。
その改造版、ちょっと不安でしたが、全然杞憂でしたね〜♪
解説ページ、私もとても重宝しました!
水無月・R
2009/10/11 21:50

コメントする help

ニックネーム
本 文
『少年アリス 改造版』/長野まゆみ ◎ 蒼のほとりで書に溺れ。/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる