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zoom RSS 『充たされざる者』/カズオ・イシグロ △

<<   作成日時 : 2009/08/08 23:35   >>

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ううむぅ〜。非常に感想を書きづらいです・・・。
カズオ・イシグロさんの、格調高い自制のきいた物語構成・文章(訳も良いのだと思いますが)、古き良き時代を思い起こす、郷愁漂う世界。
本書『充たされざる者』も、そういった世界を踏まえつつ、不条理な悪夢の連続のような、堂々巡りが続いてゆく。その堂々巡りが、どんどん収拾つかない方向へ行くせいで、大変疲れました。

大体、転勤辞令云々で、超特急で準備その他手続き色々!だけど肝心の転居先が決まってないよ!という気忙しいこの時期にこの本を読んでたのが、ホントに疲れました。
だけど、もうやめよう、という気にならなかったのは・・・やっぱりイシグロさんの物語の巧さですね。

とある小都市に招かれた、高名なピアニスト・ライダー氏。音楽家としてはもちろん、市民の憧れる文化的指導者という側面をも持っているようである。
ライダーは、その都市でのスケジュールを目にした記憶がなく、紹介された世話人の言う事がよく分からないまま、なし崩しに事態は進行してゆく。

ライダーは、初めて訪れたはずの街に見覚えがあるような、既視感を覚える。その小都市で求められているのは、市民に影響力を持つ芸術家(特に音楽家)の存在。だが、長年指導者的立場にいた人間がどうもニセ物だ(あるいは力を失った)、と住民たちが看做(みな)したようなのである。市民たちは、現状の打開のための救世主として招かれたライダーの到着に狂喜し、様々な頼みごとを彼の元へ持ち込む。

見知らぬ女性とその子供は、いつの間にか自分の妻と息子になり、離れた土地にあるはずの館と滞在ホテルがつながっていたり、不条理な覚めない悪夢の循環に囚われたまま、ライダーの周りで、事態が進行する。市民たちから押しつけられる頼みごとを、ライダーは不愉快に思いつつも、何故か引き受けてしまう。イギリス人がそうなのか、芸術家がそうなのか、頼まれると嫌とは言えず、あちこちにいい顔して結局すべての予定がなし崩しに駄目になる・・・。
理不尽な悪夢が続くのか、現実なのか。不可解な展開に、いつの間にか何も疑問を持たず、流されるままに、自分の予定や準備を欠落させてゆくライダー。

繰り返されるモチーフとしての、あまり幸せでない子供時代の記憶。親子や夫婦間での、口を利かないで行動で示唆しつづける、不確かな関係性。空間が捻じ曲げられたように、繋がるはずのない建物があちこちで繋がり合い、場所がありうべからざる存在に変換されてゆく。コミュニケーション不全、他者を思いやるより自分の気持ちのままに行動することで、色々な事が狂ってゆく。

いやぁ・・・。途中何度も、「市民の困りごとに頭を突っ込む前に、自分のスケジュールを確立させなよ!」「何で、一喝しないの?!」と・・・イライラさせられました。
大体音楽家に頼みこむようなことじゃないような・・・。
ファンタジーとも悪夢ともつかない、繰り返しの連続。しかも、事態はにっちもさっちもいかない膠着状態、或いはもっとひどい方向に展開してゆく。
ライダーは、何とかしようと手を尽くすのだが、どれもが裏目に出てしまう。なにせ、抱える問題が多過ぎるのだ。断ればいいのに・・・。
まあ、それは物語を外側から見て、見栄も何もない読者だから言えることなのかも知れませんがね。

見知らぬ子供だったはずが息子になったボリス、両親に認められないピアニストのシュテファン、市民から見下げられている老指揮者のブロツキー、さらに言えばボリスの祖父でポーターの地位を向上させようと苦闘した末に息を引き取るグスタフは、ライダーの過去と未来のようでもある。
様々な家族の間にある微妙な不和は、ライダー自身の事でもあり、スケジュールがうまく回らないことは、ライダーの心情にも大きな影響を与えているように見える。

・・・しかしね、ラストシーンにはびっくりしました。ブロツキーの演奏を収拾しようとして失敗し、ピアノを弾くこともスピーチをすることもなく翌朝を迎えてしまい、次の訪問地に向かおうとする電車中で、朝食を取ろうとしている、という終わり方なんですが。
この都市での混乱や自分が被った迷惑すら、全てはなかった事のようにふるまい、事実忘れてしまって次の都市のことだけを考えているようなのだ。あれだけ振り回されたことも、もうどうでもいいってことか・・・。
なんだかエンドレスループの予感が(笑)。

ああ・・・すみません、やっぱりろくな文章が書けてませんな。
気忙しく、忙しい時期にこういう難しい本は読むものではない、と思いました(^_^;)。

(2009・08.06 読了)

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ハヤカワepi文庫 著者:カズオ・イシグロ/古賀林幸出版社:早川書房サイズ:文庫ページ数:948p発


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