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zoom RSS 『おとぎ話の忘れ物』/小川洋子・樋上公実子 ○

<<   作成日時 : 2010/04/19 22:22   >>

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〈スワンキャンディー〉という、飴の製造及び小売一筋の店の片隅に、[忘れ物図書室]はある。
あちこちの忘れもの保管所から救い出されたおとぎ話たちが、翻訳され、製本され、静かに並べられている図書室。
さあ、お好みのキャンディーを口に入れ、おとぎ話の世界へ・・・。
樋上公実子さんの絵に合わせて、小川洋子さんが、不思議な物語を描き上げた、『おとぎ話の忘れ物』は、大人のための、スパイスたっぷりのおとぎ話。

カラリと乾いたエロス、無表情でどこに向かっているか曖昧な少女の視線、樋上さんのイラストは不思議な雰囲気を漂わせている。
それに合わせた小川さんの物語は、誰もが知っている原典があるようでいて、でもそこからは全く逸脱している、別の物語。

「ずきん倶楽部」
大きな犬を飼っているずきん倶楽部の会長が、『赤ずきん』のずきんを出品した。
「アリスという名前」
アリスなんて名前は大嫌い。パパが誕生祝いに蟻の観察セットを買ってきた。
「人魚宝石職人の一生」
人魚姫を大切に思っていた宝石職人は、王子の花嫁にヒトデの首飾りを届ける。
「愛されすぎた白鳥」
森の番人を惑わせた美しい白鳥は、番人からキャンディーをもらっては食べる。

最後の物語「愛されすぎた白鳥」が、〈スワンキャンディー〉に戻ってくるところが、素敵だ。
色とりどりのキャンディーが入った、〈湖の雫〉セット。杏、シナモンという定番から、何故か珊瑚や蚕、羊水まで様々な味がそろっているという。選べるリボンはなんと576色(涙色だってある)。そして、リボンで包んでもらう間に、[忘れ物図書室]のおとぎ話を読みふける。
非常に幻想的なお店だけど、なんだかとてつもない裏がありそうだ、とか思う(笑)。常連になったら、いつの間にか姿を消してしまうような・・・。
そして、お客が一人姿を消すと、物語が一つ増えて・・・いやいや、それはホラーですよね(^_^;)。

4編の物語は、元々は童話なんだけど、その甘く柔らかく、少し教訓じみた優しさは、あっさりと切り落とされている。代わりに加えられているのは、透明な残酷さ、乾いたグロテスクさ。
こういうの、結構好きですね。
世の中、甘くはないんだよ、美しく見えるモノの裏には、こんな世界が広がっているのさ、という魔女のほくそ笑む顔が見えるような、そんな物語達。
特に気に入ったのは、「ずきん倶楽部」。『赤ずきん』のずきんを再現するために、ずきん倶楽部の会長がやったこと・・・その執念というか、そこまでしなくちゃいけないのか、っていうのがすごいと思う。多分、ずきん倶楽部会長は何の躊躇いもなくやったんだろうけど・・・。

絵も、いくつか気に入ったのがあります。
表紙にもなっている「サロメ」(31P)、「繭」(24P)、「脱皮」(78P)、「蜜月」(98P)。実を言うと半裸の少女、というスタイルはあまり好きじゃないんですが、これらは服を着てないことは気にならず、雰囲気がいいなぁ、と感じました。

子供には、読ませられない「おとぎ話」ですね(笑)。
うう〜ん、世の中を少し知った高校生ぐらいからなら、話の面白さやイラストとの掛け合いなんかが分かってくるんじゃないかなぁ・・・と思いました。

(2010.04.19 読了)

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おとぎ話の忘れ物 小川洋子
([お]8−1)おとぎ話の忘れ物 (ポプラ文庫)著者:小川 洋子ポプラ社(2012-04-05)販売元:Amazon.co.jp 「何の遠慮もいりません。元々は忘れ物なのですから」。キャンディー屋の中に設 ... ...続きを見る
苗坊の徒然日記
2014/04/24 20:26

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは^^
毒のある童話たちでしたねー。でもこういう話、私結構好きです^m^忘れ物図書室も魅力的ですよね。キャンディではなく本目当てでこのお店に通いたいです。
「赤ずきん」の話はなかなかでしたよねー。私も好みでした。
苗坊
2014/04/24 20:28
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
私も私も!隠微な毒が、良かったですよね〜。
ではご一緒に、忘れ物図書室に通いましょうか♪
水無月・R
2014/04/24 22:49

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