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zoom RSS 『道徳という名の少年』/桜庭一樹 ○

<<   作成日時 : 2010/10/05 23:52   >>

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良くも悪くも、桜庭ワールドだなぁ・・・というのが第一印象。
淫靡で甘くまとわりつくような、それでいて砂のように乾いている、一族の歴史。喧しいのに、静かに流れて行く時代。
とても、桜庭一樹さんらしいなぁ〜と。
『道徳という名の少年』、町いちばんの美女から始まる、背徳の歴史。

「1、2、3、悠久!」
町いちばんの美女がそれぞれ父親の違う、四姉妹を生んだ。母が出奔した後、四姉妹は娼館で育つ。母が弟を連れ帰り、末妹は弟の子供を産む。
「ジャングリン・パパの愛撫の手」
戦場で腕を失った〈道徳(ジャングリン〉。妻となった娘は、ジャングリン・パパを愛していた。
「プラスチックの恋人」
ジャングリンの子供はジャングリーナ。一世を風靡する、歌手となる。
「ぼくの代わりに歌ってくれ」
ジャングリーナの息子はジャン。戦場で、届ける先のないラブレターとともに命を散らす。
「地球で最後の日」
ジャングリーナさんが、病でこの世を離れる日。遠縁の娘とその友人が、彼を訪ねる。

若い時は美しいのに、年を経ると脂肪の塊のように肥え太り、身動きすらできなくなる家系。思い出だけは美しく、背徳の空気にまぎれ、流れて行く。
長い年月の中で、薄まって失われていく神性。

1ページの文章の量も少なく、あちこちに見開きの挿絵が入るので、さらさら〜っと読めてしまいました。
多分深い意味とかもあったと思うんですけど、微妙に私の感情に引っ掛からなかったので・・・ちょっと残念。
背徳の部分は、桜庭さんの文章の上手さなんでしょうねぇ。ともするとただのスキャンダルで生臭いものが、美しく儚さをもって淡々と描かれていて、嫌悪感はありませんでした。
エロスを漂わせる挿絵とあいまって、グロテスクで隠微な雰囲気を持ちながらも、どこかカラッとしていて。

「地球で最後の日」の、憂鬱と倦怠のティーンエイジャー2人がかつてのスーパースターに会いに行き、その窓の下で携帯型音楽端末を聞きながら時間を過ごして、ジャングリーナの死を経験する物語が、良かった。不機嫌の塊である彼女たちは、「永遠に失われたうつくしいもの」のために涙を流し、自らの中からも〈うつくしいもの=無邪気な子供時代〉が永遠に失われたことに気がついてしまったのだろうか。
神話時代はうせ、現実に直面しなくてはいけないという哀愁が漂う物語でした。

(2010.10.05 読了)

道徳という名の少年
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道徳という名の少年
 桜庭一樹 2010 角川書店 豪華であやうい。野田仁美による装画や挿画に惹かれて手に取る人もいるだろうが、私は桜庭の小説だからこそ手に取った。ちょっと皮肉な文章を書く、この小説家が、タイトルに道徳とつけるなんて。どんな風に裏切ってくれるのか、楽しみになる。 およそ6世代になるか。町で一番の美女から始まる不道徳の歴史だ。ある者は娼婦になり、ある者は姉弟で愛し合い、ある者は夫の父親と愛し合い、ある者は人と愛し合うことができず、ある者は愛に出会う前に死ぬ。世代を重ねるごとに、愛する者との距離が疎遠に ...続きを見る
香桑の読書室
2010/10/06 00:58
道徳という名の少年 桜庭一樹
道徳という名の少年クチコミを見る 「1,2,3,悠久!」町一番の美女が父なし子を産んだ。誰が父親なのか、町の人間は調べようとするが、分からない。美女が産んだ4人の子供は母親である美女の生き写しで、父親の面影はなかった。あるとき、美女は黄色い目をした痩せこ.... ...続きを見る
苗坊の徒然日記
2010/10/06 09:57
道徳という名の少年(桜庭一樹)
桜庭ワールド全開。そう思える、絵本のような作品。 ...続きを見る
Bookworm
2010/10/06 12:37

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは☆
>〈うつくしいもの=無邪気な子供時代〉
なるほど〜! この読み解きにぐっときました。
言われてみれば、加齢の受容の難しさの物語でもありますね。
水無月・Rさんの記事を読んで、いろいろ考えさせられました。ありがとうございます。
香桑
2010/10/06 01:09
こんにちは^^
私も>〈うつくしいもの=無邪気な子供時代〉と言う部分にはおお!なるほど!と思いました。
私も何だか勉強になった気がします^^
一族の病気すらどこか官能的で、桜庭さんのこの独特の世界観を堪能しました。
挿絵もまた何だか艶かしくて、物語に合っていたと思います。
苗坊
2010/10/06 09:59
こんにちは。お久しぶりです。
美しい物の喪失、それは子供時代であったり「少女」という存在そのものであったり、自分を個人として世界に埋没させること無く存在出来る時代であったり・・・
きっと失うということは失ったと認識したときに始まる悲劇なのでしょうね。
空蝉
2010/10/06 15:55
>香桑さん、ありがとうございます(^^)。
いつの間にか自分を蝕んでいる年月、それに気づいてしまうことの哀しさ・・・かなぁという気がして、あんなことを口走った(筆が滑ったというかなんというか)のですが、皆さまからのご支持を得て、ちょっと調子に乗ってしまいそうです(笑)。

>苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
いえいえ・・・勢いで書いてしまった感もあるんですが(^_^;)。
ファンタジーの中の現実味という、不思議な世界観がありましたね!挿絵も良かったです。

>空蝉さん、ありがとうございます(^^)。
失ったと認識した時に始まる悲劇・・・。
桜庭さんが描きたかったことは、そういうことなのかもしれません・・・!
失ったものを、完全に取り戻すことは出来ない。形を変え、より良いものを得ることは出来るとしても、失ってすぐはそれに気付くことはない。だから少女たちは涙したのかもしれませんね。
水無月・R
2010/10/06 22:48
短い文章と意味深な挿絵に、私も深く読めば何か…と思いつつ、さらりと読んでしまったなぁ〜と、水無月・Rさんのレビューを読んで思いました。
みなさんもコメントされてますが。
>〈うつくしいもの=無邪気な子供時代〉
に、私も「なるほど、そうかー!」と思いました。ありがとうございました。
すずな
2010/10/07 12:44
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
いやぁ・・・つるっと書いたことを、皆様にほめて頂いちゃうと、気恥ずかしい限りでございます(^_^;)。
あの不機嫌なティーンエイジャーたちは、ジャングリーナさんの死によって、一つの時代が終わった(世の中とっても、自分たちにとっても)事を敏感に察知したんじゃないかな、なんて思ったりしたわけです。
まだ、泣くことでしか対処できない彼女たちは、どうなるのか・・・そんなことまで考えてしまうんですから、桜庭さんの世界観の作り方は凄いですよね。
水無月・R
2010/10/07 20:45

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