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zoom RSS 『からまる』/千早茜 ○

<<   作成日時 : 2011/06/13 16:23   >>

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まだ3作しか読んでないけど、千早茜さんは「孤独」を書くのが上手な作家さんだなぁ・・・という気がします。
本作『からまる』は、前二作とはちょっと雰囲気を変えて、現代日本が舞台。
第1話の主人公・武生から、ちょっとだけ関係のある別の人々の物語を七話つないで、みんながちょっとずつ、癒されていく。ほっとする物語でした。

「まいまい」
なんとなく生きている俺・武生。一人の女と関わりを持っているが。
「ゆらゆらと」
あたし・田村(武生の職場のアルバイト)は、また失恋した。でも話を聞いてくれる女友達がいる。
「からまる」
妻と距離のある私(武生の上司・係長)。ある日女子高生のストーカーが現れる。
「あししげく」
息子の誕生日ケーキの用意をしながら、彼を授かった頃の事を思い出す私・恵(武生の姉)。
「ほしつぶ」
教室の金魚を殺したのは僕・蒼真(武生の甥)。旅先の海岸でとある老人と出会い、星の砂をもらう。
「うみのはな」
子供の頃、私・華奈子(蒼真の家庭教師で田村の親友)に狂気を自覚させた男がいる。
「ひかりを」
女医である私・葛月(武生に関わる女)に会いに来る入院患者。迷いながらも目を逸らさずに進むのだ。

どの話の主人公も、自分は孤独でいいのだと思っている。だけど、それぞれが少しずつ触れ合ったりすれ違ったりするうちに、やはりだれかの暖かさに寄り添いたい、自分の輪郭をとらえたい、と思うようになる。
本当の孤独を知っている人には、沁み過ぎるぐらい、その過程が丁寧に描かれていると思う(私は本当の孤独を知っているのだろうか)。
人は一人では生きていけない。どこかで関わりを持つし、小さな縁がからまっていたり、遠目に存在を確認したり、妬んだり羨んだり、愛したりしながら、少しずつ進んでいく。やるせない思いを持っていても。

「ほしつぶ」に出てきたおじいさんが素敵だと思っていたら、「ひかりを」に出てきた。この大原さんというおじいさんは、どちらの物語でも主人公を癒す存在で、何だか仙人のようだと感じた。
「からまる」の係長が、私は一番好きかな。互いの忙しさにかまけて、おこってしまった出来事。そしてそれについて、何も言えないまま、なんとなく時間が過ぎてしまい、どうしたらよいかもわからなくなって、一緒に住みながらも別々の生活を送っていたのが、きちんと向かい合うことが出来て良かった。この夫婦は、不器用なんだと思う。
ところで、この章で「(魚のエサのイソメが)絡まり合ってるのを見ていると不安になる」という表現がありますが、どちらかというと私は安心しそうな気がする。私も結構、あんまり広範囲に関わり合いを持ちたくない、という思考の持ち主なんですが、それでもやっぱりどこかで繋がってるのは分かってるので、繋がってるんだ、繋がってていんだ、そう思って安心しそう。あんまり絡まり合い過ぎて、境目がなくなるほどなのは怖いけど。

各話のタイトルが〈ひらがな〉なのも、やわらかい雰囲気が出ていて良いですね〜。
やわらかいといっても、綺麗というのとも違う。各話の登場人物たちが、別の人物を介して繋がってて、しかもそのつながりは決して美しいものでも、純粋なものでもない不安定さが漂っていて、その揺らぐ感じが、とてもリアルでした。
多分、こんな人たちはどこにでもいるし、多分私もこんな面を持っている。

(2011.06.12 読了)

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは^^カキコありがとうございました。
章を通しての人とのつながり(からまり?)が読んでいて面白かったです。
みんな孤独な面を持っていましたが、それはきっと誰しもが持っているものなんですよね。だから癒しでも憎しみでも人の側にいきたくなる。
あのおじいさんは不思議なおじいさんでしたね。再度登場した時は「あ!」って、身を乗り出しました^^;
苗坊
2011/06/13 18:49
人は一人では生きていけないんだな〜ということを、改めて感じさせられた物語でした。
登場する人々の孤独がちょっとだけ癒される、そんなお話で、読んでいてなんだかホッとできるような作品でしたね。
すずな
2011/06/14 12:39
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
それぞれが、色々なつながり方をしていて・・・ああ、人って孤独であったとしても、やっぱりどこかで繋がってるんだなぁ〜、なんて考えてしまいました。
孤独もいいけど、誰かとからまるような関係も持っていたい。登場人物たちがそう思うようになっていくのを「癒し」というのは正しいのか判りませんが、なんとなく安心できますよね。
水無月・R
2011/06/14 15:35
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
一人だと思っても、実はそうじゃない。
必ず誰かとつながってるし、その誰かは自分を思ってくれている。
そう思うと、なんだかほっとしますよね。
・・・まあ、うへぇ(-_-;)ってなるような人とつながってたら、ちょっとイヤかも(笑)。
水無月・R
2011/06/14 15:38

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