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zoom RSS 『幽女の如き怨むもの』/三津田信三 ○

<<   作成日時 : 2012/09/07 23:22   >>

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あれ〜?ちょっと違うなぁ。
三津田信三さんの刀城言耶・主人公の『◎◎の如き●●もの』シリーズといえば、〈土着民族系ホラーミステリー〉で、二転三転する謎解き、最後に「真相らしきもの」は提示されるものの、解ききれない不可解な謎が全てをひっくり返しかねない、という息もつかせぬ展開なんですが。
本作『幽女の如き怨むもの』は、事件をじっくり追う代わりに、最後の謎解きが割とあっさりでした。
但し、謎解きの章の後に追記があって、それが一つの捻りにはなってるようですね。

戦前・戦中・戦後の三つの時代にわたって三度、同じ廓での三回ずつの投身事件(未遂も含む)があり、その背景にあるのは『幽女』という不可解な存在であり、緋桜という名の遊女であった。
第一部「花魁」〜初代緋桜の日記
故郷から何も知らずに遊郭に連れてこられた少女が花魁になり、不可思議な投身事件に巻き込まれる。
第二部「女将」〜半藤優子の語り
新装して引き継がれた廓に、二代目緋桜が連れてこられる。再び投身事件が起こり、二代目もまた巻き込まれる。
第三部「作家」〜佐古荘介の原稿
戦後カフェーとなった元廓に、三代目緋桜が現れる。みたび起こる投身事件。そして、三代目の死後、取材していた作家も不可解な転落死を遂げる。
第四部「探偵」〜刀城言耶の解釈
一部から三部までを整理し記録しなおした刀城言耶。元女将の半藤優子に報告しながら、自分の推理を語りだす。
「追記」
事件をまとめてから十年ほどたち、ふとしたことから手に入れた「ヒサクラ」という名の遊女の情報。いったい、幽女はいたのか、いなかったのか…?

今回は、あんまり刀城言耶が誰かに振り回されてトホホ、ってのがなくて、水無月・R的には残念でした(←まずそこなの?!)。
それから、最初に書いたんですけど、謎解きが割とあっさり終わっちゃったのが、このシリーズらしくないなぁ、って思うんですよね。
三人の緋桜の謎、そういうことでいいのかなぁ・・・。女将さんや遣り手婆が気が付かないのはともかく、朋輩は絶対気付くと思うんだよねぇ。ほんの数年のことだし。あえてそういう設定にすることで、予防線が張れたっていうことだけど、ちょっとねぇ…。そういう意味で、このトリックには気付けなかったなぁ。
トリックとは別に、そうせざるを得なかったその事情の悲しさは、とても痛ましく苦しかった。

「幽女」は、いたのか。度重なる彼女らの投身への道のりに、点々と見えたものとは。
遊女=幽女の怨念が引き金となって、花魁たちに襲い掛かる衝動は、存在したのか。
なぜ、三という数字に惹かれるように、繰り返されるのか。
そして、浪費される遊女という存在の悲しさ、切なさ。
読み応えがありました。

ミステリーという意味ではちょっと物足りなかったんですが、桃苑という遊郭における花魁の日々の暮らしなどの風俗の描写が興味深かったです。
そういえば、桃苑は花魁になるまで、花魁が本当は何をするかを教えないんですね。それはちょっと意外でした。
多分、吉原などでは遊女につく禿の時代から、遊女の身の回りの世話をしていろいろ知ってるはずだし、やるべきことを仕込んでから花魁(遊女)に仕立て上げてたような記憶があるので。
それぞれの遊郭で、いろんなやり方があったんですね。

さて、今作ではいつもの(でも、本当に…?)な展開が今一つピリッとしなかったので、ぜひ次作は目くるめく推理に翻弄され、そして〈真相らしきもの〉を提示されつつ、解き明かされない怪異にぞぞ〜っとしてみたいです。そんでもって刀城が、編集者・祖父江偲や怪異関係者あたりに振り回されて、トホホな感じになってくれたらもっといいですなぁ(笑)。

(2012.09.07 読了)

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ミステリー・リーグ 三津田信三 原書房発行年月:2012年04月 ページ数:566p サイズ:単行本


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