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zoom RSS 『ウエストウイング』/津村記久子 ○

<<   作成日時 : 2013/03/21 15:18   >>

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津村記久子さんの作品は久しぶりだな〜、って思ってたら、まだ2作品目でした(笑)。なんかねぇ、すごくしっくりくるんですよ、津村さんの作品の世界って。
本作『ウエストウイング』も、とある古い雑居ビルに通う人々の間に見え隠れする不思議なつながりとビルへの思いなど、ほんとに普通〜の日常が舞台になっていて、なんだかとても親近感が持てました。

しっかりものの中堅OL・ネゴロの職場がある椿ビルディングは、会社事務所・飲食店・ドラッグストア・喫茶店・進学塾などが入っている、古いが結構大きな雑居ビルである。
職場での息抜きに、同じ階の物置き場と化している空き事務所を時々訪れていたネゴロは、同じように誰かがそこに来ているのを知る。その来訪者は、ビル内の進学塾で落ちこぼれかけている小学生・ヒロシと、そこそこ仕事はデキるけどなんとなく満たされない日々を送っているサラリーマン・フカボリであった。彼らは顔を合わさないまま、その隠れ部屋を介して物のやり取りを始める。
そんなある日、大豪雨に見舞われて駅からの地下道が水没し、ビル内から出られなくなる。ネゴロ・ヒロシ・フカボリはそれぞれにその大雨をやり過ごしながら、ちょっとした事件に出会う。
そうこうするうちに椿ビルディングの東棟は取り壊され、ネゴロたちの西棟も「大規模補修費の負担か取り壊しのための退去か」が店子たちに迫られるようになる。
隠れ部屋に出入りしていた3人は、奇妙な咳込みと微熱という症状が出始める。ある日、フカボリが隠れ部屋でキャスター椅子から転落して救急車で運ばれ、隠れ部屋の水漏れが発覚。その水漏れは細菌に汚染されていたため、ビルを利用している全員の検疫がなされ、フカボリ・ネゴロ・ヒロシは隔離される。
隔離されている間に、ビルの取り壊しの話が進み、椿ビルディングの屋上に重機が設置される。
だが、ネゴロの暗躍や店子たちの努力により、取り壊しは回避されたようだ。入院している3人は初めて一堂に会し、お互いが隠れ部屋の利用者であることを知り、取り壊し回避に安堵しながら、物語は終わりを告げる。

ちょっと・・・長かったかな(笑)。ネゴロが職場でちょっとイラッてくるようなこと、フカボリの日々の単調さへのそこはかとない不安、ヒロシの勉強よりも興味があることを追いたいけど母親の期待を裏切るのもという遠慮、それぞれが「あ〜、あるある、そういうこと」っていう共感がわくんだけど。
雑居ビルじゃなかったけど、結構年代物なオフィスビルで仕事してた時ってこんな感じだったなとか、ビル内の店舗の人と仲良くなることもあるんだ〜っていう感心とか、イロイロ面白いこともたくさんありました。
ただ、いかんせん〈何気なく普通の日常〉を丁寧に書くが故の冗長さは免れなかったいうか…途中ちょっとダレてたです、はい(^_^;)。

隠れ部屋を介しての交流や、妙な事件での関係はありつつも、最後の最後まで3人が直接的にかかわらないのが、良かった。
やっと3人が一緒の空間にいることになった時、「椿ビルディングは解体されない」という事になって、おお〜自然にきれいにまとまった!って感じました。
まあその解体回避に関しては、ネゴロの課長へのメール戦略がかなり功を奏したみたいで、さすがしっかり者だなぁ、と感心。
だけど、家主が態度をはっきりしないうちに、解体用の重機を屋上に設置しちゃうものなのかしらん…?ちょっとそこだけギモンですね。どうなんだろ。

ヒロシが塾の中ではうまくやれてないのに、貸しロッカーのおっさんやエステのお姉さんとはきちんと関係を結べて、貸しロッカーのバイトも勤め上げられてるのが、なんだかすごいなと思います。ヒロシはヘンなところ老成してるんですよねぇ(笑)。
最後の方で、お母さんに「自分にできることをがんばりたいねん」と伝えたところ、ちょっとジーンと来てしまった。ちゃんと考えてるんだよね、小学生なりに。しかも、きちんと。まだ子供なところもあるし、知らないことだらけで人生経験もあまりないけど、それでも。なんか、このシーンで急にヒロシが愛おしくなりました。

フカボリが、ちょっとトホホですね(笑)。水没した地下道をゴムボートで渡るって・・・凄い発想。しかも、途中でバランス崩して転覆しそうになったり、ある程度渡し船商売した後、ボートを捨てて帰っちゃったり。なんだろ、フカボリって・・・真面目なんだか、投げやりなんだかわからないところがある。悪い奴ではないけどねぇ(笑)。
キャスター椅子に上がって、天井に手を伸ばしたりしちゃ駄目だってば〜。そりゃ転がり落ちるわ。しかも、頭打って額割って出血し、ずぶ濡れになりながらも隠れ部屋からは這い出て、壁に血の痕残しながら廊下で力尽きて救急車呼ばれるって・・・。どんなドラマチック(マイナス方向で)だよ、ねぇ(^_^;)。

三人三様、どん詰まりという程ではないけど、そこはかとな〜く閉塞してる感じが、非常にリアルでしたね。現実とうまく折り合えない、なんて所までは行ってないけど、自分の置かれた状況にうまく乗り切れてないような、頼りない日常。だけど、私たちの普通の日常だって、こんな感じ。しっくりこないことは多々あるし、ちょっと困ったなあと思っても、何となくやり過ごせてしまったり。
そんなところを描くのが、津村さんはホントにうまい。

舞台が大阪だったというのもあるのかな。妙にすとんとハマる感じのする物語でした。
残念ながら私は、雑居ビルのしっかり者のOLでも、勉強より絵を描きたい小学生でも、トホホなサラリーマンでもないけど。

(2,013.03.20 読了)

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津村記久子 朝日新聞出版発行年月:2012年11月 予約締切日:2012年11月05日 ページ数:3


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おいしい本箱 book cafe
2013/03/22 23:58

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
水無月・Rさん、こんばんは!
コメントしにきてくださってありがとうございます。フカボリくん、ほんとにトホホでしたよねえ(笑)私も読みながら、思う存分ツッコミました。三者三様、みんなどこか足りかなったり、いびつだったり、人としての凸凹を持ってるままに生きてる感じが、好きな小説です。
トラックバックの件ですが、実は、今のブログの機能が、まだ私にはちゃんと把握できてなくて(あかんやん・・・)一応、送信はしてみたのですが、できてるのかどうかわからないし、こちらのトラックバックURLを表示させる方法もまだわかっていないというという体たらくです。ごめんなさい。もちろんリンクは貼って頂いて構いません。よろしくお願いします。
ERI
2013/03/23 00:16
ERIさん、ありがとうございます。(^^)
三人が三人とも、普通にどこか足りない感じがするところが、とても親近感がわきますよね。
フカボリのシーンは、ホント笑えました。なんなのこの人(笑)って。
TBはして頂けてますね。ありがとうございます♪
水無月・R
2013/03/24 20:51

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