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zoom RSS 『信長〜あるいは戴冠せるアンドロギュヌス〜』/宇月原晴明 ○

<<   作成日時 : 2015/12/06 11:38   >>

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私、宇月原晴明さんの作品、根性がないと読めないのですよ(笑)。
でも、大好きなんです。幻想と退廃と史実と理想と露悪と・・・・さまざまなものが入り混じり、一つの物語を作り上げるその緻密さ、絢爛豪華で華々しくもうら淋しさを漂わせる雰囲気、重厚で軽妙で、夢のようで・・・。
まあ、だからこそ、気力と根性が充実してないと、読めないのですが・・・(^_^;)。
本作『信長〜あるいは戴冠せるアンドロギュヌス〜』もまた、1週間以上かかって読了いたしました。でもホント、読めてよかった・・・。素晴らしかったです。

信長が美貌で不老の両性具有だったかどうかはさておき、「神たらんとしていた」とか「比叡山などで黙示録を再現してみた」とか「自らの死を演出するために、光秀や秀吉に書を送って焚き付けていた」などは、フィクションでありながら〈実は、そうだったのかも…!!!〉と思えるほどのリアリティ。

大戦間近のキナ臭さを漂わせるベルリンで、ヘリオガルバスを研究しているアントナン・アルトーと彼を訪れる日本人青年・総見寺が、ローマの狂皇帝・ヘリオガルバスと信長の共通点を論議検討しあう。
その合間に信長の物語が大きく入り込む。両性具有にして牛頭天王の申し子、あらゆる宗教教義を飲み込んだ末に自らを太陽神(であり暗黒神)たらんと周りの者どもを動かし、妖しの建造物を完成させ、全てを操っていく信長。

総見寺から得た信長の情報と己の研究するヘリオガルバスの類似点・相違点を、熱に浮かされたように検討する、アルトー。
2年の間を置き再会した二人と同席した、平凡そうで奇妙なドイツ人の男。奇石の研究をしているというその男の前で、更なる情報交換とその検討をし、語り合いが最高潮に達した瞬間、そのドイツ人の男は豹変した。

ナチスドイツと手を組みたかった日本軍、そしてその諜報工作員たる総見寺の活動、ヒトラーの日本びいきの真実。
総見寺が操った情報工作は、史実ではない。だが、史実でないとして、真実ではないと、言い切れるのか。そんな風にすら思える不可思議な合致が、アルトーと総見寺の3度目の邂逅に語られる。

うわ〜、断片的に思ったことを書き連ねても、書き連ねても、全く足りませぬ。
実は、読んでる時はこの作品中の「アルトー及びアルトーと総見寺のパート」にはあまり興味が持てなかったのですよ。
正直「アルトーの話はイイから、信長の話に集中したい」とすら思ってたのです。ヘリオガルバスなんて知らなかったし。
ですが、一通り読み終えて、振り返ってみるに「アルトーの話なくしては、最後のナチスと日本の謀略は語れぬし、それがあってこそのこの作品だった」と分かりました。

信長パートは、純粋に楽しめましたねぇ。まあ、今ひとつ両性具有だってことが活かされてなかった感があるのですが、尭照が己の身体を犠牲にしてまで信長に仕えたこと、光秀が恨みではなく信長の要望に突き動かされての本能寺急襲であったこと、秀吉と蜂須賀小六のやり取りの剽げたところ、各勢力の忍びたちの存在など、どれもが興味深かったです。
しかし、かの有名な藤吉郎(秀吉)の「草履を温めておりました」エピソードは、実はそんな理由だったなんて…ってちょっと笑えました。どんだけ信長を恋い慕ってたんだ、秀吉(笑)。

しかしまあ、本当に、とんでもない情報量です。ヘリオガルバス近辺の話、信長本人の話、日本古代から脈々と伝わる神話の応用、共通する事象を結びつける様々な断片を織り上げて作られる物語。
一つ一つを掘り下げれば、もっと訳が判らなくなるし、かといって表面的なことだけ言い繕っても物語に現実味は持たせられないし、しかしながら幻想感がなくては読者ともども登場人物たちを幻惑させることもできない。
その絶妙なさじ加減に、読者としていい意味で酩酊していたといってもよいです。

ちなみに、平凡そうな無表情ドイツ人・ヴォルフですが、登場した時から、なんだかキナ臭い奴だなと思ってました。読み進めるにつれ「こいつ、もしかして」と思ってたら、やっぱり最後にはちょび髭をくっつけて正体を現しました。ビックリ。
ていうか、アレ、付け髭って設定なんだ、宇月原さん!細かいところの発想が素敵ですよ!

(2015.12.5 読了)

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著者: 宇月原 晴明出版社:新潮社サイズ:文庫ISBN-10:4101309310ISBN-13:9


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