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zoom RSS 『起終点駅(ターミナル)』/桜木紫乃 〇

<<   作成日時 : 2016/11/21 15:43   >>

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それぞれの人生の中で、幾度か巡り合うことのある『起終点駅(ターミナル)』
桜木紫乃さんが描く孤独な人生の物語は、もの悲しさを湛えているような気がします。
〈無縁〉をテーマに、寂寥や諦観を含んで、6つの人生が語られその渦に飲み込まれました。

北海道の、うら寂れた街の片隅で、孤独の物語はひっそりと、そしていくつも展開する。
北の大地は、凍てつく寒さと各地から集まった開拓民たちという特殊な人間関係から、より一層孤独を増幅させる気がしました。

「かたちないもの」
かつて愛した男の納骨式に出席する、キャリアウーマン。
「海鳥の行方」
新人女性記者が防波堤で出会った、老釣り人。
「起終点駅」
国選弁護人しか引き受けない弁護士の、過去と現在。
「スクラップ・ロード」
自分を捨てた父と、偶然再会する。あちら側のルール。
「たたかいにやぶれて咲けよ」
詩人であり続けた老女の晩年を取材する、女性記者。
「潮風の家」
30年ぶりに、故郷に帰った女性は、親しくしていた老女と過去を思い起こしながら一晩を過ごす。

どの物語にも、それぞれが選んできた過去とそこから派生する孤独が、ひそやかに広がっていました。
孤独であることの善し悪しは、その時々の精一杯で選んできた結果だから、決めつけられない。強くそう感じました。孤独であっても、不幸ではない。それぞれが、どう生きたいか死にたいか、大事なのはそちらの方だと思います。

いくつかの物語の中で、他者を排斥し見下すことで、自分の位置を確かめようとする人間模様が描かれていました。その浅ましさに辟易しましたが、そうせざるを得ないほど、ひとの心は荒んでいるのかもしれません。それもまた、悲しいことだと思いました。

孤独に生きる人々の中に息づく、過去。それでも彼らは生きているし、いつか死んでいく。淡々と描かれるモノクロームの世界の中で、ところどころに色が差しているような、明るさや鮮やかさ激しさが描かれていて、はっと息をのむ瞬間がありました。
無縁、孤独、寂寥。それに耐え、精一杯生き、そしてひっそりと死んでゆく。誰かに爪痕を残すこと、できるだけ何も残さないこと。
どうあっても、人は生き、そして去っていく。
心が弱ってる時には、桜木作品は読めないなぁ、と痛感しました。

「かたちないもの」が一番好きです。
強気で仕事ができて、粋な美人キャリアウーマン。
彼女を形作る一部となった男の納骨式。何故、彼は自分を切り捨てて、故郷に帰ったのか。彼女が選んだ選択肢は、彼女を新たに作り上げていく。今、彼女があるのは、そうした過去があったから。自分を見つめなおした、その旅。
十年前、自分が出した手紙が開封されずに手元に戻ってきて、それを読み直した彼女は、こう思うのだ。
〜〜明日も明後日も、折り合いの悪い日々には酒を垂らす。一日一日無理やりけりをつけながら、雑踏にヒールの音を響かせて歩く。街に吹く風を受けながら、まっすぐ歩く。〜〜(本文より引用)
なんて、潔い。
正直、私には真似できるものではないでしょう。ただまっすぐ歩くことが、どれだけ困難かを、彼女は知っているのに、それでもそう思う。その強さを羨ましいと思います。

途中でもちょっと書きましたが、桜木さんの作品は、疲れていたり心が弱ってる時に読むのはとても大変ですが、それでもほかの作品も読んでみたいと感じてしまいます。人気がある作家さんなので、図書館の順番待ちも結構長いです(笑)。
さてさて、次は何を予約しようかしら。

(2016.11.20 読了)

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起終点駅(ターミナル) 桜木紫乃
起終点駅(ターミナル)著者:桜木 紫乃小学館(2012-04-16)販売元:Amazon.co.jpクチコミを見る オススメ! 生きて行きさえすれば、いいことがある。 「かたちないもの」笹野真理子が函 ... ...続きを見る
苗坊の徒然日記
2016/11/21 20:57
起終点駅 ターミナル(桜木紫乃)
6編の短編集。 ...続きを見る
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2016/11/29 12:36

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは。
短編集でしたが、そう思えないほどの重厚感でしたねぇ。桜木さんの作品は読んでいて辛いと思う時もたくさんありますが^^;それ以上に生きることの大切さも教えてくれているような気がします。
でも、おっしゃるとおり自分の精神状態が悪いときに読むと尚更悪くなるので気を付けないといけないですよね^^;
苗坊
2016/11/21 21:01
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
6つの人生は、どれもが重いものを背負っていて、読むのがつらくなる時もありましたね。
心が弱ってる時に読めなくなりそうなほど、ずっしりと私の中に入り込んでくるというのも、桜木作品の魅力ですね。
水無月・R
2016/11/21 22:26
彼らみなが、過酷な運命に翻弄されながらも、それを受け入れて生きていく。そんな姿に痛々しさを感じつつも強さを感じる作品でもありました。
それが魅力なんでしょうが、やはり私も心が弱っている時には桜木作品は読めないなぁと思いました。気力がもたない、そんな気持ちになります。
すずな
2016/11/29 14:25
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
自分で選んできたことを背負って、一歩ずつ歩いていく登場人物たちに、こちらまで引っ張られそうになりました。
そう、それが魅力なんですけどね…(^^;)。
元気な時に読みたいです(笑)。
すずなさんのレビューの方での次の作品のお勧め、ありがとうございます。リストに入りました!
水無月・R
2016/11/29 18:02

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