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zoom RSS 『聚楽 〜太閤の錬金窟〜』/宇月原清明 〇

<<   作成日時 : 2017/06/18 15:58   >>

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今回も、重厚で緻密な展開、読者を魅了する外連味を持ちながら確固たる歴史を描く宇月原清明さんに、してやられました・・・。
殺生関白と呼ばれた豊臣秀次の真実、遠くヨーロッパから発生し彼に至るイエズス会の異端思想、取り残されたものたちのやるせなさ。
華々しく描かれる登場人物たち。歴史背景。でも、印象的なのは、時折よぎり、後々まで余韻を引く寂寥感。
『聚楽 〜太閤の錬金窟〜』に渦巻く、濃密な世界観に翻弄されながらの読書となりました。

気合と根性がないと読めないとわかってるので、時間がかかっても気にせず、丁寧に読むことが出来ました。と言っても、本作のすべてを理解できたわけではなく、あちこち寄り道したり調べたり、ニュアンスで分かったつもりで放置したり、という過程を経て・・・なのですが。

幻想、退廃、清冽、オカルティズム、異端の思想、表舞台に出ぬ忍びの者たち、歴史を動かしてきた偉大な人物たちの真実、洋の東西を問わぬ様々な要素で織り上げられる、〈この物語での史実〉。
錬金術と言えば人体錬成、恐ろしい程グロテスクな描写があるにもかかわらず、それでも物語から現実感が損なわれることはなく、〈現実ではないとわかっていてもその世界に酩酊する〉という感覚を存分に味わいました。

とにかく本当に様々な要素が複雑に絡まり合いながらも、一切無駄なものはなく、全てが物語が動いていくために必要な事実である、という整合性が、とんでもないです。無数にある伏線は華麗に回収され、〈実はそうであった歴史の真実〉が目の前に繰り広げられます。
とてもじゃありませんが、あらすじなど書けません・・・。

ただ一つ、タイトルに疑問が(笑)。
〈太閤〉じゃなくて〈関白〉の錬金窟ですよねぇ?どうして〈太閤〉なんだろう?
〈関白〉より〈太閤〉のほうが、イメージがいい気はしますが、錬金術を行ってたのは秀次なんだし・・。

ジャンヌ・ダルクと青髭公・ジル・ド・レ、ポステルともう一人のジャンヌ、そして遠く海を渡ったこの国で別の人物たちになぞられた彼らの関係。
イエズス会の異端審問を担う機関から派遣されている司祭・ガーゴと家康がやむを得ず秀次近辺を探るために遣わした服部党の忍び・平六が、秀次が支配する巨大居城・聚楽の地下で見てしまった「人体錬成」とその過程の成果。人体錬成の培養にされた少女たちの悲惨さとそれでも彼女たちを包む幸福感。
う〜ん、・・・何を書こうとしても、まともな文章を書けない気がしてきました。
とにかく、本当にたくさんの要素があって、気になることや凄いと思うこと、一つずつでも取り上げて語り出したら、すごくうっとおしい一人語りにしかならない予感(笑)。

濃密なオカルト観を下地にした世界は、グロテスクで幻惑的な露悪が漂っているのに、ところどころで「普通の人間(偉大な人物ではあるが)」である家康や秀吉の「あの夏の庭の思い出」の清々しい輝かしさが描かれて、切なくなりました。
どうして、あの悦ばしく美しいあの一瞬で、世界は止まってしまわなかったのだろう。
無心に瓜をむさぼり食べた少年たちの、あのきらめきは、何故変容してしまったのだろう。
この切なさあっての、この物語だと感じました。

秀次の出自の真実も、彼が行った人体錬成も、彼が従えた曽呂利・ポステルと平六・ガーゴの忍び合戦も、派手さがあり物語の重要な要素なのですが、私にとっては〈残されたものの寂寥感〉のやるせなさが、最も印象的でした。
信長という輝ける存在、その妹として傍らにあった市、下仕えの従者であった藤吉郎(秀吉)、捕虜の子であった竹千代(家康)、4人の美しく輝いていたあの夏の一瞬。
その思い出ずっと抱きながら、失ったことを胸に刻みつけながら生きていくしかなかった、〈残されたもの〉の切なさが、胸にしみました。

(2017.06.18 読了)

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