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zoom RSS 『喉の奥なら傷ついてもばれない』/宮木あや子 ◎

<<   作成日時 : 2017/08/18 11:30   >>

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出た・・・。
宮木あや子さんのダークサイド系。
背徳と官能と虐待。ねじ曲がった、愛情。痛みやえげつない苦しさ。
表題『喉の奥なら傷ついてもばれない』という言葉に秘められた、あまりにも痛切な願い。
読むことが苦しいのに、それでも一気に読んでしまい、心身ともに熱中症になってしまいました(笑)。
ホントに恐しい作家さんですよ、宮木さんたら。

「天国の鬼」
17年前、駆け落ちをした男と再会した。「生きていて、良かった」の二重の意味。
「肌蕾」
趣味も特技も自律。健康な生活。いっとき乱れても、すぐに戻せる。
「金色」
うまく生きてきた。欲するものと出会ってしまった。
「指と首、隠れたところ」
水槽の中は、狭くて、苦しい。
「ろくでなし」
転落した人生の中で、出会った男。
「泥梨の天使」
娘が心配で、大事で、他は何一つ信じられない。

どの物語も、一般的な「愛」からほど遠い「歪んだ愛」を描いています。
でも、正しいって、どういうことなのか。
歪んでいるのに、歪んでいることはわかっていても、それを正して生きなおすことのできない人々。「ここから出して、助けて、助けて、私を本当に愛して」全身全霊でそれを叫んでいても、本当に彼女たちはそれを望んでいるのだろうか。
囚われて、沈んで、そのまま「自分が溶けてなくなればいい」と思っているのではないか、そう感じました。

「喉の奥なら傷ついてもばれない」と、お互いの内部に傷をつけ合った少年と少女が、17年後にふと再会して「生きていて、良かった」と言う。
「生きて再会できてよかった」「あの地獄を生き延びられたんだね」「あのまま惨めに死ななくてよかった」。
たぶんそれだけではない、様々な意味を含んだその言葉は、「喉の奥につけた傷」を、物理的には消えてしまった傷を、素手でこじ開けてしまったのだろうな…。

〈泥梨(ないり)〉とは、奈落・地獄のこと。
「泥梨の天使」の娘の、絶望感。そして、母親の信念に近い思い込み。怖ろしいまでに、頑ななそれに嫌悪を感じるけれど、子供を思い通りに守り育てたいと思う気持ちが、行き過ぎているだけ。子供を傷つけたいだなんて、ひとかけらも思っていない彼女に、背筋が寒くなりました。だって、私だって、もしかしたら。ここまで酷くはなくても、彼らに全く何も強いてはいない、とは言えない自分に、ぞっとしました。

「天国の鬼」の主人公が、何をどうしようとそれは勝手だと思うけれど、ただ唯一許せないことがあります。主人公は、自分が17年前に死んでいて今は余生を生きている、或いは死後にあると思っていて、その死後の天国が、娘の地獄の上に成り立っていることを自覚していること。それを切り離すべきなのに、できない。だからこそ、物語になるのだろうけど、これだけは、読んでいてい本当につらかったです。

虐待された子供時代を経て、成長して虐待に走る彼女たち。しつけや行き過ぎた愛は、虐待。ままならぬ想い。
宮木作品には、娘を自分の付属品のように扱う母親がよく出てきます。自分の都合よく扱い、自分に従うのが当然、思うがままにならないなら、言葉で暴力で娘たちを縛り付ける。反抗することすらできず、唯々諾々と従ってしまう娘たちの方が、悪いのだろうか。そんなことはない。
だが、娘たちはそんな母でも欲するし、母は娘に求められれば、更に娘を縛り付ける、共依存の世界に陥る。閉塞された世界。
息をひそめながら、それでも一気に読んでしまいました。切なくて、狂おしくて、哀しい。
でも、他人事にどうしても思えない。何かがちょっとだけ間違ったら、私だって加害者になるかもしれないと、思えてしまうから。

(2017.08.12 読了)

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは。
タイトルからして嫌な予感がする作品でしたよね^^;歪んだ愛を書かせたら宮木さんはピカイチですよね(褒めている)
それでも愛というのはまさに紙一重で、こうなることもあり得るんですよね。
怖いと思いつつも私も一気読みでした。
苗坊
2017/08/21 22:52
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
そうなんですよ、宮木さんのこの「歪んでるけど、もうそれしかない愛」というのが、これでもかこれでもかと迫ってきましたね!
人の心の中の、ちょっとした引き金なんて、誰にでもあるから、本当に怖い。怖ろしいですよね。
水無月・R
2017/08/22 22:05

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