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zoom RSS 『常夜』/石川緑 〇

<<   作成日時 : 2017/11/18 19:33   >>

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大学院で民俗学を専攻し地方の博物館の学芸員になった男が、日々の仕事やフィールドワークのさなかにふと出会う幽やかな出来事の数々を描いた、『常夜』
『幽』怪談文学賞 長編部門大賞受賞作である本作がデビュー作の石川緑さん、作者と同名の民俗学者が主人公となって、巡り合う怪異を淡々と語る物語。

つかみどころが、ない。
そして、常にすぐそばに「死」があり、ひっそりと忍び寄ってきている。
しかも、主人公である石川は、唯々諾々とその流れに従ってしまっている。
なのに、何故かそれに攫われることなく、現実感のない日常を生きている。

怪談文学賞の大賞作ではあるけれど、怪談と言うほど怖くはなく、民俗学的な怪異を淡々と書き記し続けられていて、逆に石川の正気が心配になりましたね。
日常として学芸員の仕事をこなし、結婚もして生活もちゃんと送っていながら、地に足がついていないというのとは少し違う、気持ちの半分をどこかに置き忘れてきてしまったかのような日々。

恩師との間に生じている微妙な距離感の理由がよくわからず、恩師の話になる度に居心地の悪い思いをしました。別に確執があったわけでもなさそうだし、何なんだろう…。
その恩師・野々宮も、石川に対して煙に巻くような歯に何か挟まったような、微妙な態度をとる。
モヤモヤするわぁ・・・。

まあ、物語のメインはそこではなさそうなので、とりあえず保留したまま読み進める。
友人の死、フィールドワーク中に出会った妙に快活な男、宿泊先に現れ石川を襲う蟲や老人。
地方にありがちな家同士の見栄の張り合いに巻き込まれ、強引な恩師の見合い仲介に対して結婚を急いだ妻との生活、博物館を訪れる人々への対応、館内の人間関係。
怪異と並行して日常があり、石川の中でその境界はどんどん曖昧になっていくかのよう。
いつか、現実から零れ落ちてしまうのではないか、いやこのままいつまでもその狭間を一人だけ漂っていくのではないか、石川はいつまで・・・と、落ち着かない気持ちのまま、なんと終わりを迎えてしまいました。

常に、暗く湿った雰囲気の中でひっそりと怪異に出会い、それを解決することもないまま、うやむやのままに日常へと流れていく。
微妙な気配と疑問を残して、いつの間にか物語が終わってしまいましたね。

そんなぼんやりとした石川の印象とは逆に、くっきりとした人物造形で姉御肌の同僚の宇佐美さんの存在が、印象的でした。
記憶に残るといえば、石川の妻も妙に引っかかりました。同じ学芸員として知り合い、案内状を送り合う程度の知己であったのが、乞われて結婚。知己の無い見知らぬ土地に来て、パートの仕事をしながら石川と暮らすものの、石川はしょっちゅうフィールドワークに出てしまう。石川の心身の健康に気を配りつつ、何故か縫い針入りの手作り弁当を石川に持たせる。
え・・・なんかコワイよ!
その縫い針について石川が言及もしないのも、怖い・・・なんなのこの夫婦。

余談ですが、帯の推奨文に小松和彦氏の名前を見た途端、学生時代を思い出しました(笑)。
異界とか怪異とかに関する小松氏の文章は読みやすく理解しやすかった・・・、懐かしいなぁ。

(2017.11.18 読了)

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