『死神の精度』/伊坂幸太郎 ◎

感情もなければ痛覚もない死神が唯一つ、現世で愛するものは「ミュージック」である。死神は、仕事の現場(人間界)に出ると仕事の合間を縫って、CDショップで音楽を視聴する。
死神は、寿命でない死を迎える人間を査定して、その人物の死の可否を担当部署に報告し、その死を見届ける。『死神の精度』は、そんな死神の私が出会った幾つかの死の判定の物語だ。

死を迎えるはずの人間を訪れ、1週間観察したり話をしたりして、死神は死の可否を決定する。大抵は可と報告されるのだが、表題作の第1章「死神の精度」で「見送り」とされる女性が出る。この死神の、「万が一、彼女が優れた歌手となることに成功したとして、さらに更にさらに、私がいつか訪れたCDショップの視聴機で彼女の曲を聴くときが来たら、それはそれで愉快かもしれないな」という気まぐれから。その女性のは歌手としての成功が最終章「死神対老女」で触れられる。

死神は、感情のない視線で、人間達を観察し判定する。が、何故か冷たさは感じられず、逆に暖かく心地よい気持ちになってしまった。何故だろう?死神と関わることで死に気付く人間の、本能的な暖かさが死神を通して伝わってくるのだろうか?

「ミュージック」を偏愛し、美しいものには美しいと言う事が出来る、だが人間に同情も畏怖もない、死神。その飄々としたキャラクターが、非常にいい。何千年も前に出会った思想家の言葉を引用したり、「死の判定」をした人々を思い出したり。案外、いい事を言うのだ。いい事を言って、「死の判定対象者」の気持ちを掬い上げる。が、判定は「可」。無情ではなく、淡々と仕事をこなす死神。それでこそ、いいと思う。

最終章「死神対老女」は、幾つかの伏線の集約する物語だった。その伏線から、『死神の精度』の物語は数十年の間隔があいているのだと気が付いた。なるほど~。
この章で「仕事の時はいつも雨」な雨男の死神が、初めて青空に出会う。そして「人間というのは、眩しい時と笑う時に、似た表情になるんだな」と気がつく。この章は、死神は判定をしないまま、終わりを迎える。老女は、「可」と判定されたのか、それとも「見送り」だったのか。そんなことは、どうでもいいのかも。死神が「初めて青空を見」、「眩しいも嬉しいも意味合いは同じ」という老女の言葉をよく理解できないこと。こっちのほうが重要に思えた。

(2007.3.10 読了)
死神の精度
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著者:伊坂幸太郎出版社:文藝春秋サイズ:単行本ページ数:275p発行年月:2005年06月この著者の


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この記事へのコメント

空蝉
2007年03月11日 21:08
トラバありがとうございました。私もさせていただいたんですが・・・できているのでしょうか???本当に疎くていまだにやり方が定かではないのです・・・出来ていなかったら教えてくださいね! ところで今月の『ダヴィンチ』は伊坂幸太郎特集♪もうお読みでしょうか?ふふ、自分の好きな作家が大衆に評価されていくのって嬉しさ寂しさ両方ですね。
2007年03月11日 21:32
こちらこそ、ありがとうございました。
スパムTBが多いので、確認するまで保留というスタイルをとっておりまして、空蝉さんの記事をアップするのが遅くなってしまいました。
ごめんなさい。
なんと『ダヴィンチ』で特集!図書館へ駆け込まねば!(図書館派の水無月・R)
2007年03月14日 00:53
はじめまして。TBありがとうございます。
この死神のフラットさが、いいですよね。伊坂氏の生み出すキャラクターは、味があってかみ締めるとおいしいです♪これからもよろしくお願いします。
2007年09月07日 14:17
こんにちは。
水無月・Rさんにおススメ頂いたこの作品、ようやく読めました!
死神の千葉の世間ずれした言動がツボでした。各章が独立しているようで、最後の章で繋がっている。思わず「お見事!」と唸ってしまいましたよ~。
良い作品をおススメいただいて、ありがとうございました♪
2007年09月07日 21:55
すずなさん、こんばんは(^^)。
私の方こそ、いつもすずなさんのブログから、次に読む作品の参考にさせていただいてます♪
伊坂さんの物語構成力って、本当にすごいですね。読んでて「うぉぉぉ!」って叫んじゃいました。
たかこ
2009年07月08日 14:05
「死神対老女」はうまいですね~。話のもってきかたに、さすが!となりました。
死神のキャラ、結構好きです~ ^m^
2009年07月08日 23:19
たかこさん、ありがとうございます(^^)。
最終章でわかる物語同士の繋がり、というのが伊坂さんの構成力のすごさだなぁ、と思いました。
無理がなく、綺麗に収束してゆく、その様は本当に素晴らしい~!ですよね♪

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