『箪笥のなか』/長野まゆみ ○

あれ?いつもと感じが違います。いわゆる「美少年話」じゃないですね。長野まゆみ特有の、美しい文章は健在ですが。

今回は、和の雰囲気たっぷりに、親戚から譲り受けた古い箪笥を巡って、語り手・私と色々と引き寄せてしまう弟や私の家の大家などが箪笥に宿る<何か>の気配を感じ、また<何か>に出会う。『箪笥のなか』は、何が宿っていたのか。古い家具には、積年の代々の持ち主の思いなどをいつの間にか含んでいそうだ。

 その箪笥は、紅みがかったケヤキで出来ていて、蝶の飾り金具がついているのだが、一対の小抽斗の片方だけが蝶ではなく蝙蝠の金具になっている。
 その蝙蝠の小抽斗を開ければ、時々に違うものが入っている。黒い毛皮に真珠に蚕の繭に琥珀。ワイン入りの花瓶の水を飲み干したかと思えば、清酒1升を2晩で飲みつくしてしまう。蚕の嫁(?)には振られ(?)、雛人形の女雛を嫁に迎えられ、不思議な人ならぬものを惹き寄せる。

 そんな箪笥とそれにまつわる私やその他の人たちの、微妙な現実感のなさ。私の前に現れては消えていく、人ならぬものらしい存在が、非常にノスタルジックに描かれています。「フランネル」「天鵞絨」「翡翠」など、どこか郷愁を誘う表現など、読んでいてとても心地がいい。

(2007.4.22 読了)
箪笥のなか
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著者:長野まゆみ出版社:講談社サイズ:単行本ページ数:231p発行年月:2005年09月この著者の新


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