『赤朽葉家の伝説』/桜庭一樹 ◎

アンソロジー『Sweet Blue Age』で、桜庭一樹さんの良さを知りました。で、栄えある単行本1作品目が『赤朽葉家の伝説』です。
そして、やっぱりいいわぁ~、とヨロコビに浸っております。

山の者の捨て子で赤朽葉家へ嫁に来た千里眼奥様・万葉。
中国地方のレディース統一を果たし、経験を漫画化し大ヒットさせた・毛毬。
今時の、田舎の普通の若者な(ニートだったりする)・瞳子。
この全く個性の違う3代の赤朽葉家の女たちを、それぞれ1章ずつ中心人物にした、3章から成る赤朽葉家の物語。
3人がそれぞれ全く違っているのに、統一性があるのは、すごいな・・・作者の構成力に脱帽だ。

分厚いし、2段組みだし、読むのに時間かかりそう~、と思っていましたが、文体も文章の構成も美しく、読みやすかったので、思ったより、楽に読めました。まあ、50年ぐらいの激動の歴史や文化がぎっしり詰まっていて、さらに山の者やたたら文化などの民族学的な部分もあり、読むのが難しかった部分もありましたが。

「●●家の伝説」、しかも最初の主人公は千里眼奥様、ときた日には「こりゃ、怨念ものか?超能力の遺伝の話か?」と思い込んでいたら。確かに万葉は千里眼だけれど、それを悪用したり、視えた物を変えようと躍起になることはなく、千里眼で「視た」ことも、現実の目で「見た」ことも、優しく温かく時には寂寥感をもって迎え入れている。
続く娘の毛毬は中学生のころからレディースを率いて、喧嘩では負けなし、なぜか男の趣味は悪食、しかもそれを腹違いの妹に寝取られる、中国地方のレディースを統一した直後引退、漫画家になりレディース時代の思い出を描いて一世を風靡し、跡取りの兄の死後婿取りをしても家のことより漫画家としての生を全うする。毛毬には万葉の能力の兆しは一片も見当たらない。

そして、赤朽葉家3代の歴史をつづるのは、孫娘・瞳子。戦後から 現代までの産業・経済・文化をみっちりと描きつつ、赤朽葉家という特殊な名家の歴史も余すところなく(万葉と毛毬からの伝聞だが)、綴るという(読者にとっての)偉業を成し遂げるのだけれど、これが普通の若者なのである。それがいい。
~~私は万葉の、不肖の孫娘なのである。あぁもう。 死んでお詫びしたいところだが、でも生きていたいです。~~ (本文より引用)
なんてことを、さらっと言ってのける。能力を持った祖母、負けなしの強さを持った母のことを描きながら、自分は無力だと感じ、でもそれはどうにもできないよね、的なことを考えたりしている。
でも、最後に祖母・万葉の「視た」、「一つ目の飛ぶ男」の謎に気付き、万葉の後悔「人を殺した」を仏壇の前で、語り明らかにする瞳子には、何か芯の強いものを感じた。やはり、彼女も赤朽葉家の女性なのだ。

ちなみに、笑う話ではないところで、大ウケしてしまった、水無月・R。というのも、2章の毛毬の中高生時代の話あたりは、数年違いで世代が被るので、流行っていたもの、セリフ、そしてそのころの女子中高生の心情なんかが、もうツボにハマりまくりで。水無月・R自身は、不良でもなく目立つグループでもなく、地味~に生きている中学生だったのですが。しかしすごいなぁ~、多分どの世代の話も同様にしっかり書きこまれているのでしょう?すごく下調べしてるんでしょうねぇ。作家さんという人たちって、本当にすごいな~。

あ、それと、赤朽葉家の歴史が重厚に語られている中で、時々「笑えるキャラ」が出てくるのがよかったです。一番気に入ったのは、出目金こと「黒菱みどり」。最初は万葉をいじめる造船所の派手派手お嬢様だったのが、復員してきた狂気の兄の自殺死体を万葉と片付けて親友になり、フラメンコを習ったり、倒産して住む家がなくなると赤朽葉家に居候したりと、なかなか波乱万丈で、しかも辛口。自分の周りにいたら、困るけど、物語を回す大きな存在だったと思います。
ほかにも、女恵比寿な姑のタツ、ストリーキング妾の真砂、その娘で寝取りの百夜、毛毬の影武者でフィリピン人のアイラなど、個性あふれるキャラがたくさん。いい感じで、話を面白くしてくれました。

(2007.08.02 読了)
赤朽葉家の伝説
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著者:桜庭一樹出版社:東京創元社サイズ:単行本ページ数:309p発行年月:2006年12月この著者の


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この記事へのコメント

やぎっちょ
2007年08月03日 09:09
水無月・Rさんこんにちは♪
「重厚」が一番この本を表していますよね。最初手に取ったときちょっと引いちゃいました。。。3世代の物語がほんとうまく流れて絡まって大作にふさわしい内容に仕上がっていると思いました。
他の桜庭さん作品もぜひぜひ読んでみてくださいね!!
2007年08月03日 09:34
こんにちは。
本の分厚さが気にならないくらい夢中になって読めたお話でしたね。
私も読む前は「怨念ものか?超能力の遺伝の話か?」と思いました!こんな重厚なお話だとは思わなかったので嬉しい裏切りでした。
お話とは対照的な笑えるキャラも良かったですねー。
やぎっちょ
2007年08月03日 15:23
たびたびすみません。
どうもTBがうまく飛んでいないようでしたので。。。もう一度トライしてみてもらえますか?お手数おかけします。。
2007年08月03日 21:25
やぎっちょさん、こんばんは(^^)。
コメント、ありがとうございます!
そうなんですよね。「地方旧家の歴史」と「戦後日本の来し方行く末」、が絡み合い、美しい文章で織り上げられていく…。
ぜひ、桜庭さんの他の作品も読んでみたいです~。
2007年08月03日 21:31
すずなさん、こんばんは(^^)。
TB&コメント、ありがとうございます!
感想書くの、難しかったですよね~(笑)。
読みやすいのに、いろんなエピソードがぎっしりという、作者さんのスバラシイ文章力&構成力には、本当に感激しました。
空蝉
2007年08月05日 00:52
ふふ、やはりかぶりますね~本♪桜庭さんは私も大好きで、この本は特に!今年のベスト10には絶対入ります。トラバさせていただきましたのでよろしくです。
2007年08月05日 22:16
空蝉さん、こんばんは(^^)。
TB&コメント、ありがとうございます!
うれしい限りです(光栄です!)。
読みたい本のリストがどんどんたまっていきますが、たぶん桜庭作品は優先順位が上になりそうです。
藍色
2007年12月20日 03:42
こんばんは。
TBありがとうございます。
三者三様の時代背景を持った女性たちの物語。
濃厚な世界が描かれていて、読み始めたらあっという間でしたね。
おぉ、笑える脇役にも脚光が!水無月・Rさん、さすがです。
2007年12月20日 22:42
藍色さん、ありがとうございます。
どの世代の物語も、非常に緻密に安定して描かれていましたよね。
うふふふふ。水無月・Rは脇キャラ好きなのですよ(*^_^*)。作品のツッコミ処を担当する脇キャラさん達に「アンタいいよ~!」と応援しております(笑)。
香桑
2008年05月06日 01:17
こんばんは。ようやくこの本を読めました。
なんともいえない読後感ですね。濃厚で、淡々としていて、しんみりしたかと思うと、がすっと珍妙なものが出てきたり。重くなりすぎない絶妙な匙加減。
そして、万葉と豊さんの淡く清らかな思い。
桜庭さんに脱帽です。
2008年05月06日 21:57
香桑さん、ありがとうございます(^^)。
桜庭さんの、絶妙な物語運びにぐいぐいと引っ張られ、一気に読んでしまいました。
そうなんです。重厚な面も、軽妙な面も、しっかりと描かれている。とても、楽しめました!

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