『カフェー小品集』/嶽本野ばら ◎

作者嶽本野ばらが愛する、古き良き時代の喫茶店文化を守り続ける、12店のカフェー達。そのカフェーに男女が現れてはドラマを紡ぐ。「僕」と「君」で表現される2人は、現実とうまく折り合えていない。各章で、全く違う男女を苦しくも緩やかに描きつつ、物語は段々とハッピーエンドへと推移していく。『カフェー小品集』は、悲しみと、優しさと、温かさに満ちている。

12章に共通しているのは、カフェーに漂う古き良き時代の雰囲気と、女性側の現実や愛情との折り合いのつかなさ。男性側も、通常のサラリーマンなどではなく、多分作者を投影したかのような(但し多分に作為的)物書きだろうと思われる。2人の間に、愛情はあるのに、女性側にあまりに自信がなく、去っていく。第1章は、それを飲み込むだけの「僕」。悔恨に打ちのめされ、待つだけしかできない「僕」。章が進むにつれ「僕」は段々と行動できるようになる。最後の章では「君」を探して北の街まで行く行動力すら持つ。そして、「君」もそんな「僕」にうたれ、共にあることを選ぶ。

違う話なのに、少しずつ、「僕」と「君」の関係が、諦めから行動へ、ハッピーエンドへ緩やかに進化するのが、読んでいてうれしかった。諦めの物語も、哀愁に満ちていてよかったのだけれど。

嶽本氏はあとがきで
~~エッセイ集とも短編小説集ともガイドブックともとれない不思議な小品集~~ (あとがきより引用)
と書いていますが、どの章が作者の経験なのか、なんていう詮索は不要ですね。どの物語も、苦しくも美しい。現実とうまく折り合えない「君」も、彼女を受け止めたいのにうまく伝えられない「僕」も、もどかしいのだけれど、そのもどかしさがよい。
静かに、カフェーで流れる時間、「僕」と「君」の間を緩やかに紡がれていく物語。
読んでいる間だけは、心安らかに過ごせました。

(2007.8.21 読了)
カフェー小品集
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著者:嶽本野ばら出版社:青山出版社サイズ:単行本ページ数:191p発行年月:2001年08月この著者


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