『アブホーセン~聖賢の絆~』古王国記Ⅲ/ガース・ニクス ◎

『サブリエル』『ライラエル』に続く、古王国シリーズ第3部です。前作で冥界を現世を行き来し、死霊を支配して、現世の平和を守る善のネクロマンサー・『アブホーセン』の正式な後継者と認められたクレア一族の娘・ライラエルは、紅の湖付近でおこる怪現象を追って、苦難の旅に乗り出す。その怪現象こそ、古王国創世のときに封じ込められた、最も悪なる「殲滅者」を呼び覚まそうとするものだった。
壮大にして緻密に組み立てられた、ファンタジー世界。登場人物たちの人間らしい悩みやためらい、それを乗り越えていく強い意志の力、非常に読み応えのある作品でしたねぇ~。

ライライエルは、古王国の王子サメス(サム)・アブホーセンに仕える精霊モゲット・不評の犬と共にアブホーセン館を脱出する。途中、モゲットが一行から離れる、次々に襲いかかる悪霊たちの攻撃をかわしながら、やっと紅の湖に辿りつく。紅の湖では、ネクロマンサー・ヘッジに操られた、サムの友人ニックが銀半球を掘り出して、アンセルスティエールへ運ぶ手はずを取っていた。瞬間的にニックは呪縛から解かれ、半球を1つにしないように努力することをライラエルに誓うが、自身に埋め込まれた半球の欠片に乗っ取られ、またヘッジの側へと戻っていく。
ライラエル一行は、半球の壁越えを阻止しようとするが間に合わず、半球はアンセルスティエールへ持ち込まれ、今にも1つにならんとする。ライラエルは冥界の第9界(絶対的な死の世界の手前)まで降り、過去視の力を使って「殲滅者を封じた方法」を調べ、第9界でヘッジと対決し葬り去る。
現世に戻ったライラエルの元に、国王・サブリエル(現アブホーセン)・王女エリミア・クレアの双子ライエルとサナール・サム・不評の犬が集い、各自の力を結集した最後の戦いが始まる。殲滅者は強力で一旦は負けそうになるが、創始の頃どちらにもつかなかった「イーラエル」が現れ、協力して、殲滅者を封じることに成功。実はイーラエルはモゲットであった。

いや~、魔術溢れる古王国と魔術のない近代文明を歩みつつあるアンセルスティエール、この2つが魔術の壁を隔てて隣り合っているという、その設定がすごく良かったな~。壁があるから、魔術はアンセルスティエールへ流れないんだけど、そのせいで魔術は信じられないものとして扱われ、誤解されたりする。壁を越えれば季節や時間などがずれ、機械で作ったものは朽ちていく。
偉大なる善のネクロマンサー・アブホーセンが主人公の物語なんだけど、古王国全体の歴史や魔術の仕組み、創始の九煌星、フリーマジックからチャーター魔術を切り離した七聖賢、古王国の祖となった五聖賢、色々な物が絡み合って、そして物語終息へむかってすべての力が流れ込む、その物語の勢いに引き込まれました。

ギリギリのところで悪は打ち倒され、主要登場人物はみんな死なないんだけど、それぞれ心に傷を負ったんじゃないかな、と思います。誰も傷つかず、犠牲者も出ることがない、ハッピーエンドではここまで深い物語は作れなかったと思う。心に負った傷をいやしながら、人間的に大きくなり、世界を出来るだけ良い方向へむかうよう努力する、成長の力。「ひと」にはそれが必要なんだな~と思います。

これからの古王国再建や、現・次期アブホーセン姉妹の修行、復活した一族「壁を築く者」としてのサメスの成長、最後に不評の犬が生き返らせたニックとライラエルのほのかな恋愛?なんかは描かれない。・・・読みたい気もするけど、『サブリエル』の後にそういうことを描かず『ライラエル』にすぐに入った作者ガース・ニクスの作風なんだろうなぁ。逆に読者の想像力をかきたてるという意味では、いい惹きなのかもしれないな。

そうそう、『ライラエル』ではなんとなく弱腰っぷりが鼻についたサメス王子ですが、今作ではだんだんに「壁を築く者」として自信を持って魔術を操り、勇気をもって死霊達とも戦える、頼れる存在になって、ちょっと安心しました~(笑)。

あとがきによれば、古王国シリーズはいったん終了ですが、作者は再び書いてみたいと思ってるそうです。創始の世界、古王国王政消失時代の話、逆にアンセルスティエール人が語る古王国、などまだまだ書いてないネタはたくさんありそうですもんね。書いてくれないかな~。楽しみだな~。


(2007.11.13 読了)

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聖賢の絆 著者:ガース・ニクス/原田勝出版社:主婦の友社サイズ:単行本ページ数:493p発行年月:2


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