『赤い竪琴』/津原泰水 ○

うう~。読む順番が、悪かった・・・。前日まで『図書館革命』を読んでて、ぎゃぁ~とかひゃ~!とか萌え叫んでたので、この大人の恋愛のシミジミに慣れるまで、非常に時間がかかってしまった。とても雰囲気のある、切なく苦しいそして優しい恋愛の物語です。やたら自分の感情に走ったり、相手を縛りつけたり押さえつけたりしない、大人だからこその、儚くも思いやりのある。
しっとりとして少し物悲しい津原泰水の文体で語られるこの物語は、美しい。

この作品は、『綺譚集』を読んだ時に、
今日何読んだ?どうだった??のまみみさんと、本のある生活のjuneさんに、お勧めいただいたものです。
(まみみさんの『赤い竪琴』の記事は、コチラ!)
(juneさんの『赤い竪琴』の記事は、コチラ!)
お二方の素晴らしい文章を、是非お読みください~(^^)!

読み始めは、これはちょっと私の好みと合わないかも・・・と思っておりました。でも、杞憂でしたね。文章そのものが美しいし、大人同士の抑制された情熱の恋愛というのは、だんだんと沁みてくるもので、読み進めるにつれ、胸が痛いけれど切ないけれど、気持ちの奥底が途絶えることのない灯で温められるような物語に引き込まれて行きました。

ストーリーを書くと、酷く通俗的になってしまいそうなので、やめておきます。
それと、私自身がこういう大人の恋愛はできそうにないので、実はその点は共感できなかった、というのも先に告白しておきます。(単純バカなので、抑えに抑えた情熱、というものに怖れを感じてしまうのです)
ただ、文章や物語の美しさには、とても感銘を受けました。

タイトルにも『赤い竪琴』とあるように、とても「音」の共鳴する作品だったと思います。主人公・暁子のつまびく竪琴の音、クジラのソング、耿介の作った古楽器の音、そして処々にちりばめられる「寒川玄児」の詩。それらが深く共鳴して、物語に幅と深みを与え、物悲しい陰影を与えている。

最後の章「海(わたつみ)」の、耿介と別れざるをえなかった暁子の深い哀切。耿介の祖父・寒川玄児が自分の祖母・那に送った日記の表紙の、消された鉛筆書き、
~吾、永劫に汝がうちに潜まむ 玄~ (本文より引用)。
一瞬にして、胸を突かれた。暁子の失ったものの大きさが、急に私に現実感を持って、のしかかってきた。

だから、最後に耿介がまた現れた時、深く安堵しました。もちろん、耿介には闘病生活があり、暁子は傍らでそれを見届けるという、息苦しいその後があるのだろうけれど。苦しみながらでも、2人がまた一緒に生きていくことができる、そのことに密やかな喜びを覚えました。

(2007.12.05 読了)
赤い竪琴
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著者:津原泰水出版社:集英社サイズ:単行本ページ数:242p発行年月:2005年01月この著者の新着


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この記事へのコメント

七生子
2007年12月07日 09:28
水無月・Rさん、こんにちは。
TBありがとうございました~♪
(私からもTBしようと思ったんですが、なぜかできませんでした/涙)

『図書館革命』を読んだ直後に『赤い竪琴』は無謀かも…というか、頭の切り替えが大変そう…と思いながら感想を拝見したのですが、とても素敵な感想に、胸が熱くなってしまいました。「音の共鳴する作品」という視点にも目うろこです。再読する時は耳をすませ、一音も聞き洩らさないよう気をつけながら読みたいです。
2007年12月07日 21:39
七生子さん、ありがとうございます。
そうなんですよ、世界観違いすぎ(笑)。
どっちも好きなんですがね。
津原さんの文章は、静寂の奥底にひっそりと佇む情熱が、印象的ですね。
きっと聞こえる音は、重低音だったり天まで届かんばかりの澄んだ高音だったりと、いろいろだと思います。
2007年12月07日 23:34
確かに図書館~のあとに読むのはキツかったかもですね。あっちのラブパワーが強すぎで(笑)どっちもとっても好きなんですが。
わたしも水無月・Rさんと同じくこういう恋愛はできなそうなんですが、だからこそ余計に憧れちゃうのかもしれません。しっとりと穏やかな話だったからか、津原さんの文章の美しさもくっきりと感じられたような気がします。
2007年12月08日 00:13
まみみさん、ありがとうございます。
早速リンクの方、貼らせていただきました(^^)。
こういう、しっとりとした美しい世界は、心穏やかになりますね。私のキャラ的に、長続きはしないんですけど(笑)。
june
2007年12月10日 21:59
図書館シリーズの世界ももちろん好きなのですが、こういう世界もすごく好きなのです。これは私の溺愛本なのです(笑)。
古楽器の音色、くじらのソング、言われてみると音の共鳴を感じます。そして玄児の詩、それらの共鳴が物語に深みを与えてたんですね。水無月・Rさんの記事を読んだら、無性に読み返したくなりました!
2007年12月10日 22:44
juneさん、ありがとうございます!
いや~、ホントに「しまったぁ!」と思いましたよ(笑)。読む順番も、大切なんですなぁ(^_^;)。
高く低く、響き籠り、様々な音が聞こえてくる、しかもちっともうるさくいどころか世界が広がるような、いい作品でしたね~。
早速リンクの方、貼らせていただきました。ご許可いただき、ありがとうございました!
雪芽
2008年05月11日 18:44
こんばんは~
薫り高く響く美しい文章と描かれる大人の恋愛が素晴らしく、この気持ちを持て余し気味です^^;
苦しみながらそれぞれに進もうと決めたふたりが、苦しみながら共に生きるであろうラストにもホッとしました。
2008年05月11日 22:16
雪芽さん、ありがとうございます(^^)。
情感の漂う美しい文章、押さえながらも秘かに溢れ出てしまう恋情、とても素晴らしかったですね~。
そう、2人が再会し共に歩むというそのラストが、とても嬉しかったです。

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