『パライゾの寺』/坂東眞砂子 ◎

高知県出身女流作家、坂東眞砂子さんの作品、初読みです。
「土佐の民間の話の聞き書きが云々」という内容紹介に惹かれ、手にとりました。あちこちに散りばめられる、土佐弁にうっとりしながら、物語に引き込まれて行きました。

水無月・Rが子供のころから、父親・自分・夫の転勤であちこちの土地を転々してきた中で、一番影響を受けた土地が「高知県」です。(3年半しか住んでなかったんですけどね。)そのせいか、高知県出身の女流作家さんの作品が、非常に肌に合う気がするのです。宮尾登美子さん、倉橋由美子さん、西原理恵子さん、有川浩さんが私の中で「はちきん作家さん」です。「はちきん」とは、男勝りでサッパリとした気性の女性を指す、土佐弁なのですが、はちきん魂あふれる作品を読むと、自分もはちきんになれるような気がするからかもしれません。

坂東眞砂子さんは、はちきん作家さんかなぁ。どうだろう。この『パライゾの寺』は、土佐のことを描いた物語だけど、はちきん魂というよりは土佐という閉鎖された空間にうごめく暗い人間関係を抑えた文章でじわじわと表現するいという、どちらかというと陰にこもる方向性だったと思う。他の作品(高知県がらみでないもの)を読んでみて、判断しようかと思います。

各章、とある民俗学好きの男が「土佐の話」を聞き取りするという形で、冒頭と終わりが語り手の1人称の文で、中身は客観的に語られる3人称。どの章も、「土佐」という土地の風土――― かつての流刑地であり、四国の中でも本州側に向かわず黒潮の高波寄せる太平洋側に開け、他県とも山脈で遮られるという、閉鎖性の高い、生活に厳しくも遍路に優しい、情の深い土柄 ―――を背景にした、息詰まるような人間たちの物語でした。土佐人は、情が細かく、激しい。だからこそ、このように物語性の高い事件が起き、語り継がれる。

そんな息詰まるような「土佐の物語」を集め続けた男・川添雄二。最終章で、その語り手となり、執念の終結を語る。
この作品は、「土佐の物語」の聞き取りの形をとりながら、実は川添雄二の「土佐の物語への執着」の物語であったという、入れ子細工の構成。
その終結は、あまりの執念に背筋がぞっとするのだけれど、それでも川添を恐れる気持ちは起きない。ひょうきんな大阪弁の語り口が、軽妙だからだろうか。

物語としても面白かったし、やはり「土佐(=高知)」の物語という事で、私的に非常にハマりました。
って、全然内容に触れてない・・・。どの章も、土佐にまつわる、男女の愛情やしがらみが重く深く垂れこめる感じの物語でしたねぇ。
一つ一つ取り上げると、長くなりそうなので、今回は内容紹介は省略といたします。

(2007.12.17 読了)

パライゾの寺
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著者:坂東真砂子出版社:文藝春秋サイズ:単行本ページ数:267p発行年月:2007年06月この著者の


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この記事へのコメント

2007年12月18日 00:23
トラバありがとうございました、お久しぶりです。パライゾの寺・・・これまさに親鸞聖人の『女犯の夢告』が下敷きかなって思います。
古今東西様々な宗教がありますけど、行き着くところは同じなんでしょうね・・・
2007年12月18日 21:16
空蝉さん、ありがとうございます(^^)。
私自身は、宗教への信仰心がない人間なので、ここまでの執念というのがよく理解できないんですが、きっと「信じる」という気持ちが極まると、こんな事件も起こってしまうのかなぁ~、と感じましたね。ある意味、純粋とは狂気なのだな、と。

この記事へのトラックバック

  • 『パライゾの寺』 by 坂東眞砂子

    Excerpt: 土佐を舞台に明治維新から太平洋戦争直後までの、「歴史に名を残すことのない者たち」の物語。その中の表題作『パライゾの寺』のみを読む機会があったので実はこの本の1/7書評だったりする(笑) いずれすべ.. Weblog: ■空蝉草紙■ racked: 2007-12-18 00:25