『ぼんくら』/宮部みゆき ○

宮部みゆきさんは、今まであまり読んでないんです。例によって「新聞の書評」に乗せられて、普段あまり読まないジャンルへチャレンジ、という訳です、ハイ。
しかし、『ぼんくら』ってタイトルは、結構びっくりですよ。「ぼんくら」って・・・そんな。主人公の定廻り同心・平四郎は、「ぼんくら」じゃないと思いますよ・・・?いい人じゃないですか。頭も回るし(面倒臭がってますが)。

定廻り同心の平四郎の担当地域にある、鉄瓶長屋。そこで殺人事件が起き、長屋の差配人が出奔。代わりに来たのは、差配人にあるまじき若輩者・佐吉で、長屋の住人たちにはあまり受けが良くない。そうこうするうちに、博打の借金で娘を売り飛ばそうとして娘に逃げられた親あり、隠し子を引き取れない父親と信心の果てに長屋を出ていく家族、そうかと思えばよその長屋から春をひさぐ女が越してきたりする。長屋の中に流れるぎくしゃくとした雰囲気と、続けざまに店子の減る不自然さに、平四郎は調査を始める。
調査の中で浮かび上がる、鉄瓶長屋の大家である湊屋の不可思議な魂胆。美貌の甥っ子弓之助、岡っ引きの政五郎とその手下の人間記憶装置少年・おでこ、平四郎の幼馴染で隠密同心の黒豆などの能力を借りつつ、その魂胆をひも解く平四郎。
湊屋の真意は、奥方の狂気を鎮めることにあったのだが・・・。

最初、別々の事件が起きてて、連作短編かな~と思いつつ、でもあまりにも続けざまに事件が起きすぎだし、店子がどんどん減るのはなんかおかしいぞ、と思ったあたりで、すべてが「鉄瓶長屋から店子をそれとなく追い払う」という迂遠な目論見が見えてきます。しかも、目論でるのは、大家。何故だ?!という、お話ですね。

それを解くのが、主人公平四郎なんだけど、同心といってもくたびれたオッサンで、しかも「キチキチしすぎず面倒事は避けて通りたい」なんて言ってる。まあ、その気の抜けた感じが、悪くないんだけど、取物帖的なアクションは、ほぼないです。
人情味とか、罪の後ろには事情があるとか、そういう方向で、話は流れていきます。

登場人物たちが、とても生き生きして、現実味がありますね~。長屋の住人・お徳やおくめ、差配人の佐吉とその同居人の長吉、岡っ引きの茂七親分の右腕の政五郎とその手下のおでこ。もちろん、平四郎とその中元の小平次、平四郎の細君やその縁の甥っ子弓之助、それぞれが個性的でいて突飛過ぎない人物描写がされている。
特に「おでこ」がいい。人の話を一言一句すべて覚えるけれど、途中で止まってしまうと、巻き戻して口に出さないと元の地点に戻れないという、まさにテープレコーダー状態。しかもおでこの張った、愛らしい顔立ちで「あいあい、旦那」なんて言ったりするのだ。しかも美貌の弓之助と仲良くなったみたいだ。はた目に目立ちすぎる組み合わせだ~。片やおでこの出っ張った異相、片や人形と見まごうばかりの美少年〈しかも頭も相当切れる)。この2人が大人を手助けして、事件の解明に努める。なんだかいじらしい限りだ。

面白かったな~、と思うんだけど、ちょっと残念なことが二つほど。
お徳が、最初から最後まで何にも気がつかないまま、鉄瓶長屋を出ることになってしまったこと。お徳のように一本気な女には、真相は知らされない方が幸せなのかな。煮売り屋を営みつつ平四郎の見回りを歓待し、長屋の人々の面倒を見、おくめを看取ったりまでしたのにね・・・。
佐吉も真相を知らない。自分を捨てて出奔した母がまだ湊屋に囲われていることや、湊屋がなぜ自分を差配人にしたのか、判らないまま鉄瓶長屋を閉め、所帯を持って植木職人に戻る。せめて佐吉には、もうちょっと突っ込んだ疑問を持ってほしかったな~。

なんとなく、一番つらい部分は平四郎や政五郎、弓之助が背負ってしまった感じ。弓之助なんて、まだ平四郎の養子(同心の後継ぎ)にもなってない12歳の少年なのにねぇ・・・。

(2008.04.11 読了)

ぼんくら

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著者:宮部みゆき出版社:講談社サイズ:単行本ページ数:513p発行年月:2000年04月この著者の新


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    Excerpt: 深川の鉄瓶長屋。 八百屋の息子が殺された。 宮部みゆき著『ぼんくら』 Weblog: 三毛猫《sannkeneko》の飼い主の日常 racked: 2013-10-03 11:02