『いのちのパレード』/恩田陸 ○

水無月・Rにとって‘しんしんと怖い‘、恩田陸さんです。奇想短編シリーズということで、いろいろな趣向を凝らした短編がずらり。私のイメージ通り‘しんしんと怖い‘ものもあれば、ほんのり暖かい小編もあり、神秘的に美しい物語ありと、いろんな奇想が詰まった、バラエティ豊かでしたね、『いのちのパレード』

15篇の物語が、バランス良く配置されています。あとがきによると恩田さんは、最初から1冊にまとめる予定で雑誌掲載順を構成していたそうです。最後の「夜想曲」だけが、書き下ろし。

私は、その書き下ろしの「夜想曲」が一番好きですねぇ。
小説を書くことを余生に楽しもうとしていた学者の従者ロボットの元へ、インスピレーションの神のようなものが訪れる。老人と、若い娘と、若い男の声をもった、神が。彼らの訪れた「書斎」は、ロボットのもう亡くなってしまった主もの。彼らの声を聴くことのできたロボットは、彼らに説き伏せられ主人の思い出を描くことにする。
インスピレーションの神たちが「昔は我々の声を聞いたものは、いずれ自分で自分の中の声を見つけて、一人でやっていけたものだ」と嘆いていたのは、昔は大文豪がいたけど、今はそういう偉大なる作家がいないってことなのかな。確かに大文豪というのは、あまりいないかな。作家の数が多くなり、読者の嗜好もさまざまになった結果、歴史に冠たる大文豪というのは、生まれ辛くなってるのかもしれませんね~。
2度読み返したのですが、ロボットが涙を流すシーンには、とても感銘を受けました。ロボットなのに、感情がある。学者の後継者選びができるほど、精巧な判断力があり、涙を流すような感受性もある、ロボット。いかに主人との日々を愛していたのかが分かる。きっと彼なら、すばらしい作品を書くに違いない・・・と感じました。

ほかにも「かたつむり注意報」などの美しく幻想的な光景にため息をつき、「エンドマークまでご一緒に」ではミュージカルで始まってしまう1日をウケつつツッコミを入れ、「当籤者」なんかは、ぞぞ~っとしましたねぇ。「走り続けよ ひとすじの煙となるまで」なんか、非常にリアルさを秘めた物語で、恐ろしくも目が離せない感じでしたね。

いろいろと、恩田さん風の「奇想」が凝らされていて、楽しめました。「夜想曲」ではロボットが人間以上の感情と感性で物語を綴るまでを描いて、人工知能は人を超えることができるのか、ロボットは感情を持ち、人を懐かしむことができるのか。インスピレーションの神たちの声が「人」に聞こえなくなった今、「ロボット」がその後を継ぐのだ。かのロボットなら、それも可能なのだろう、と。


(2008.05.02 読了)

いのちのパレード
楽天ブックス
著者:恩田陸出版社:実業之日本社サイズ:単行本ページ数:331p発行年月:2007年12月この著者の


楽天市場 by ウェブリブログ




ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント

エビノート
2008年05月05日 21:32
同じく「夜想曲」良いなぁ~と思いました。いつの時代になっても、物語を綴る存在はいなくならない、そんな希望も感じられて。
恩田さんの想像力の豊かさを楽しみました♪
june
2008年05月06日 01:02
私は「かたつむり注意報」が一番好きだったんですが、水無月・Rさんの記事を読んでもう一度「夜想曲」を読み返したくなりました。
2008年05月06日 05:25
バラエティ豊かな短編集でしたね。
あれもこれもと目移りしちゃって、これが一番!と決められないんですが、「夜想曲」は私も好きでした。本好きとしては、ある意味ドキドキしつつ、ホッとしたといいますか・・・。インスピレーションの声を聞ける人が、この先もずっと存在し続けますように・・・と思わず願ってしまいました。
2008年05月06日 21:29
>エビノートさん。
「夜想曲」いいですよねぇ~。人工知能がここまで進化するには、きっと学者との深い交わりがあったからなのですよ。私はこの物語を読んで、機械であっても人と交流し、学習を重ねれば、きっと感情を持てるのだと、信じたくなりました。

>juneさん。
「かたつむり注意報」は美しかったですよね。
霧の出るような湖畔をしずしずと進んでくる、大きなかたつむり。人々は畏敬をもってそれを傍観する。
静かに・・・気持ちが洗われるような、いい物語でした。

>すずなさん。
ええ、本当に恩田流の奇想幻想が詰まった、素敵な物語たちでした。
インスピレーションの神が訪れる先は、きっとこれからもありますよね・・・。
インスピレーションの神という存在は、我々読者の希望や願いを具現化したものかも知れません。
恩田さんにも、その神が訪れているのだな、と思います。

この記事へのトラックバック

  • いのちのパレード 〔恩田 陸〕

    Excerpt: いのちのパレード恩田 陸 実業之日本社 2007-12-14売り上げランキング : 619おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools ≪内容≫ あなたはパレードの目撃者に選ば.. Weblog: まったり読書日記 racked: 2008-05-05 21:21
  • 「いのちのパレード」恩田陸

    Excerpt: いのちのパレード あとがきに「無国籍で不思議な短編集を作りたい」とあったのですが、まさにそういう世界が展開されていました。恩田さんのこういう世界大好きです。中にはオチ(?)がなくてよくわからない.. Weblog: 本のある生活 racked: 2008-05-06 01:02
  • いのちのパレード(恩田陸)

    Excerpt: 15編の短編集。 ・・・なんだけどねぇ。帯に記されてるように「異色作家短篇集への熱きオマージュ!」なので、どのお話もまさに”異色”という感じです。今までのように、どれかの続編とか番外編とかいうものは.. Weblog: Bookworm racked: 2008-05-06 05:17
  • 『いのちのパレード』 恩田陸

    Excerpt: 恩田ワールド全開の短編集。 ホラーぽいものもあり、SF風もあり、ミステリー風なのもあり、 サスペンスぽいのもあり、オカルト風なものもあり。 どれもが、ふわふわと漂うような浮遊感を持ち、 不.. Weblog: *モナミ* racked: 2008-08-11 08:45