『矢上教授の午後』/森谷明子 ○

とある大学の生物学部の、正しくは非常勤講師の矢上教授。如何にも「大学教授」風の英国紳士的な容貌をもち、無類のミステリファンである彼が、豪雨の中偶然が重なって出来あがった密室状態の中で、殺人事件に出会う。
殺人事件なのに、緊迫した犯人捜しよりも、登場人物たちのそれぞれの事情や秘密や・・・がぐるぐる回って「この話どうなっちゃうの~?」と言う感じでした(笑)。
『千年の黙』で、美しい矜持を描いてくれた森谷明子さんのお茶とケーキ派なミステリ、『矢上教授の午後』

論文提出ぎりぎりの追い込みに入った院生や、研究資料を隠蔽したい教授、秘密を持っている助手と教授、学外からの訪問者、そしてもちろんゆったりとミステリを堪能したい矢上教授、などが閉じ込められたオンボロ研究棟。雷鳴と豪雨に閉ざされたそこで、殺人事件が起こる。ミステリファンの矢上教授が中心になって、謎解きを進めていくのだが・・・。

すみません、とにかく各章が短くて、語り手がくるくる変わって、しかもそれぞれが人には言えない秘密(しょうもないものが多い)を抱えてその事情を隠したまま事態が進行していくので、「え~、この人なんだっけ?」と混乱しちゃいました。
更に言うと、研究棟の間取り図が欲しかった・・・!各階に誰がいて、その時何が起こって・・・という謎解きシーンが、イマイチイメージできなかったです。私の想像力が貧困過ぎると言うのもあるんですけどね・・・。

オンボロ研究棟が密室になる、偶然の重なりの妙は上手いなぁと思いました。ちょっとしたこと、ちょっとした事情で、雷雨の中大声で叫んでも届かない、孤立する空間が出来る。そして雷雨の広範囲停電のため、携帯電波も通じなくなるから、外部への救助要請も出来ない。普通に閉じ込められても、携帯があればSOSは伝わるものなんだけど、それもダウンしてしまうというシチュエーション、外に叫んでも届かないほどの豪雨と雷鳴。大自然の災厄の前には、人間の文明の利器など太刀打ちできるものではないってことですねぇ。

個人的に、結局事態のさなかには研究棟に入れなかった御牧さんの存在に疑問を覚えますね・・・。確かに、矢上教授に「研究棟内で起こる不思議な謎」を提供する、という役目はあったと思うんですけど。てっきりワトソン君は、御牧さんがやるのかと思ってたんですけど、違ったんですよね・・・。

色んな人の隠し事や心に秘めた鬱屈などが、いつまでたっても明るみに出ず、最後の方でダダダーッ!と怒涛の公開。ただし、それも殺人事件とは全然関係ないような、ちっちゃいことだったりするんですけどね。いや、本人には大変なことなんだろうけど。そういう、「なんだそりゃ(-_-;)」的な秘密の連発が、妙におかしかったですな。

最初と最後の章の「彼女」、実は実は・・・ってことですね。こういうことがあったら、という夢が広がります。でも、誰にも知られない方がいいんだろうな・・・。

しかし・・・今月、読了は7作品かぁ・・・。事情あって、身の回りが慌ただしくなりまして。当分、このペースから減リこそすれ、増やせそうにないです。うう・・・年頭に月間10冊ペースで行きたい、とか言ってたんですけどね(T_T)。

(2010.05.29 読了)

矢上教授の午後
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この記事へのコメント

june
2010年06月02日 19:37
水無月・Rさんもだったのですね!
私も研究棟の中ですっかり迷子になってしまいました。
見取り図が欲しかったです。
最後の怒涛の展開は、パズルのピースがはまっていくようで楽しかったですが、
確かに「なんだそりゃー」的なものも結構ありましたね(笑)
2010年06月02日 22:35
juneさん、ありがとうございます(^^)。
あはは・・・迷子仲間ですね♪
とりあえず、次作は見取り図つきでお願いしたいですね(笑)。
それぞれの「秘密」が、事態混乱の原因なんですよね~。しかも、「えぇ~、そんなんかよ!」的な、ね(^_^;)。
2010年06月03日 12:48
私も見取り図が欲しかったです~(笑)
各章が短かったりで、登場人物たちの見分けが難しくって、誰がどの人ってのを理解するのに苦労しました^^;
2010年06月03日 22:43
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
そう!全50章って、多いですよね~!めまぐるしく変わる語り手に混乱しました(笑)。
そして、オンボロ研究棟の中で迷子になる私たち読者・・・(^_^;)。

この記事へのトラックバック

  • 矢上教授の午後(森谷明子)

    Excerpt: 想像してたよりも軽いミステリでした。殺人事件が起こるのに、全くと言っていいほど血生臭さはなく、むしろユーモア溢れた作品。 Weblog: Bookworm racked: 2010-06-02 12:40
  • 「矢上教授の午後」森谷明子

    Excerpt: 矢上教授の午後クチコミを見る 「英国伝統のミステリのコクとユーモアがたっぷり」というのに惹かれて読みました。密室になった大学のおんぼろ校舎、理系の研究室の人々、そして日本古典文学の老教授(本.. Weblog: 本のある生活 racked: 2010-06-02 17:55