『ネバーランド』/恩田陸 ◎

読了してすぐに、「ああ、自分は立派なオバハンになってしまったなぁ」と思った(笑)。
というのも、青年・少年(少女)の若さ故の無茶や、根拠のあまりないプライド、エゴイズムや頑なさを、生温かい目で見守ってしまうようになったことに、改めて気付かされたので・・・。
彼らに対して郷愁はあるけど、かつては彼らに対して持ったであろう共感も驚嘆も反発も持たない、オバハンなってしまったなぁ、と。本作『ネバーランド』に対する感想としては、ちょっとおかしいような気もするけど・・・。

恩田陸さんと言うと、〈しんしんと怖い〉ホラーミステリーというイメージがあるんだけど、本作は謎解きはあまりなく、多少ある怖さもきちんと説明できる出来事なので、そんなには怖くはない。
『蛇行する川のほとり』に、ちょっと似ている。あの物語は夏の出来事で、今度は冬の出来事だけど。
若者たちが、お互いに影響を与えあいながら、目覚ましい成長を遂げる。ほんの数日の、けれども彼らを大きく変える、痛いほどに輝かしいその日々の物語。

地方名門男子高校の学生寮・松籟館。冬休み、ほとんどの学生が帰省した中で、3人の2年生が、それぞれの理由で居残っている。適度な距離を保ちながら過ごすはずだった彼らの前に、自宅通学ながら寮に入り浸る同級生が現れ、驚くべき告白をする。その告白に驚き、寮内で不思議な出来事が起り、それらに影響されるかのように、次第に少年たちは自身の痛みを語り出す。
幻視するほど辛い思い出、苦く刻まれる過去、痛々しい現在、過去から今に続く凄まじい現実。それぞれの告白は、辛く苦しいものなのに、彼らはそれでも軽やかだ。
それぞれが力強く変容し、救いのある終章を迎えたことに、安堵を覚えた。

〈ネバーランド〉と言えば、ピーターパンの世界である。ずっと大人にならない子供、ピーターパンの世界。
だけど、現実にはそんな世界はない。時の止まったかのような松籟館で過ごす、統・美国・寛司・光浩の4人にも平等に、容赦なく時は流れ、嫌でも大人に一歩ずつ近づいて行く。
そのゆっくりとした流れに、告白ゲームという一石が投じられ、各自が秘める過去や現実の波が沸き起こる。互いに反応し合い相乗効果的に高まり、その瞬間にどっと流れだすその〈何か〉の名を私は知らない。
その時、彼らは大きく変容する。以前の自分や友人の過去を内包しつつ、もっと包容力があり優しい強さに満ちた、かけがえのない存在に。

それぞれに事情があり、重く辛い思いをしているはずなのに、少年たちがこんなわずかな期間で清々しく成長していく姿が、とても素晴らしかったと思う。

(2011.08.18 読了)

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この記事へのコメント

苗坊
2011年09月01日 23:50
こんばんは^^
この本を読んだ時は彼らと同じ高校生だったんですけどね~。時が流れるというのはむなしいものですね^m^冗談です。
年を重ねていいこともあります。(多分)
恩田さんの書く高校生って私大好きなんです。最近は高校生とか学園ものを書かれていないので「ネバーランド」や「六番目の小夜子」のような作品を書いてほしいなぁと想ってます。
この作品に登場する4人は本当に様々な問題を抱えているんですけど、最後は本当にさわやかでしたね。大人になった彼らを見てみたい気がします。私は光浩が好きでした^^
2011年09月02日 20:55
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。 時を重ねた4人は、きっと素敵な大人になったでしょうね。もともと頭脳は優秀だし、相手を思いやる優しさや強さも身につけたし・・27・8歳になった彼らの姿を見てみたいです。 ちなみに。 〈オバハン〉になったなぁ~、とは思いましたが、それを悔やんでるわけではありません(笑)。オバハンはオバハンなりに、人生楽しんでますから♪

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