『わくらば日記』/朱川湊人 ○

昭和30年代、東京の下町で、つつましく暮らす一家。しつけに厳しい母、病弱だが美しく優しい姉、負けん気の強い妹。妹・和歌子は夭逝した姉・鈴音との思い出の日々を、数十年を経て回想している。思い出とは、輝かしく美しくも、どこかもの悲しい。
朱川湊人さんは、ずいぶん前に『太陽の村』という作品を読んで以来ですね。全然傾向が違います・・・(笑)。

あのう・・・、2作の『ホルモー』でこの『わくらば日記』を挟んで読んだのは、ちょっと失敗しちゃったかなぁ、と(^_^;)。
ささやかで、優しい日々の回顧、そこで起こる事件の悲惨さとそれを中和するかのような、人々の温かさ。
・・・ホルモーで挟んじゃったら、インパクトが、な~(笑)。

千里眼(人や物の持つ記憶を見ることが出来る)という能力を持っている鈴音。だが、やはり能力を使うには、精神力や体力を消耗するし、その能力で陰惨な事件現場を覗くことによる心のダメージも大きい。もちろん、もともと体が弱かったのもあるだろうけど、こうやって能力を使うことで、少しずつ心身に負担が降り積もっていったのかもしれない。それでも、鈴音は力を使って「事件」を読もうとする。
関係者たちの、救いになるかもしれないから、そう思っての行動だろう。

起こる事件は、かなり陰惨なものがあるのに、なぜか優しい気持ちになれるのは、穏やかで確かな姉妹愛が根底にあるからなんだと思います。
そして、鈴音と和歌子の姉妹愛、途中から物語に登場した茜との関わり、鈴音たちのところへ力を使ってほしいと依頼する刑事の神楽の意外な思いやりの深さ、など、人と人が優しくつながっていることがわかるから。

だけど、鈴音の叶わなかった初恋「流星のまたたき」の物語は、悲しかったなぁ。たった4週間の、ほのかな思い。それでも、二人は幸せを感じていたのかもしれない。でも、やっぱり悲しい。

現在形ではなく、かなり年月がたってからの回顧、というのがいい。姉の夭逝ですら遠い過去のことで、すべての出来事が昇華されているから、美しく輝かしい過去を思い出す和歌子の強さが引き立つような気がする。
そう、和歌子は強い。向こう見ずだったり、短慮だったりした和歌子は、姉との日々を、姉との別れを、茜との別れを越えて、「今」を生きて、そして過去を穏やかな気持ちで思い起こせるのだから。

きっと、続きがあるんだろうな、という終わり方だったなぁ。
姉妹のお父さんが、どうして家族と離れて暮らしているのかという疑問も、明らかにされてませんしね。

(2012.08.18 読了)

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この記事へのコメント

2012年08月24日 12:56
妹が語る千里眼という力を持った姉との日々…。切なくもありながら、姉妹の愛情が満ちているからか優しい気持ちになれるお話でしたね。
「わくらば追慕抄」という続編が出てますよー!

…それにしても、ホルモーを挟んでの読書はなかなかだったでしょうね(笑)
2012年08月24日 23:31
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
ええ、優しく美しい思い出の回想・・、昭和三十年代という時代の人情と活気が伝わる物語、とても素敵でした。

『ホルモー』でサンドイッチしてしまったことだけが、痛恨事です(笑)。
ERI
2012年08月31日 00:55
こんばんは!お返事遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。読んだのがだいぶ前なので、記憶がおぼろげなのですが、とても優しく懐かしい気持になったことを覚えています。再読したくなりました。そして、続編が出ているという情報が!>すずなさん、ありがとうございます。
そちらも読んでみますね。
2012年08月31日 22:34
ERIさん、ありがとうございます(^^)。
いえいえ、お気になさらず。
懐かしく、温かい、とても品のいい物語だったなと思います。
姉妹のしっかりと結ばれている絆が、とても美しいと思います。
私も、続編の予約を入れねば~♪

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  • わくらば日記 朱川湊人 角川書店

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